A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【オルガン・オーガズム】ジョリヴェ/メシアン/フランク/ビッグス/ギユー/イェ二ィ

2018年05月25日 08時33分06秒 | 素晴らしき変態音楽


千葉県船橋市で生まれてすぐに北海道の函館に引っ越した。住んでいた家には足踏みオルガンがあった。元々母が持っていたのか、子供の為に買い求めたのか、今となっては確かめようがないが、保育園の年長組の頃からヤマハ音楽教室にオルガンを習いに行った。家では足踏みオルガンで練習したが、母親の指導が厳しくていつもべそをかきながら弾いていた覚えがある。小学校に入学する年に宮城県仙台市に引っ越した時にオルガンは処分したようで、小学時代にオルガンを弾いた記憶はないが、近所の教会の日曜学校で牧師が弾くオルガンにあわせて賛美歌を歌っていた。

このように刷り込まれたせいか、オルガンの音にはあたかも媚薬のように抵抗できない魅惑を感じる。ハモンドオルガンやエレクトーンには何故か惹かれないが、ザ・ドアーズやザ・シーズの電子オルガンやB級サイケバンドのファーフィサ・オルガンは、ファズギター以上に酩酊館を覚えるし、80年代地下音楽の名盤『NOISE / 天皇』の歪んだオルガンや、サン・ラのオルガンやシンセの途轍もないランダムプレイには、地下音楽・地下ジャズの底知れぬ深淵を象徴する響きを感じとった。とは言いつつ14歳でロックにハマった自分にとってヒーローはギターやサックスであり、オルガンはそれを引立てるスパイスに過ぎなかった。

しかしその四倍近い齢になりクラシック畑を耕し始めた筆者は、現代音楽偏西風に導かれるままオルガン沼の淵に立つこととなった。このまま着の身着のままオルガン沼の漆黒の水面に身を投げる勇気はないが、怖いもの見たさで睡蓮の間から泥水を掻き分けて水底に堆積した歴史の垢を採種したい探求心は押えきれない。好奇心は猫を殺す(Curiosity killed the cat)という諺があるが、猫でも魚でもない俺はオルガンの調べでオーガズムに達することができるだろうか。

●アンドレ・ジョリヴェ


アンドレ・ジョリヴェ(André Jolivet, 1905年8月8日 - 1974年12月20日)は、フランスの作曲家、音楽教育者。様々な作曲技法を用いて、ラジカルな前衛音楽からポピュラーなCM音楽まで幅広い分野の作曲を行い、「音楽のジキルとハイド」と揶揄されるほどであった。

André Jolivet ‎– Hymne A Saint André / Hymne A L'Univers / Arioso Barocco / Mandala
(Arion ‎– ARN 38530 / 1980)


オルガン、ソプラノ、トランペットの組み合わせによる四つの作品を収録。ヴィシュヌ神のジャケット通り宇宙へのメッセージをコスミックなオルガンの調べに昇天必至。特にオルガンソロ曲「宇宙への讃歌」「曼荼羅」でロケット発射。

Andre Jolivet: Mandala - Martin Lücker



●オリヴィエ・メシアン


オリヴィエ=ウジェーヌ=プロスペール=シャルル・メシアン(Olivier-Eugène-Prosper-Charles Messiaen, 1908年12月10日 - 1992年4月27日)は、フランス、アヴィニョン生まれの現代音楽の作曲家、オルガン奏者、ピアニスト、音楽教育者である。

Olivier Messiaen ‎– Oeuvres Complètes Pour Orgue Vol.1
(Ducretet Thomson ‎– TOM 4517-9 / 1957)


メシアン自身のオルガン演奏は数多くレコードで発表されているが、50年代に録音されたこの10インチ盤には、モノラル録音特有の茫洋とした音像の中にあの世からの呼び声が内包されている。日本ディスク株式会社という名も知れぬレーベルから発売された分厚い紙ケースの3枚組日本盤。

Olivier Messiaen Improvisations



●セザール・フランク


セザール=オーギュスト=ジャン=ギヨーム=ユベール・フランク(César-Auguste-Jean-Guillaume-Hubert Franck、1822年12月10日 - 1890年11月8日)は、ベルギー出身、フランスで活躍した作曲家、オルガニスト。

César Franck, Kurt Rapf ‎– Sämtliche Orgelwerke (Victor VX-171-3)


バッハ以降これほどオルガンに魂をこめた作曲家があったろうか!と帯に書かれたフランク『大オルガン作品全集』3枚組。バロック様式の予定調和を突き崩す浪漫派の精が籠められた自由な空気に満ちている。

César Franck Prélude, fugue et variation.



●E.パワー・ビッグス


エドワード・ジョージ・パワー・ビッグス(Edward George Power Biggs、1906年3月29日 - 1977年3月10日)は、イギリス生まれ、アメリカ合衆国のオルガニスト。

E. Power Biggs ‎– The Historic Organs of Europe (CBS Sony SOCZ - 335-340)


「E-Power」なんてEP-4を思い出す名前の有名オルガン奏者がヨーロッパ各国のパイプオルガンを弾き倒す6枚組。国によって音も演奏も異なる。筆者としてはミニマルな演奏が収められたスイス盤がお気に入り。

Biggs - Pipe Organ - Bach - Passacaglia and Fugue in C minor, BWV 582 "Tracker Organ"



●ジャン・ギユー


ジャン・ギユー(Jean Guillou) 1930年、アンジェ市生まれ。10歳ごろに、早くも同市の教会のオルガン奏者となる。パリ・国立高等音楽院で学んだ後、54年、リスボン・高等文化学院(Instituto di AltaCultura)でオルガン演奏と作曲を教え、58年からベルリンに住みコンサートなどの音楽活動を行う。63年、パリ・サントゥスタッシュ教会の正式なオルガン奏者に就任。82年ニューヨークにて演奏家勲章受章、ブタペストにてリスト・アカデミー賞受賞。パイプオルガンの設計、製作にも携わる。

Jean Guillou ‎– Visions Cosmiques - Improvisations Dédiées À L'équipage D'Apollo 8
(Philips Prospective 21e Siècle ‎– 836.890 DSY / 1969)


フランス現音マニアにはお馴染みの銀ぴかジャケット『21世紀への展望』シリーズの一枚。ギユー自身の即興演奏はエクソシストのようにオルガンの中に棲む悪魔を解放する。『宇宙幻想』というタイトルがこれほど相応しいアルバムもあるまい。

Guillou Improvisation St Eustache



●ゾルタン・イェ二ィ


ハンガリー、ゾルノック生まれの作曲家。ウィーン学派やバルトークの影響を受けブーレーズ、シュトックハウゼンを学び、70年代にミニマリズムへ進む。とてもゆっくりした静謐な作風が特徴。

Zoltán Jeney ‎– To Apollo / For Glass And Metal / Soliloquium No. 3 (Hungaroton ‎– SLPX 12366 / 1982)


昨年ロンドンで購入したアルバム。イェニィ自身が弾くオルガンのリピートにシンバルと呪術的なコーラスが延々と続くミニマルなサウンドは、聴き進むうちに心の檻を溶かして宇宙の藻くずに同化させる。

HH09 hz13 Jeney Zoltán - Apollónhoz



オルガンは
コスモス畑に
水を遣る

コメント
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