窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

国民の教養

2011年09月03日 | レビュー(本・映画等)
  分かりやすさと数値に基づく客観性で定評のある三橋貴明氏の最新作。  

  一般に通念として共有されている情報の歪みを、筆者はこれまでも言葉の明確な定義と数値に基づき多くの著作やブログで正してきましたが、本書はその中でも現在のわが国が直面している諸問題に関して、集大成とも言える内容となっています。

  本書で取り上げられている、誤った通念を目次からざっと列挙しますと、

・日本は財政破綻する
・少子高齢化でデフレになる
・大きな政府は間違っている
・政府の借金は国民を貧乏にする
・日本の治安は悪化している
・日本の公務員は多すぎる
・日本の道路はもう十分だ
・日本の医療制度は最悪だ
・日本の年金制度は崩壊する
・グローバリゼーションは正しい
・多文化主義は世界の潮流である
・自由貿易は関係国を豊かにする
・日本の貿易依存度は大きい
・円高なら為替介入しろ

というようなものです。「20年近くも続くデフレ不況に加え、未曾有の震災被害に直面している現状を何とかしたいとは思っているが、耳に入る情報は絶望的な内容ばかり。八方塞で何をどうしたら良いのか分からない」そんな悩みをお持ちの方にぜひお勧めしたい一冊です。

 さらに本書はそのタイトルである「国民の教養」が示すとおり、経済活動の源泉であるナショナリズムとは何かについてまで踏み込んでいるという点が特徴的です。このナショナルおよびナショナリズムについては前回ご紹介した「国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策」が詳しいのですが、歪められた情報について、それを歪んでいると判断するためには、そう思うための基準を自分の中に作っておく必要があります。この基準を構築するためにやはり、ナショナルやナショナリズムの理解についてまで触れざるを得ないということではないでしょうか。

 逆の見方をすれば、国民国家であれば当然共有されているべき、ナショナルやナショナリズムについての観念が欠落していることにこそ、歪められた情報が通念として流布し、ほとんど疑問を差し挟まれることなく定着しているわが国の根本的な問題があると言えます。

経済と国家がわかる 国民の教養
三橋 貴明
扶桑社


  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
  ブログをご覧いただいたすべての皆様に感謝を込めて。

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