都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
さらに「運命」を楽しんで…。 ティーレマンとウィーンフィル。
18時まで「運命の力」を楽しんだ後は、そのまま続けて「ヨーロッパ・クラシック・ライブ」を聴いてみました…。と言いたいところですが、なんせオペラは3時間の長丁場。いくらFMと言えども少し聴き疲れてしまったのも事実なので、食事を挟んで再度FMに耳を傾けてみることにしました。演奏はティーレマンとウィーンフィル。曲は超有名な「運命」。現地からの生放送です。
ヨーロッパ・クラシック・ライブ NHK-FM(3/26 18:00~)
曲 ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調
指揮 クリスティアン・ティーレマン
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
収録:ウィーン楽友協会から生放送
ラジオのスイッチをつけたら、ちょうどメインの「運命」が始まるところ…。指揮のティーレマンと言えば、まさに21世紀の音楽界へ君臨せんとばかりに、指揮の王道を歩む若き「巨匠」。殆ど彼を聴き込んだことのない私の勝手な思い込みでは、力感迸るたくましい造形美とねっとりとした官能美を備えつつ、音楽の巨大な大伽藍を作り上げるイメージがあるのですが、この「運命」を聴くと、そんなティーレマン像はあくまでも一面でしかないことに大いに気付かされます。むしろ妙に個性的な表現、つまりオーケストラへ細工を加えるかのようにして音楽に意外性を与える点の方が興味深く感じられました。激しく揺れる弦の中から、突如奇声が上がったかのように浮かぶ木管群。思わず椅子から仰け反ってしまいそうなほどのアゴーギク。特に、第二楽章での情感豊かで地に這うようなオーケストラの唸り。いくら「運命」と言えども、シンフォニーという抽象的な音楽とは思えないような激しいドラマが、極めて奔放な表現で実現されている。ウィーン訛りのアーノンクールの音楽を、最大限にロマン主義的に拡大した音楽。そんな印象も受けました。また解説の諸石さんも仰っていましたが、彼の音楽に、作品の面白さを分からせるようなドラマチックな劇場性があるとすれば、そこには聞き手がすんなりと入り込める余地が残されているのかもしれません。一つ一つのフレーズから多様な情景が浮かんでくる、まさに衒学的な講釈にならない、実に良い意味で分かり易い音楽なのかとも思いました。
劇場的と言えば、ティーレマンは今年のバイロイトでリングを振ることが予定されています。しばらく前にリリースされた「トリスタンとイゾルデ」は未聴なのですが、この濃厚かつ個性溢れる音楽がリングにどう作用するのでしょう。既にバイロイトの指揮台にも立っていて、その演奏にも高い評価が与えられているティーレマンですが、そちらにも注目したいと思いました。(と思っていたら4月には「パルジファル」もリリースされるとのこと。個人的にはマイスタージンガーがピッタリかと思うのですが…。)
ヨーロッパ・クラシック・ライブ NHK-FM(3/26 18:00~)
曲 ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調
指揮 クリスティアン・ティーレマン
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
収録:ウィーン楽友協会から生放送
