A Challenge To Fate

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【私のB級サイケ蒐集癖】第13夜:バーバラ・キース、サイケからカントリーフォーク経由ハードロックへの転身

2018年05月23日 01時45分35秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


1980年代吉祥寺サンロードの今はペットショップになっている店舗の2階にトニーレコードというレコード店があった。本店は神保町にある老舗で、灰野敬二がSilver ApplesやNight Crawlersを見つけた店だと聞いたことがある。吉祥寺店もおそらく70年代半ばからあったと思われ、店内はアメリカ盤特有の埃臭いビニールの香りが漂う、レコード好きにはたまらない店だった。パンクやニューウェイヴやJ-POPよりも、ブルースやジャズ、60~70年代のアメリカン・ロックやポップスの品ぞろえが豊富だった。安売コーナーには傷あり盤やカット盤の名も知らぬレコードがあり、ジャケットやタイトルを見て買ったりしたものだ。そのうちの1枚が以前紹介したオレ的名盤『Douglas Fir /Hard Heartsingin‘』である。
【極私的名盤】ダグラス・ファー『ハード・ハートシンギン』~”全員号泣”サイケ・ブルース・バンド

もちろん安物コーナーだけを見ていたわけではなく、A~Zで分かれた通常コーナーもチェックしていた。その中に他より値段が高くて、そのせいかいつまでも売れずに残っていて、まるで売り場の『主』のようなレコードがあった。特に雑誌等に紹介されることもなく、アーティスト名も知らないながらも、強く印象に残ったレコードたち。トニーレコードは90年代に吉祥寺の別のちょっとお洒落な場所に移転して、なんとなく足が遠のいていたところ、いつの間にか閉店してしまったが、『主』のレコードたちは記憶に残っていた。そんな『主』の中に彼女はいた。

●カンガルー『カンガルー』 Kangaroo ‎– Kangaroo (MGM Records ‎– SE-4586 / 1968)


90年代ロサンゼルス出張の際に立ち寄ったレコード店でトニーレコードの主のひとつを見つけた。ジャケットにクリッシー・ハインド似の素敵な女の子が写った『Kangaroo』というバンドのアルバム。のちにオーリアンズを結成するジョン・ホール(b, g, steel-g, vo)、N.D.スマート二世(ds,vo)、テッド・スペリーズ(l-g, vo)、バーバラ・キース(vo)の4人組。名前も素敵なバーバラの想像通り美しいハーモニーと、粘っこいスチールギターがねじれたフレーズを奏でるサイケ・ポップに萌えに近い気持ちを抱き、バーバラ・キースはオレの推しメンになった。

Kangaroo - Such A Long Long Time 1968


ネットがない時代にどうやって調べたのか記憶にないが、彼女がソロ・アルバムをリリースしていることを知った。しかしこれまたネットで探すこともできず、レコード屋めぐりをしながら偶然出会えるのを待つしかなかった。思いが叶って93年と94年に別の中古盤店で二枚のソロ・アルバムを手に入れることができた。どちらもアルバム・タイトルは『Barbara Keith』というセルフ・タイトル。

●バーバラ・キース『バーバラ・キース』 Barbara Keith ‎– Barbara Keith (Verve Forecast ‎– FTS-3084 / Feb 1970)


1stソロ。ボストン出身のサイケバンド、ボ・グランプス Bo Grumupsのメンバーがバックをつとめていて、所々にサイケな香りが漂うアシッド・カントリーフォークを聴かせる。カントリーの名手ビル・キースのスティールギターが美しい。

Barbara Keith - Blue Eyed Boy



●バーバラ・キース『バーバラ・キース』 Barbara Keith ‎– Barbara Keith (Reprise Records ‎– MS 2087 / 1973)


2ndソロ。ギターにダニー・コーチマーやロウェル・ジョージ、ピアノにスプーナー・オールダム、ドラムにジム・ケルトナー、ストリング・アレンジにニック・デカロといった有名セッション・ミュージシャンが参加。ボブ・ディランの『見張塔からずっと』のグルーヴィなカヴァーの他はバーバラの自作曲。70年代SSWらしいしっとりと聴かせるナンバーが多く、バーバラ・ストライザンド、ローウェル・ジョージ、タニヤ・タッカー、デラニー&ボニー、ディラーズなどがこのアルバムの曲をカヴァーした。

Barbara Keith "All Along The Watchtower"


しかし2作ともセールス的に失敗し、バーバラはプロデューサーのダグ・ティブルス Doug Tibblesと結婚し、暫く音楽業界から遠ざかる。

90年代に夫のダグと息子のジョン・ティブルスと共に「AC/DCミーツ・パッツィー・クライン」と呼ばれるロック・トリオ、ザ・ストーン・コヨーテズを結成。カルト的な人気を得た。作家のエルモア・レオナルドElmore Leonarも支持者の一人で、連作『ゲット・ショーティ』『ビー・クール』にストーン・コヨーテズを登場させ、バーバラの曲を引用した。

●ザ・ストーン・コヨーテズ The Stone Coyotes


Barbara Keith (vo, g), Doug Tibbles (ds), John Tibbles (b)。1998年にデビュー以来14枚のアルバムをリリース。ハードロッカーさながらにギターを弾き倒しパワフルなヴォーカルを聴かせるバーバラ・キースをはじめ、骨太のアメリカンロックをシンプルなトリオ編成展開する。マサチューセッツのローカルバンドの地位を確立し、ツアーで人気を誇る彼らこそアメリカンロックの良心と言える。来日することは有り得ないだろうが、一度生で見てみたいものだ。

The Stone Coyotes Show

The Stone Coyotes Official Site

歌うため
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