![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/d9/1d96f1f41dce2be62cf4fa01dfe476b9.jpg)
パンクからニューウェイヴに時代が変わった80年前後ポストパンクの中でも実験性を打ち出した一群のグループは「オルタネイティヴ・ロック」と呼ばれたことがあった。Alternative(オルタナティヴ)の発音を間違えたと思い込んでいたが、Alter(オルター/改造する)+Native(ネイティヴ/出自)と考えれば、従来の音楽の意味と形を革命するスタイルの名称としては「(二者択一の)別の方」という意味のオルタナティヴよりも相応しくはあるまいか?レジデンツやポップ・グループ、それらの元祖たるキャプテン・ビーフハートやフランク・ザッパ経由でサン・ラやアルバート・アイラー、アート・アンサブル・オブ・シカゴやヒューマン・アーツ・アンサンブルを知った筆者にとって、ロックやパンクやプログレよりも自由なフリージャズとの出会いは正に「出自が改造される」オルタネイティヴな体験だった。
その頃日本のジャズ界でもオルタネイティヴな動きが起こっていた。梅津和時、原田依幸らの生活向上委員会、藤川義明のイースタシア・オーケストラ、近藤等則のIMAなどが従来のフリージャズの形式をぶち壊す刺激的なサウンドスケープを産み出した。そして筆者に「ジャズを遊ぶ」喜びを教えてくれたのが坂田明と高瀬アキという男女二人のアーティストであった。
●坂田明:Wha-ha-ha/死ぬ時は別(Better Days – YF-7018-AX / 1981)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/08/59c0de40012a51ad1e090b0563e8ca5a.jpg)
1980年に山下洋輔トリオを脱退した坂田明はTV等でタレントとしても人気を得て、同年テクノ/ダブ・アルバム『TENOCH SAKANA』やハナモゲラ歌曲集『20人格』をリリース。チャクラの小川美潮、ダウンタウンファイティングブギウギバンドの千野秀一、シンセサイザー奏者の神谷重徳と意気投合して結成したフリー・ポップ・ユニットWha-ha-ha(わ・は・は)の81年のデビュー作が『死ぬ時は別』。坂田の名曲「イナナキ」から始まり、ジャズ/ロック/シャンソン/民謡/テクノ/現代音楽/電子音楽/ドドンパなどをごった煮したサウンドは、ヘンリー・カウのメンバーを中心とするの意識的音楽ムーヴメント「RIO(ロック・イン・オポジション)」とも共鳴し、輝ける八十年代の陰で変態音楽のパンドラの函を開けてしまった。「音楽は壮大な冗談である」と宣言した2作目『げたはいてこなくっちゃ』でB面すべてを使ったラジオドラマ組曲をやり切り満足したのかバンドは解体。メンバーそれぞれ別の道で才能を発揮することになる。
Wha-ha-ha - 米と醤油
●高瀬アキ・井野信義/天衣無縫(Mobys Record – Mobys 0003 / 1985)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/d2/f255393791a3bbab0eb63b045b736302.jpg)
70年代、自己のグループや土岐英史(as)、日野元彦(ds)、中村誠一(ts)のグループなどに参加し活動、80年前半ベルリン・ジャズ・フェスをはじめとしてヨーロッパツアーを行い、87年からベルリンを拠点に国際的に活動するピアニスト高瀬アキ。グローブ・ユニティ・オーケストラの生みの親アレクサンダー.フォン・シュリッペンバッハのパートナーでもある。どちらかというと正統派フリージャズのイメージがある高瀬だが、その活動はジャズに拘らない。作家や舞踏家とのコラボを積極的に行う一方、ジャズ系ミュージシャンとの共演でも従来のジャズの形式を逸脱した表現を追求してきた。その好例が高柳昌行ニュー・ディレクションのメンバーでもあったベーシスト井野信義とのデュオによる本作。A面一曲目のミニマルな中国雑技団テーマ曲風チューンをはじめ、マーチやノクターン、ヴォイス・パフォーマンス、切れ味鋭いフリー・インプロヴィゼーションまで、文字通り天衣無縫の演奏が繰り広げられる。ライナーノーツで川本三郎氏が「音のおもちゃ箱」と評しているが、正に言い得て妙である。恥ずかしながら本作を含む数枚の80年代の作品以外、筆者は高瀬の作品を追ってはいないが、2014年9月に来日しICPオーケストラと共演したSuperDeluxeでの高瀬の奔放なプレイは、ジャズを遊ぶ喜びのトキメキに溢れていた。
Aki Takase & Nobuyoshi Ino - Amanojaku
⇒ICP オーケストラ+高瀬アキ@六本木SuperDeluxe 2014.9.3(wed)
奇しくもこの両者の共演ライヴがまもなく開催される。上記のアルバムから30数年の月日を経て邂逅する「ジャズを遊ぶ」二人の演奏は、当時と変わらずオルタネイティヴな感動を与えてくれるに違いない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/ef/c3c2950a7b08b8f17ae2be9ed7acb500.jpg)
photo: Kazue Yokoi
【初夏のアキ 2018】高瀬アキ&坂田明DUO
高瀬アキの「尊敬する先輩と共演したい」という言葉から2016年11月にスタートした坂田明とのデュオ。高瀬アキの帰国に合わせて、下記の予定でライヴを行う。オリジナル曲から自由で即興的なダイアローグへ、個と個が相見えるデュオならではの面白さと醍醐味を再び!
高瀬アキ(p) & 坂田明 (sax) DUO
6月3日(日) 東京 新宿ピットイン
開場 19:30 開演 20:00
料金:¥3500+消費税(1ドリンク付)
住所:東京都新宿区新宿2-12-4 アコード新宿 B1
Tel: 03-3354-2024
6月4日(月) 名古屋 ジャズ・イン・ラブリー
開場 18:00 開演 19:30
料金:ミュージックチャージ¥4000(飲食別)
名古屋市東区東桜1-10-15
Tel:052-951-6085
*また、12月1日新潟ジャズ・フラッシュ、2日柏崎でもこのデュオで演奏する予定。
サカタカセ
オルタネイティヴ
アキラアキ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/d1/b30c2ffef8d921374717481459035e84.jpg)