ラジオのスイッチをつけたら、ちょうどメインの「運命」が始まるところ…。指揮のティーレマンと言えば、まさに21世紀の音楽界へ君臨せんとばかりに、指揮の王道を歩む若き「巨匠」。殆ど彼を聴き込んだことのない私の勝手な思い込みでは、力感迸るたくましい造形美とねっとりとした官能美を備えつつ、音楽の巨大な大伽藍を作り上げるイメージがあるのですが、この「運命」を聴くと、そんなティーレマン像はあくまでも一面でしかないことに大いに気付かされます。むしろ妙に個性的な表現、つまりオーケストラへ細工を加えるかのようにして音楽に意外性を与える点の方が興味深く感じられました。激しく揺れる弦の中から、突如奇声が上がったかのように浮かぶ木管群。思わず椅子から仰け反ってしまいそうなほどのアゴーギク。特に、第二楽章での情感豊かで地に這うようなオーケストラの唸り。いくら「運命」と言えども、シンフォニーという抽象的な音楽とは思えないような激しいドラマが、極めて奔放な表現で実現されている。ウィーン訛りのアーノンクールの音楽を、最大限にロマン主義的に拡大した音楽。そんな印象も受けました。また解説の諸石さんも仰っていましたが、彼の音楽に、作品の面白さを分からせるようなドラマチックな劇場性があるとすれば、そこには聞き手がすんなりと入り込める余地が残されているのかもしれません。一つ一つのフレーズから多様な情景が浮かんでくる、まさに衒学的な講釈にならない、実に良い意味で分かり易い音楽なのかとも思いました。
劇場的と言えば、ティーレマンは今年のバイロイトでリングを振ることが予定されています。しばらく前にリリースされた「トリスタンとイゾルデ」は未聴なのですが、この濃厚かつ個性溢れる音楽がリングにどう作用するのでしょう。既にバイロイトの指揮台にも立っていて、その演奏にも高い評価が与えられているティーレマンですが、そちらにも注目したいと思いました。(と思っていたら4月には「パルジファル」もリリースされるとのこと。個人的にはマイスタージンガーがピッタリかと思うのですが…。)
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再度「運命の力」! ルイージとバイエルン国立歌劇場のライブ録音
今日はイマイチ体調が冴えないので自宅でゆっくりと過ごしているのですが、先ほどまで、NHK-FMにて新国立劇場の公演に合わすかのような録音が放送されていました。2005年6月にバイエルン国立歌劇場で収録された、ヴェルディの「運命の力」です。
海外クラシックコンサート NHK-FM(3/26 15:00~)
曲 ヴェルディ 歌劇「運命の力」
指揮 ファビオ・ルイージ
演奏 バイエルン国立歌劇場管弦楽団
キャスト
カストラーヴァ侯爵 スティーヴン・ヒュームズ
レオノーラ ヴィオレタ・ウルマナ
ドン・カルロ マーク・デラヴァン
ドン・アルヴァーロ フランコ・ファリーナ
レチオシルラ ダグマル・ペツコヴァー
グァルディアーノ クルト・モル
フラ・メリトーネ フランツ・ヨーゼフ・カペルマン 他
合唱 バイエルン国立歌劇場合唱団
収録:ドイツ・バイエルン国立歌劇場 2005/6/28
指揮はこれまた偶然なのか、新国立劇場の次回公演でお目見え予定のルイージでした。演奏された版は、やはりスカラ座改訂版。キャストはさすがに強力です。
ルイージと言うと新進気鋭の実力派指揮者などと専ら紹介され、特に最近はマーラーのCDでも注目されていたようですが、私は彼の演奏でいわゆるオケものを聴いたことがなく、もっぱら「アロルド」や「ウィリアム・テル」などで楽しんでいます。彼は美しいカンタービレを靡かせて音楽を大きな力を与えながら、縦の線でもキレイに揃えることが出来る。言い換えれば、(漠然とした言葉で恐縮ですが。)音楽を伸縮自在に器用に変化させられる、イタリアオペラ的なダイナミズムにもピッタリな方だと思います。例えば今回の「運命の力」でも、第三幕の「ラタプラン」での処理が実に上手い。ダンスのシーンの前に一回山場を作るかのように盛り上げて、一気呵成に攻めたかと思いきや、その後はあくまでも抑制的にリズムを刻みます。もちろんそれでいてやはり最後はアップデンポ。滑稽な踊りに緩急の妙が加わり、俄然このシーンに生気が与えられるのです。また重唱やアリアでも、時に強引に歌手を引っ張っておきながら、いきなり力を抜くかのようにストンと音楽を流す。(第4幕のメリトーネのシーンでの音楽の目まぐるしい変化!)さらには時折音楽を壊すかのようにど迫力なシーンを作り上げるのも興味深いところです。(カルロとアルヴァーロの決闘の二重唱の恐ろしさ!)音楽押しの一辺倒だけではない、全く息苦しくならないふくよかでダイナミックな音楽。このような放送を聴いていると、次回の「カヴァレリア&道化師」が本当楽しみになってきました。
