『パリに死す 評伝・椎名其二』を読んでいる。そこに、ロマン・ロランの名が出て来た。
ロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」は、高校時代、全集の確か1~4だったと記憶しているが、それを買ってひたすら読みふけった。読んでいてこれは!と思ったところは、ノートに書きつけた。あのノートはどこに行ったのか、そしてあの全集はどこに行ったのか。ひょっとして処分してしまったのか、記憶がない。
「ジャン・クリストフ」は、理想主義的な、若い者に、生き方についていろいろな示唆を与えるものであった。老年になってもはやあの細かい、二段組みのあの小説は読めないだろう。しかしあれを読んだとき、精神は大いに高揚した。何か積極的に生きていこうという意欲みたいなものが湧いてきたように思う。
あの頃の精神の鼓動は、もはや過去のものとなってしまったが、そこには戻れない。
若い頃、未来はひろがっていた。でも、この歳になると、みずからの人生をどう閉じていくかを考えなければならなくなる。