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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

『朽ちていった命ー被曝治療83日間の記録』(新潮文庫)

2011-06-07 15:30:07 | 日記
 1999年9月、茨城県東海村の核燃料加工施設「JCO東海事業所」で、ウラン燃料の加工作業をしていた大内さんら3人が「青い光」を見た。その瞬間、大内さんらは中性子線に貫かれた。「臨界」ー核分裂反応が連続して起き、その際に放出される中性子線が体の中を通過していった。しかしただ貫通したのではない。体のなかのDNAを破壊していったのである。

 大内さんは、最初は千葉県にある放射線医学総合研究所に運ばれ、そして東京大学付属病院に運ばれた。当初元気であった大内さんの体が徐々に変化していく。その変化に対して、東大病院の医師や看護師が懸命の医療・看護を行うも、被曝による変化は、治療を拒む。

 この本は、NHKが放映したドキュメント「東海村臨界事故」を本にしたものだ。

 被曝した大内さんの病状の変化が克明に描かれ、その緊迫した姿が浮かび上がる。

 原発を動かすためには、多くの労働者が危険な環境の中で様々な作業を行う必要がある。そこで働く人々の多くは、「核」の危険性を十分に知らされずに従事している。

 大内さんも、核燃料の危険性に対応していないズサンなやり方を強いられ、そして被曝した。

 「核」による被曝がどれほど惨いものであるかを、大内さんの被曝から死に至る83日間が示している。

「ノーモアヒバクシャ」という声が、日本では叫ばれる。しかしヒバクシャは、原発がある限り「生産」され続ける。今、福島をはじめとした日本には、大量の「ヒバクシャ」が生み出されている。

 被曝とはどういうことか、この本はその姿を明確に示してくれる。良い本だ。
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