窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

第5回燮読書会に参加しました

2022年08月02日 | 交渉アナリスト関係


 8月1日、第5回燮読書会に参加しました。こちらは交渉アナリスト1級会員のための勉強会である燮会のメンバーが有志で立ち上げた読書会で、昨年12月から毎月第一火曜日(今回はたまたま月曜でしたが)に開催しています。このように、燮会は基本的にメンバーがめいめいやりたいことがあれば手を挙げられることになっています。今回は1級会員になって初めて燮会に参加するという方も複数名いらっしゃいました。



 さて、今回から3冊目に入ります。選んだのは日本交渉学会常務理事の東川達三先生が出された、「世界標準のビジネス交渉」(現代産業選書、2022年)です。こちらは京都大学経営管理大学院でも使用されているテキスト”Practical Business Negotiation”の翻訳版ですが、日本人にも読みやすいよう随所に日本の事例等が盛り込まれています。「読み物」としての過去2冊とは違い、コチコチの教科書ですが、体系的な構成で例題も多く良書です。





 今回の範囲は第1章~第2章。いつものように、ファシリテーターの波戸岡さんより今回の範囲のサマリー。これがあるので、忙しくて本を読めなかったという人でも安心です。

第1章:交渉戦略-ビジネス交渉の戦略構想-
・分配型交渉と統合型交渉
・交渉戦略の選択
・交渉を避ける戦略

第2章:交渉の心理戦略-敵対ではなく互恵関係を築く‐
・情報収集のための戦略的質問法
・共感のメカニズム
・印象操作
・交渉に役立つ満足の感情



 その後、グループアウトセッションに分かれ少人数でディスカッション。その後全体で話し合われたことを共有しました。いつものことですが、同じテーマを扱っていても話し合われる内容はそれぞれのグループで驚くほど異なります。

 第1章については、このような意見がありました。

・「状況の変化に合わせて戦略を変更する」というのは実務でも非常に大事だと思う。
・しかし、その状況が変化していることに気づけないというような状況にしばしば遭遇する。
・当初は、最初はお互いの気持ちに配慮していても、時間の制約と共に構っていられなくなる。
・逆に戦略的に土壇場の状況を作り出すこともある。
・サンクコストの罠は意外に多い。
・「譲歩」は統合型交渉として扱うべきなのか?
・情報の非対称性が大きい場合、片方にとって統合型でももう片方にとって分配型になることがある。
・立場の強い側は分配型になりがち、弱い側はいかに統合型にもっていけるか?
・分配型と統合型の境界について疑問。
・BATNAを「BATNA力」とあえて「力」をつけている翻訳は良い。実際BATNAは交渉のパワーのひとつであり、それが感じられる。

 第2章については、このような意見がありました。

・情報収集、質問は大事。
・業界の性質上、分配型が主流の世界でも聞くことによって、相手が心を開いてくれることが多い。
・最初に何を実現したいのか、目的をはっきりさせる必要がある
・交渉の満足度のカテゴリは、交渉準備のチェックリストとして大切。ただ、各カテゴリのウェイトについては状況や文化により異なると思う。
・本当はそうでなくても相手が勝ったと思っていればwin-winになりうることもある。
・当事者の共感、信頼が代理人の存在によって阻まれることがある。
・お互いの認識はズレているのが前提であり、真意を確かめないとモデルを当てはめるだけではうまくいかない。
・交渉におけるコミュニケーションは情報収集の手段と捉えるべき。
・交渉における「共感」とは何なのか?美辞麗句にとらわれずその目的を忘れないことも大事(例えば、カウンセラーとビジネスとでは目的が違う)。

 因みに、「質問」については、日本交渉協会顧問でもある清水建二さんの「裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける」が、タイトルこそ過激ですが科学的証拠に基づいて書かれておりお勧めです。



 今回は最初の章ということで、イントロ的色合いが強かったのですが、その割には時間一杯使い切る活発な議論がなされました。次回は10月開催となります。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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