弊社の営業所がある、福島県郡山市。そこで日本一の生産量(市区町村別)を誇る、郷土料理「鯉」を食べてきました。記憶を辿る限り、鯉を食べるのは6歳の時以来ですから、実に40年振りとなります。
かつて雨の少ない原野が広がっていた郡山は、1882年(明治15年)の安積疏水完成により、日本有数の穀倉地帯に変貌しました。また、猪苗代湖から引かれた疏水の豊富な水力を利用し、1898年(明治31年)に沼上水力発電所が完成すると、江戸時代から盛んだった養蚕業を土台に郡山絹糸紡績会社などの近代的な製糸産業が興りました。
郡山市のHPによれば、安積疏水により使われなくなった灌漑用ため池を利用し、絹糸紡績により繭を採った後の蚕の蛹が大量に入手できたことから、それを餌として鯉の養殖が盛んになったのだそうです。元々「薬魚」とも呼ばれ珍重されてきた鯉ですが、冬場の厳しい郡山にあって、鯉は安積の開拓者の貴重な蛋白源となったようです。
因みに、この日選んだ日本酒は、地元郡山の「純米吟醸 田村」。田村は古くから養蚕の盛んな地域でもありました。
さて、訪れたのは「正月荘」というお店。かつては郡山駅前にあったそうですが、震災後こちらに移転したようです。最初に目を引いたのは、鯉の鱗煎餅。その名の通り鱗を唐揚げにしたものですが、思いのほか味わい深く、ビールにとても良く合います。
さらに驚いたのがこちら。味噌か何かの調味料だと思っていたのですが、何と鯉の卵の甘煮だそうです。
メインは豪快に盛られた鯉の洗い。鯉は泥臭いのではないかと思われがちですが、臭みは全くなく、淡白で上品な味わいです。洗いは、定番の酢味噌か生姜醤油でいただきます。
そしてしゃぶしゃぶにも。意外にもお湯にくぐらせても固くなることはなく、むしろほろりと柔らかくなります。こちらはポン酢で。かつて鯉は「高位」とも呼ばれ高級魚だったそうですが、分かる気がします。
鯉の西京焼き。こちらも本当に身が柔らかく上品です。
少し趣向を変え、鯉の中華風あんかけ。
骨まで柔らかく食べられる、鯉の甘露煮。
最後は鯉の茶漬け。鯉の漬けをご飯にのせ、お湯をかけていただきます。淡白な鯉に山椒が効き、実に素晴らしい逸品です。鯉を味わい尽くすコースですでにお腹もいっぱいだったのですが、それでもこれは入ってしまいます。満足な締めでした。
正月荘
福島県郡山市大槻町水門東1-20
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした