筆者がB級サイケを求めてレコード屋巡りをしていて、知らないレコードを買い求める時の目安のひとつに「ジャケット右上の半円マーク」がある。ビーチ・ボーイズやビートルズのアメリカ盤など、60年代キャピトルレコードUS盤のジャケットに入っているマークである。筆者の想像ではレーベル本社のキャピトル・タワーの円形を模していると思われるが、確かなことは分からない(正しい由来を知っている方がいたらご教示願いたい)。
とは言っても筆者がこのマークに気付いたのはビートルズやビーチ・ボーイズではない。きっかけは80年代半ばに大学生協の中古レコードセールの格安コーナーで購入したDavie Allan and The ArrowsのLPである。ベンチャーズのパクリだと思ったら、ビリビリ痺れるファズギター全開のガレージサイケインストロックで仰天した。レーベルは「Tower Records」。丁度その頃渋谷に初のタワーレコードがオープンした時期でもあり、関係あるのか気になったが、これも調べること無く現在に至る。そのジャケットに入っていたのが「半円マーク」だった。
Davie Allan&The arrows – Cycle-Delic Sounds [Full Album]
⇒【私のB級サイケ蒐集癖】第8夜<バイク映画のファズギター>デイヴィ・アラン&ジ・アローズ
それ以来「半円マーク」を意識して中古レコード屋を探すと、いかにも妖しいレコを幾つも見つけた。The Standells、The Chocolate Watchbandといったガレージサイケの有名バンド、The Smoke、Teddy and the Pandas、Max Frost & The Troopersといった企画もの風のB級バンド、それらを集めたRiot on Sunset Stripのサントラ盤などいずれもTowerレーベルだが、そのうちにクイックシルヴァー・メッセンジャー・サービスやスティーヴ・ミラー・バンドなどサンフランシスコ・ロックのレコードにも同じマークがあることに気付いた。それで自然に「半円マークはサイケの目印」と考えたわけである。もちろんキャピトル・レコードはアメリカの大メジャーだから、サイケやガレージロック以外のメインストリームのレコードも多数出ているはずだが、筆者の主現場である「サイケ/ガレージロック」コーナーで出会う半円は、大抵ハズレはなかった。
Teddy and the Pandas - Searchin' For the Good Times
半円マーク以外にも筆者のB級サイケ・ハンティングの目印は幾つかあるが、いずれも個人的な経験を基にした勝手な思い込みなので、真似したからと言って当たるとは限らないのでご了承いただきたい。
半円の
秘密を知らず
サイケ知る
本当はキャピトル・レコードのPEOPLEというバンドの紹介をしようと思ったのだが、半円マークで紙幅を使い果たした。PEOPLEについては別の機会に書くこととして、この辺で筆を置くことにしよう。