タリバム!インタビュー
TALIBAM! Interview
Interview & translated by 剛田武 Takeshi Goda (2019年3月中旬Eメールにて)
●バイオグラフィー
マシュー・モッテル Matthew Mottel (Mini Moog, Midi Synths, Yamaha CS1x, Roland Juno 1, Roland Lucina, Arp Solus):
1981年ニューヨーク生まれ。1997年以降国際的なアート・コミュニティでアーティスト/パフォーマーとして活動している。公共のスペースをアーティストと一般の人が交感できるようなより創造的かつ共生的な場所に変えることに興味を持っている。
これまで実父でフォトグラファーのサイウス・モッテル Syeus Mottel、振付師のキャロル・アーミテージ Karole Armitage、フルクサス・アーティストの刀根康尚、楽器発明家クーパー=ムーアCooper-Moore、映像アーティストのピーター・コフィンPeter Coffinなどと共演。2010年にNYイシュー・プロジェクト・ルームIssue Project Roomでレジデンシー公演、2011年にLMCC Swing Space Recipient、MoMa , Museum of Contemporary Art Chicago , Victoria & Albert Museum London , The Kitchen NYC, All Tomorrow's Parties Festivalなどの有名な会場やフェスに出演して来た。さらにユニークな演奏とコラボレーションの機会を求めて実践を広げている。
ケヴィン・シェイ Kevin Shea (drums, electronics)
ドラマーのケヴィン・“Sir Gigs-A-Lot(ライヴ狂)”・シェイは真のオリジナルである。同世代で彼ほど独自かつ有名なドラマーはいない。彼の高度に考え抜かれたドラム演奏は、卓越したテクニック、意識的な生々しさ、強迫観念に根差している。これまで200作以上のアルバムに参加し、45以上の国で演奏し、アヴァンギャルド、コンテンポラリー・ミュージック、その他のジャンルの数えきれないほど多くのグループやプロジェクトに参加し、容赦のない多作家かつ分裂症的存在であり続けている。
1. 二人の出会いについて教えてください。
マシュー(以下M):ケヴィンのことを初めて知ったのは、1999年か2000年のインディ・マガジン『Tuba Frenzy』に載ったイアン・ウィリアムス Ian Williamsのインタビューでした。当時Storm and Stress とDon Caballeroという二つのバンドをやっていたイアンは、ケヴィンのことを「自分が一緒に演奏した中で最高の即興ドラマー」と語っていて、それ以来気になる存在になりました。そのころ僕はニューヨーク中の腕のいいドラマーと数多く即興演奏していて、2003年4月Free103.9 Radio Station Loftにサックス奏者のラス・モシェRas Mosheのバンドで出演した時のドラマーがケヴィンだったんです。とても興奮しました。もちろん演奏も最高でしたが。もっと重要なことは、お互いにすごく気が合って、お互いにリスペクトを払いながら冗談を言い合える関係になれたことです。16年経った今でも、リスペクトと笑いが絶えません。とてもいい関係なのです!
同じころ、友人と即興グループを始めて、ドラマーのクリス・コルサーノと知り合いました。僕は17歳、彼は24歳でした。彼はボルビトマグースBorbetomagusを教えてくれて、僕のバンドEYE-DOORに少しの間参加してくれました。さらにTEST!のドラマーのトム・ブルーノTom Brunoを紹介してくました。シンセサインザー奏者を探していたトムは、一緒に演奏しようと誘ってくれたのです。トムとのコラボレーションは最高でした。彼は僕より45歳も年上なのに、僕に敬意を払ってくれたのです。二人でノー・ネック・ブルース・バンドのロフトでの週末のジャム・セッションに参加してたくさんのことを学びました。この少し後にCooper-Moore, Daniel Carter, Sean Meehan, Tim Barnes, Michael Evans, Ryan Sawyer, Matt Heyner, David Gouldなどアヴァンギャルド・ミュージック・シーンの優れたミュージシャンと出会い、一緒に演奏するようになったのです。
だからケヴィンに会ったとき、僕は新しいことを始める準備が出来ていたのです。
