地下アイドルへの招待
第12回:異端アイドルは電子雑音の夢を見るか?~自己解放的デンザツアイドル
第12回:異端アイドルは電子雑音の夢を見るか?~自己解放的デンザツアイドル
DJ Necronomicon ネクロノミコン(aka 剛田武)
2018年4月1日(日)に高円寺パンディットで開催された『オキュパイ・スクール 2018 たま爆発・ザ・公開制作』にて、筆者は『Extreme Music from Japan~ジャパノイズと地下アイドル』というテーマでレクチャーを行った。主題は音楽性や楽曲ではなく、文化的背景・存在としての類似性を論ずるものであった。しかし一部の受講者やフォロワーから音楽としてのノイズとアイドルの近似性を追求するよう提言をいただいた。もちろんBiS階段、ゆるめるモ!×非常階段『解体的交歓』、あヴぁ階段など非常階段を主体としたノイズ+アイドルの試みは画期的であったが、基本的にアイドルは歌と踊りを普段通り担当し、ノイズ要素は非常階段が担うスタイルであった。しかしその流れから、アイドルが電子楽器のスキルを磨き、自らノイジシャンとしてアイドル現場を超えた活動を行う事例が増えてきた。普通ならジャンルを越境するといわゆるアウェーな環境に陥りがちだが、地下アイドルヲタクは本能的に「Step Across The Boarder」を求めている。どんなに逆境的な立場に置かれても、推しの笑顔が見れるならコール&ケチャを場合によっては心の中で誰憚ることなく繰り出す悦楽は、たとえは悪いが立ちションや野グソのように人間が生まれつき心の奥に秘めている自己解放欲求につながる、禁断の快楽に違いない。そんな悦びを歌と踊りとノイズで与えてくれる電子雑音系偶像女子を紹介する。
テンテンコ (Tentenko)
1990年8月27日生まれ。北海道出身。身長142cm。 2013年アイドルグループBiSに加入しアイドル・デビュー。それ以前にロックバンドのヴォーカリストとして非常階段のJOJO広重と対バン歴がある。その時広重は「小学生に歌わせて児童虐待ではないか?」と思ったという。2014年のBiS解散とともにフリーランスとして活動を始め、「娘にしたい」とラヴコールを送った美川俊治(インキャパシタンツ、非常階段)の教えを乞いエレクトロニクス/ノイズ演奏を身に着ける。「90年代からの日本の"インディー霊"を全て背負っているといっても過言ではない、ヴァリエーションに富んだアヴァンギャルド表現者」と評されるスタンスは、もはやアイドルとは言い切れない独自性を持つ。30作を超える自主CDRシリーズは、サン・ラ/メルツバウ/Hair Stylisticsに対抗する。美川俊治とのMIKATEN、伊藤篤宏とのZVIZMO、KΣITOとの幡ヶ谷ちっちゃいものクラブなど、プロジェクトユニットも迷宮的。
テンテンコ / なんとなくあぶない
沖縄電子少女彩 (Okinawa Electric Girl Saya)
2000年8月7日生まれ。沖縄出身。身長:160cm。2016年6月沖縄アヴァンギャルドテクノアイドルTincyに加入、Tincyメンバーとして、沖縄を中心に東京や台湾でライブ活動の他にテレビや雑誌などへの掲載、4枚のCDをリリース。沖縄電子少女彩名義で2017年3月より活動開始。沖縄音楽、ノイズ、アンビエント、アブストラクトヒップホップ、フレンチポップなど多岐に渡る楽曲を展開。今年9月から東京に活動拠点を移し、アイドル現場はもちろん、ノイズイベントや路上パフォーマンスをはじめとするゲリラ活動も行う。初めて観てから半年間に彼女自身の人生も大きく変化したわけだが、ブロンドヘアにJK制服でエレクトロニクス機器を嬉々として鳴らすルーズソックスの御足に、衆人環視のライヴハウスで半立ちエレクトの危機に陥ったのは筆者だけではあるまい。現在18歳にしてONNAの色香が弾ける長身のスレンダー女子には、美川やドラびでおの他にASTRO、若林美保などがお手合わせしている。アイドルや女子枠に関係なく若手ノイジシャンとして期待したい。
沖縄電子少女彩 『サンジェルマンの終末』
ノイズとは
電子少女の
メルトダウン
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