もう一つのルーツは60年代に生まれた「ミニマル・ミュージック」であった。音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復する音楽は、アンディ・ウォーホールやリキテンシュタイン等ポップアートに同調するように登場し、現代音楽の大きな潮流となった。創始者のひとりのラ・モンテ・ヤングが主宰した「永遠音楽劇場(The Theater of Eternal Music)」に参加したジョン・ケイルとトニー・コンラッドは、後にそれぞれポップ・ミュージック(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)と実験映画(『フリッカー』)へと活動の場を移したが、一般的に知られるミニマル・ミュージック以上に変化の少ない「ドローン・ミュージック」を創造した。
「タマテングノメシガイ属のこん棒のような形の菌類」であるEarth Tongue(地の舌)は、地の塩(Salt of the Earth)を舐める赤茶けた大地の口唇からニョキっと立ち上がる。総称してタマテングノメシガイ Geoglossum glabrumと呼ばれる彼奴らは、どう見ても食用に適したものとは思えないし、そのボヨンとした体躯に意志があったとしても、自分の存在理由に思いを馳せるほどの聡明さの欠片も見当たらない。尤も、辛い現世からやっとおさらばして生まれ変わってみたら、黒い陰気な唇状の菌として苔の間から顔を出して「俺は何のために生まれてきたのか?」と苦悩するしかない来世があると想像しただけで、逃れられない残酷な輪廻転生の罠からドロップアウトする方法を見つける為に生涯を捧げようという決意を固めるに違いない。
そんな悲しい背景を知ってか知らずかアース・タンズを名乗る3人の音楽家が奏でるのは、歓喜も苦悩も悲哀もすべて含有する大気もしくは大洋のような豊穣な物音ノイズの潮流であった。例えばブライアン・イーノの『Discreet Music(慎み深い音楽)』と、トニー・コンラッドの『Outside the Dream Syndicate(夢組織外)』のどちらに近いか、と問われれば『慎み深い夢の外の音楽組織』と答える。乃ち外からは自己主張が希薄に見えてもは、内側に入り込んだ途端に窒息しそうなほど濃厚な自我の絡み合いに仰天すること請け合いである。CD2枚組で各1トラック、つまり一度プレイボタンを押すたが最後、聴き通すことでしか完結しない音楽劇なのである。前後左右から聴こえる楽器の判別がつかない奇怪な音響に惑わされることなく、アンサンブル(そんな概念がこの文脈で意味があるかどうかは別として)の妙に酩酊しつつ無意識の旅路をしっかり意識して反芻するのが正しい聴き方であり、無意識の底から生れる奈落の獣の胎児と直接対峙せずに退治する対人的退陣策の裏ワザである。無意識を意識する体験したことない経験への敬虔な招待状がここにある。
Earth Tongues at the Carriage House, Baltimore
●演奏者について(公式プレスリリースより) ダン・ペック Dan Peck ( tuba, cassette player)
ダン・ペックは現在ニュヨーク在住の実験音楽家/チューバ奏者。彼はピーター・エヴァンス Peter Evans、トニー・マラビー Malaby、アンソニー・ブラクストン Anthony Braxton、イングリッド・ラブロックIngrid Laubrok、ネイト・ウーリー Nate Wooleyなどのグループのメンバーとしてレギュラーで活動している。また現代音楽のICE (International Contemporary Ensemble)のメンバーであり、ドゥーム・ジャズ・トリオのザ・ゲイト The Gate (w/ bassist トム・ブランカート Tom Blancarte (b)、ブライアン・オズボーン Brian Osborne(ds)のリーダーであり、チューバのソロ演奏も行う。2012年にレコード・レーベルTubapedeを設立し、ソロ・デビューLPをリリースした。
danpeckmusic.com
ジョー・モフェット Joe Moffett (tp, cassette player )
ニューヨークのトランペット奏者/即興演奏家/作曲家のジョー・モフェットは、型にはまらないサウンドと形式、集団作曲、言葉と音楽の交差に強い興味を持った作品を作る。ブルックリンの即興音楽シーンの常連であり、アース・タンズや、2014年にUnderwolf Records からデビュー作『Crows and Motives 』をリリースしたカプラン/メレガ/モフェット・トリオKaplan/Merega/Moffett Trioなどいくつかのグループの設立者である。モフェットのテキストと音楽の探求は、ヴォーカリストのクリスティン・スリップ Kristin Slippとの実験歌曲デュオ、トゥインズ・オブ・エル・ドラド Twins of El Doradoの作品に現れている。デュオとしてはProm Night Recordsから2枚のアルバムをリリースしている。トランペット・ソロ・プロジェクトでニューヨークでの2015年 Festival of New Trumpet Music (Font)に参加した。