K:僕は80年代末からバンドでプレイしてきたので、たくさんのプロジェクトがあります。最も有名なのは、バトルズ Battlesのイアン・ウィリアムスがギターを弾くStorm & Stress (1994-2000)です。Touch and Go Recordsから2枚のアルバムをリリース、一枚はスティーヴ・アルビニ(『Storm & Stress 』1997年)、2枚目はジム・オルーク(『Under Thunder and Florescent Lights』2000年)のプロデュースです。S&Sの基になったのは、1993年に始まったサックス奏者Micah Gaughとのコラボレーションです。Micahのアルバム『The Blue Fairy Mermaid Princess』に1997年に共演したときの録音が収録されています。MicahとS&Sでの活動を皮切りに、2003年までにたくさんのアーティストと共演してきました。Vernon Reid, Marc Ribot, Arto Lindsay, Marvin Sewell, Melvin Gibbs, Daniel Carter, Ravish Momin, Michael Pestel, Graham Haynes, DJ Olive, Jim Black, William Hooker, Bern Nix, Josh Roseman, Tyondai Braxton, Mary Halvorson, Pamelia Stickney, Kyp Malone, Jon Seden, Peter Evans, Beans and Hprizm/High Priest from Antipop Consortiumといったアーティストの他に、ボストンのシューゲイザーバンドSwirliesとのコラボレーションもあります。2000年代初めには、有名なJoan Of ArcのBobby Burg率いるLove Of Everythingにドラムで参加し、『friENDs』と『Piano. Bedroom. Florida.』の2枚のアルバムを作りました。
M:リスクを恐れず独自の音楽言語を生み出すアーティストが好きです。若手のサックス奏者では、ロサンゼルス/メキシコ出身のマーティン・エスカランテMartin Escalanteがお気に入りです。彼は4月に日本へ行きます。他の誰にも真似できないサウンドを持っています。デュオでレコーディングし短いツアーもしました。マーティンは他人をコピーすることはありません。また、アンドレア・パーキンス Andrea Parkinsの成長にも注目しています。20年前に初めて会ったとき、彼女はジム・ブラックとエレリー・エクスタインのバンドでアコーディオンを弾いていました。そのバンドも素晴らしかったのですが、今では彼女はアコーディオンを辞めて、テーブルにオブジェを並べて、コンピューターでコントロールして音楽を作っています。彼女自身が発明した音響発生システムは驚異的です。20年かけて進化・変化してきたのでしょう。僕自身も自分の音楽の世界で同じように進化することにトライしています。
K:まず最初に、昨年リリースしたタリバム!15周年ボックス・セットで共演させてもらった数多くのミュージシャンに深い親近感を持っています。Audrey Chen, Phil Minton, Tamio Shiraishi, David Watson, Alan Wilkinson, Joe McPhee, Sandy Ewen, Luke Stewart, Ron Stabinsky, Jeremy Wilms, Colin L., Sam Kulik, Steve Dalachinsky, Tim Dahl and Tom Blancarteといった素晴らしいミュージシャンたちです。
自分たちのヒーローとコラボレート出来たことは素晴らしいし、近い将来もっと多くの憧れのミュージシャンと共演する幸運に巡り合えそうです。今年はすでにAndrea Parkins, Ingrid Laubrock, Stephen Gauci, Adam Lane, Jeong Lim Yang and Akio Mokunoと共演しました。今年後半には、Silke Eberhard, Nikolaus Neuser, Rachel Therrien, Dodó Kis, Welf Dorr, and Ayako Kandaといった国際的な音楽家とのコラボレーションが予定されていて、今からエキサイトしています。4月7日に京都でノー・ネック・ブルース・バンドのヴォーカリストのMicoと共演するのも楽しみです。
M:オープンな人であれば誰でもコラボしたいです。タリバム!はギリシャ古典音楽合唱団やハイチ・スティールドラム・バンドとでも素晴らしい音楽が作れると思います。大切なことはひとつ、共演者が僕らの真似をしないで気持ちよく演奏してくれることだけです。音楽への適応とは、どちらか片方があまりに強すぎるのではなく、すべてのスタイルがひとつなって新たな方法を作りだす許容力です。
今回のツアーの物販CDを聴いてもらえれば、日本の音楽ファンに僕らのコラボレーションを理解してもらえるでしょう。例えばボックスセット『15th Anniversary Box Set- Presenting 15 New albums for 2018』には僕らが尊敬するユニークなミュージシャンが多数参加しています。
