『現代思想』12月号、特集は、「田中美津とウーマンリブの時代」である。
田中美津という名前は、若い頃から知ってはいたが、彼女の本は一冊も読んでこなかった。同じ時代の空気を吸っていたのに、要するに関心がなかったということである。
その田中美津さんが亡くなった。そこで、『現代思想』が特集を組んだというわけだ。同時代に生きた、とはいっても当時でもかなり上の年令であったが、その名は知っていたし、彼女が始めたウーマンリブの運動については、その関係の雑誌記事は読んだことがあった。
『現代思想』が田中美津の特集をするというので、田中美津とは何だったのかを知りたくて購入し、読んだ。
田中美津のインタビューが、あった。それを見ていて、田中美津は、悩み、深い思考をへてたどり着いた彼女なりの論理があり、それが普遍性をもった内容として存在することを知った。だから、田中美津は振り返られるのである。
さまざまな人びとが田中美津を論じているのが、『現代思想』12月号である。それを読んで、田中美津を通じていろいろなことを知った。
人間はいろいろな矛盾を抱えて生きている。矛盾の中で、あるべきこととあるべきではないことが発見されるのだが、通常は、あるべきことを取り出し、あるべきではないことを捨て去ることを試みるのだが、田中美津はその矛盾を抱えて生きることから出発することを主張する。
田中美津が主張したことには、もちろん多くの論点があるが、「今、生きている」、これこそがすべてだという主張に、わたしは感動を持った。
いろいろ書きたいことはあるが、本書を読んで、ウーマンリブ運動の先駆けだった人間の、その体験などに基づいた創造的な思想に、刺激を受けた。
やはりすごい人だ。