soundcloud.com/moffjazz
カルロ・コスタ Carlo Costa (perc)
パーカッション奏者で作曲家のカルロ・コスタは、イタリアのローマで育った。2005年からニューヨークに住み、主に実験即興音楽界で活動する。最近ではナチュラ・モルタ Natura Morta (ショーン・アリSean Ali (b)、フランツ・ロリオットFrantz Loriot(vln), カルロ・コスタ・カルテットthe Carlo Costa Quartet (ジョナサン・モーリッツJonathan Moritz(sax), trombonist スティーヴ・スウェルSteve Swell (tb)、 and bassist ショーン・アリSean Ali (b), アース・タンズEarth Tonguesといったグループのリーダー/コ・リーダーの他、ギタリストライアン・フェレイラ Ryan Ferreiraとのデュオ、エインシエント・エネミーズ Ancient Enemies (ナサニエル・モーガンNathaniel Morgan (sax)、 ジョアンナ・マッテリーJoanna Mattrey (vln)、 大編成アンサンブルの アクースティカAcusticaそしてパーカッション・ソロ。プロジェクトで活動する。2014年に実験/即興音楽専門のNeither/Nor Recordsを設立した。
case of 3 solos, also 1 trio
- Mitsuru Nasuno Solo Tour 2016 Final -
LIVE ナスノミツル (bass) / 菊地成孔(sax) / 灰野敬二 (today's instruments)
Each solo sets, & Session set
■Open 19:00 / Start 19:30
■Adv 3500 / Door 4000 (+1D)
ジェリー・リー・ルイス('Jerry Lee Lewis、1935年9月29日 - )は、アメリカのロックンロールおよびカントリー・ミュージックのシンガーソングライター、ピアニスト。1950年代後半のロックンロールで活躍し、「キラー (The Killer ) 」の愛称で呼ばれ、「ロックンロール初のワイルドな男」と言われることもある。「火の玉ロック(Great Balls of Fire)は1957年のヒット・ナンバー。
「Ball of Confusion (That's What the World Is Today)」は70年のテンプテーションズのヒット曲。歌詞が手元にないので正確なことは言えないが「混乱のボール」とは様々な問題に喘ぐ地球のことを指していると思われる。80年代ニューウェイヴの象徴ラヴロケは、髪形やファッションは野暮ったいがサウンドはカッコいいと再認識。アナログ盤を買いに行こう。
Love And Rockets - Ball Of Confusion [Music Video]
The Birthday
『SCREAMING OF SIAMESE CAT』
TOUR 2016 Final
12/4(日) @東京・豊洲PIT
Open 17:00 / Start 18:00
2016年の第四四半期下半期は地下音楽とアイドルに明け暮れた感があるが、いつも心の奥に灯し続けたのはロケンローへの愛であった。地下音楽への入り口はパンクロックだったし、地下アイドルの核心にはロケンロー現場のカオスがある。しかし今の時代ロケンローだけで生きて行くのは楽じゃない。EDMやデジロックに浮気したまま戻れなくなるケースも少なくない。とことん死ぬまでロケンローを貫くぜ!なんて時代錯誤の極みかもしれない。バカにするならすればいい。オレはオレの道を行く、と宣言したかどうかは知らないが、オレ的ロケンロー三羽烏のザ・クロマニヨンズ、浅井健一、そしてThe Birthdayはブレずに己のRAOD TO R&Rを生き続ける。
The Birthday – LIVE DVD / Bu-ray「LIVE AT NIPPON BUDOKAN 2015“GOLD TRASH”」ダイジェスト
今年開店40周年を迎えた新宿ロフトの記念イベントの一環として『DRIVE to 2100 』が開催されます。