M:ヨーロッパをツアーしてみて最高だったのは、アメリカに来る有名なミュージシャン以外の才能の持ち主にたくさん会えたことです。有名なミュージシャンは忙しすぎて僕らと共演する時間を取れません。だから現地を訪れて、多数のオープンな心のミュージシャンと出会い、共演を通して新たな体験が出来たことが幸せでした。フローリアンは素晴らしいミュージシャンで、ヤン・クラレ Jan Klareがオーガナイズする大編成のグループDORFのメンバーです。
M::僕らがタリバム!のままで参加することで、オープンで自由に演奏できたのがうまくいった理由です。また、昨年のドイツ・メールス・フェスティバルでAC/DCのカヴァー・バンドをお披露目しました。Chad Taylor / Bobby Hall / Tchseser Holmes / Christian Lillinger / Giuseppe Mautone / Valentin Duit / Spazzfrica Ehd / Achim Zepezauerという8人のドラマーをフィーチャーして「Big Impakt」という曲を演奏しました。彼らは僕らのやり方を信頼してくれて、自由なプレイで魔法のようなサウンドを生み出してくれました。
K:現在僕が気に入っている日本のミュージシャンは、出会って共演する機会を得た人たちです。個人的な思い出があるからです。NYには多くの偉大な日本人ミュージシャンが住んだり訪れたりします。2013年にタリバム!とSam Kulikで伝説的な刀根康尚さんとNYのMoMAでの“Tokyo: Experiments in Music and Performance”のプログラムの一つとして共演しました。刀根さんのFluxus時代の古典Music For Painting, Anagram for Strings,に加え。即興演奏をしました。その共演に続き刀根さんとレコーディング・セッションを行い、2015年Karl Recordsから『Double Automatism』としてレコード・リリースされました。素晴らしい!2013年にはまた、ドバイ近くで開催されたSharjah Art Biennialに招聘されて、Yoshimi P-Weと吉田達也を含む10人の世界中のドラマーと演奏しました。長年愛聴してきた二人の素晴らしいドラマーと一緒に即興演奏するのは刺激的な体験でした。
今回のツアーの後NYに戻ったら神田 綾子と共演するのを楽しみにしています。将来は、大友良英、巻上公一、などなどと共演したいです。未来に何が起こるか誰にもわからないでしょう。数か月前に僕のエクスペリメンタル・ジャズバンドPuttin’ On The Ritzがあがた森魚と対バンしました。うれしい驚きでした。
Luke Stewart - Works for Upright Bass and Amplifier - at De Construkt, Brooklyn - Mar 31 2019
●Ryosuke Kiyasu+アンドリウス・デレヴィ+ゲディミナス・ステパナヴィシウス
グラインドコアバンドのSETE STAR SEPT(セテスターセプト)や、フリージャズバンドのKIYASU ORCHESTRA(キヤスオーケストラ)、灰野敬二の不失者等で活動するドラマー、Ryosuke Kiyasuはスネアひとつもってヨーロッパツアー中。年度末はアムステルダムで若手即興演奏家とトリオで共演。世界的にも珍しいスネアソロで知られるKiyasuのプレーがホーン2本と対峙する異能プレイが聴きもの。
Ryosuke Kiyasu (snare drum)
Andrius Derevi (saxphone)
Gediminas Stepanavicius (sousaphone)
Ryosuke Kiyasu (drum) + Andrius Derevi (sax) + Gediminas Stepanavicius (sousaphone) in Amsterdam
フェルナンド・ヌッティ FERNANDO NUTI(lead vocals, guitar, sitar) アンドレア・ヴォルパト ANDREA VOLPATO(lead guitar, backing vocals) アレッサンドロ・ボッチェーロ ALESSANDRO BOSCHIERO(bass) ダリオ・ルチェッシ DARIO LUCCHESI(drums, percussion)
New Candys - Song for the Mutant
●ソニック・ジーザス Sonic Jesus
イタリア生まれのマルチ楽器奏者ティツィアーノ・ヴェロニーズ Tiziano Veroneseにより2012年にスタートしたプロジェクト。Fuzz Club RecordsからリリースしたEPが各国で高く評価され、ヨーロッパ中のロックフェスから出演依頼が殺到した。2017年アルバム『Grace』をリリース。浮遊感のあるアシッド・フォークを核に、ガレージロックとクラブビートも取り入れ、サイケの境界を拡張している。