『中学生から知りたいパレスチナのこと』(ミシマ社)を図書館に返した。同時に、『ブラッドランド』上(筑摩書房)と『暗黒の大陸』(未来社)を借りてきた。いずれも『中学生から知りたいパレスチナのこと』のなかで言及されていた本である。
今、『ブラッドランド』の「まえがき」を読み、バルト三国、ポーランド、ウクライナ、ポーランドの、黒海からバルト海にかけての地域では、スターリンとヒトラーによって、政治的な殺人が行われ、1400万人が殺されたと書かれている。
『中学生から知りたいパレスチナのこと』のなかで、なぜ『ブラッドランド』に言及されていたのかというと、その地域からイスラエルに移住してきたユダヤ人が最も多いということで、イスラエルのパレスチナ人に対するジェノサイドの背景にその地域に起きた諸々のことが影響しているのではないかということであった。
わたしは先に、『ナチズム前夜』(集英社新書)を読みはじめているが、ドイツの帝政が崩壊しワイマール共和国が誕生するそのなかで、ドイツ国内で政治的暴力が頻繁に振るわれていた、ことを知った。
現在のヨーロッパをみると想像できないが、実はヨーロッパは、暴力が吹き荒れる地帯でもあったのではないかと思う。
昔図書館で西欧の拷問具の図解本を見たことがあるが、その残酷さは、日本のそれをはるかに凌駕すると思ったことがある。こうまでして人間が他の人間を肉体的に苦しめるということが、なぜできるのか。振り返って見れば、十字軍やヨーロッパでの「魔女狩り」、さらに非ヨーロッパ地域への侵入に際して行われた非白人に対して行われた無数の虐殺。
ヨーロッパの歴史は、常に、暴力性を帯同しているのではないか。そのヨーロッパ人が移住してつくったアメリカ合州国も、それは同様だろう。
わたしたちの社会的・歴史的認識には、西欧中心主義的なものが入り込んでいるが、サイードが『オリエンタリズム』で指摘したことを、もう一度考えてみる必要があるだろう。