A Challenge To Fate

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【私のポストパンク禁断症状♯4】追悼ラルフ・カーニー〜ティン・ヒューイ『不思議な落とし物』&スウォーレン・モンキーズ『クールの誕生後』

2017年12月21日 01時14分11秒 | 素晴らしき変態音楽


2017年12月18日早朝にサックス奏者ラルフ・カーニーの訃報が報じられた。同じ日にインダストリアル・パーカッション奏者のゼヴ(Z′EV)の死去が発表され、筆者の周りの異端音楽界隈ではゼヴの話題で持ち切りだが、筆者にとってはゼヴよりラルフ・カーニーの方が馴染み深い。日本での報道は「トム・ウェイツやThe B-52'sらとのコラボレーション」と「ザ・ブラック・キーズ(The Black Keys)のパトリック・カーニー(Patrick Carney)の叔父」程度の紹介しかされていないが、ラルフは筆者が長年偏愛する地下ロックバンドの中心メンバーなのである。
トム・ウェイツの作品などに参加したサックス奏者のラルフ・カーニーが逝去。享年61歳

1956年1月23日オハイオ州アクロン生まれ。メインの楽器はサックスだが、シンガーであり作曲家でありマルチ・インストゥルメンタリストである。幼い頃から音楽に興味を持ち、小学時代からバンジョーやバイオリンやハーモニカでブルーグラスとカントリー・ブルースを演奏していた。15歳でサックスを始める。地元のショッピングモールのレコード屋でアルバイトをしていたいう。1972年に結成されたローカル・バンド、ティン・ヒューイに参加。折しもディーヴォの大成功でオハイオ州アクロンとペレ・ウブの出身地クリーヴランドが「ニューウェイヴ時代のリヴァプール」として注目を浴びる頃であった。

●Tin Huey / Contents Dislodged During Shipment


ローカル・レーベルから2枚のEPをリリースした後、スティッフ・レコードのコンピレーション『The Akron Compilation』(79)に「Chinese Circus(中国曲技団)」を提供。それに続いてワーナーブラザーズからリリースされたデビュー・アルバムが本作。キャプテン・ビーフハート、フランク・ザッパ、ボンゾ・ドッグ・バンド、ソフト・マシーン等の影響を受けたアヴァンロックはポップ性たっぷりで、モンキーズのカヴァー「アイム・ア・ビリーヴァー」がスマッシュヒットした。特にB面の「スクワーム・ワーム」「中国曲芸団」の変態ポップ性はディーヴォの数倍ネジ曲がっている。白眉はカーニー作曲の「パペット・ワイプス」で、ヘンリー・カウ&スラップ・ハッピーのレコメン歌曲を3分間のロックンロールに封じ込めたニューウェイヴィーなカンタベリーロックである。アルバム全体カーニーのサックスプレイが秀逸で、サックスロックの名盤と呼びたくなる。日本盤もリリースされ、今野雄二氏が分かり易い解説を書いている。しかしまったく売れなかったようで、中古市場では見本盤しか見たことが無い。アメリカでもぱっとせず、ワーナーとの契約は破棄され、バンドは解散状態に陥り、2ndアルバムが出たのは約20年後の1999年だった。公式サイトの更新は2007年で止まっている。

Tin Huey on Crooked River Groove (Tri-C), 2004

Tin Huey Official Site

●Swollen Monkeys / After Birth Of The Cool


84年に輸入レコードバーゲンで偶然ラルフ・カーニーが入っているのを見つけて購入したLP。81年にリリースされた唯一のLP。サックス4人、トランペットひとりを含む8人編成。クレジットに「ポルカとメキシカンダンス、そしてMax Fleischer(アメリカのアニメの創始者)には目がない」「シェイク・ラトル&ロールからワールド・リズムまで」と書かれている。スカやカリプソ、ポルカやマリアッチなど世界中のポップスの要素をコミカル・パンクで料理したお祭りバンドである。カーニーは3曲でヴォーカルを担当し、アヴァンギャルドなサックスプレイも聴かせる。最高なのは「エレファント・セックス(象の性交)」という40秒の曲。プロデューサーはニーノ・ロータやセロニアス・モンク、クルト・ワイルなどのトリビュート・アルバムで有名なハル・ウィルナー。多分ウィルナー発案の単発プロジェクトだと思われる。未CD化であるが、オリジナルLPは見つかりさえすればバカ安。ジャズ/ワールド界隈のミクスチャーの早すぎた試みとして面白いので好事家は探してみてはいかがか。

Swollen Monkeys Live at Hurrah - "I Can't Come"


セッション・ワークでは、もちろんトム・ウェイツとのコラボは素晴らしいが、個人的にはペル・ウブのデヴィッド・トーマスや、ゴングのデイヴィッド・アレンとのコラボが興味深い。またソロ名義での前衛/実験音楽ももっと評価されるべき。

Trailer, This Is Ralph Carney: King Of The New Wave Horn


惜しむべき
才能ひとつ
旅に出た

コメント
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