これはライブハウス・イベントの原型となった「DRIVE to 80s」、その流れを汲んで10年おきに開催された「DRIVE to 2000」「DRIVE to 2010」と続くDRIVE toシリーズの番外編。ロフトと共に歴史を重ねたイベントがさらに未来に向かいます。(EATER ON LINEより)
SHINJUKU LOFT 40TH ANNIVERSARY
DRIVE TO 2100 4DAYS
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV¥3500 / DOOR¥4000 ※通し券(11/29,11/30,12/1,12/2の4公演)あり ¥10,000
80年代のインディーズ・シーンの歴史を語る上で欠かせないイベントが新宿ロフトで1979年8月28〜9月2日の6日間開催された「DRIVE to 80s」である。カメラマンで後にインディレーベル「テレグラフレコード」を立ち上げる地引雄一等を中心に企画され、名古屋や関西のバンドを含め当時の日本のパンク/ニューウェイヴ系のバンドが総出演した画期的なイベントだった。思い返せば同年ライヴハウス通いを始めた筆者も興味を持ち高校の友人を誘ったが反応が悪くて行かずじまいだった。「DRIVE to 2010」は2009年10月に1ヶ月間開催された。参戦したのはDVDにもなった原爆スター階段と灰野敬二+チコヒゲの二日だけだったが、噂によるとキノコホテルのマリアンヌ東雲はほぼ全通(&泥酔)したらしい。いずれも同時代の自覚的なライヴ活動を行うアーティストが一同に会し、その先の時代を予感させる化学反応を起こすイベントだった。
⇒DRIVE TO 2010:非常階段、スターリン他@新宿ロフト 09.10.10(sat)
⇒DRIVE TO 2010:灰野敬二×チコヒゲ他@新宿ロフト 09.10.11(sun)
それらに比べると今回の「DRIVE to 2100」は“番外編”として未来への土俵作りというより現状報告的意味合いが強い気がする。もちろん七尾旅人の出演したDAY2は客層は若く動員も良かったのかもしれないが、筆者が参戦したDAY3,4は80年代に活動したバンドが中心で出演者も観客も高年齢。今年はアイドルイベントで新宿ロフトへ来ることが極端に増えたので、年配者だらけのロフトはまるで別世界のような気がする。ノスタルジーを求める同窓会的な空気は確かにあるが、ステージに見入る観客の熱意はドルヲタやパンクキッズに負けてはいない。還暦を超えた『ロック』の在るべき姿は、未来に向かって猪突猛進するだけではないことが明らかになった今、(恐らく)この場に集った者の誰ひとりとして生き長らえることのない2100年へ向けてのメッセージとしてこのイベントは相応しい。
DAY3
カトラトゥラーナ / くじら / ムーン♀ママ(PIKA+坂本弘道) / 佐藤幸雄とわたしたち / 初音階段
【BAR STAGE】テンテンコ / 黄倉未来 / ju sei / コルネリ / フロリダ / PIKA
BARステージは「DRIVE to TENTENKO」と題してテンテンコが企画するイベント。あふりらんぽのPIKAとのデュオでは、同じ顔ペインティングでビュークのような格好で電子ノイズとドラムが対峙するカラフルセッション。アイドルだから成し得る振り幅の広さを堪能したい。
●カトラトゥラーナ
カトラで一番好きなのは『マーキームーン第5号』の付録ソノシート「Mortera In The Moonlight」なので、その後の正規リリーズで聴けるサウンドに今ひとつ乗り切れなかったが、初めて観るライヴステージは思ったよりもチェンバーロック色が強く、変拍子ビシバシのレコメン系だった。化粧の効果で年齢による衰えは全く感じさせない。
DAY4 FINAL
恒松正敏グループ(ゲスト:鶴川仁美) / NON BAND / TACO(山崎春美/佐藤薫〔EP-4〕/末井昭/後飯塚僚) / Phew
【BAR STAGE】< J-TOWN STYLE 2100>コンクリーツ / バチバチソニック / タマテック / N13他ゲスト多数
「DRIVE to 2100」のトリを飾るのは、地下音楽界から刺客・山崎春美率いるタコ。EP-4の佐藤薫(ds,electronics)、マイナー時代の盟友・後飯塚僚(viola)、編集者の末井昭(as)という布陣で言葉とサウンドとビートが交錯する世界はノスタルジーとは別世界、かと言って現在進行形の宇宙とも別次元のタコワールドを現出した。末井のサックスは非音楽者ならではの異能プレイ。手前味噌だが、筆者のサックス演奏に似てる気がした。ほぼ一年前のロフトでタコを観た時は過去がフラッシュバックしたのが興味深い。
⇒【回想独白】TACO、ガセネタ/A-MUSIK@新宿LOFT 2015.11.17(tue)に想う