ビックネームも揃う強力なキャストは、グァルディアーノのモルやレオノーラのウルマナ、それにアルヴァーロのファリーナがさすがに立派でした。(モルの神父は実に説教臭くて、この役にピッタリかもしれません。)ただ、ややカルロ役デラヴァンの声には好き嫌いが分かれるかもしれません。鼻にかかったような歌唱がややマイナスポイントでした。またレチオシルラのペツコヴァーも少し硬かったように思います。もう少し突き抜けてくるような力が欲しいとも感じました。
バイエルンの歌劇場のオーケストラは、このオペラに軽やかなメロディーを刻むようなことはせず、あくまでも暗鬱な憎悪劇としてまとめ上げます。それでも時々ルイージにあおり立てられるのか、半ば暴力的に劇を進めたりもしていました。(幕切れの焦燥感!)ただし暴力的と言っても、金管が殺伐とした雰囲気になることはありません。この辺は地力でしょうか。聴いていて安心出来ます。
NHK-FMではこの放送に引き続いて、「ヨーロッパ・クラシック・ライブ」(さ、最終回!?)と題した、ティーレマンとウィーンフィルの生放送が予定されています。そちらも出来ればまた聴いてみるつもりです。
海外クラシックコンサート NHK-FM(3/26 15:00~)
曲 ヴェルディ 歌劇「運命の力」
指揮 ファビオ・ルイージ
演奏 バイエルン国立歌劇場管弦楽団
キャスト
カストラーヴァ侯爵 スティーヴン・ヒュームズ
レオノーラ ヴィオレタ・ウルマナ
ドン・カルロ マーク・デラヴァン
ドン・アルヴァーロ フランコ・ファリーナ
レチオシルラ ダグマル・ペツコヴァー
グァルディアーノ クルト・モル
フラ・メリトーネ フランツ・ヨーゼフ・カペルマン 他
合唱 バイエルン国立歌劇場合唱団
収録:ドイツ・バイエルン国立歌劇場 2005/6/28
指揮はこれまた偶然なのか、新国立劇場の次回公演でお目見え予定のルイージでした。演奏された版は、やはりスカラ座改訂版。キャストはさすがに強力です。
ルイージと言うと新進気鋭の実力派指揮者などと専ら紹介され、特に最近はマーラーのCDでも注目されていたようですが、私は彼の演奏でいわゆるオケものを聴いたことがなく、もっぱら「アロルド」や「ウィリアム・テル」などで楽しんでいます。彼は美しいカンタービレを靡かせて音楽を大きな力を与えながら、縦の線でもキレイに揃えることが出来る。言い換えれば、(漠然とした言葉で恐縮ですが。)音楽を伸縮自在に器用に変化させられる、イタリアオペラ的なダイナミズムにもピッタリな方だと思います。例えば今回の「運命の力」でも、第三幕の「ラタプラン」での処理が実に上手い。ダンスのシーンの前に一回山場を作るかのように盛り上げて、一気呵成に攻めたかと思いきや、その後はあくまでも抑制的にリズムを刻みます。もちろんそれでいてやはり最後はアップデンポ。滑稽な踊りに緩急の妙が加わり、俄然このシーンに生気が与えられるのです。また重唱やアリアでも、時に強引に歌手を引っ張っておきながら、いきなり力を抜くかのようにストンと音楽を流す。(第4幕のメリトーネのシーンでの音楽の目まぐるしい変化!)さらには時折音楽を壊すかのようにど迫力なシーンを作り上げるのも興味深いところです。(カルロとアルヴァーロの決闘の二重唱の恐ろしさ!)音楽押しの一辺倒だけではない、全く息苦しくならないふくよかでダイナミックな音楽。このような放送を聴いていると、次回の「カヴァレリア&道化師」が本当楽しみになってきました。
ビックネームも揃う強力なキャストは、グァルディアーノのモルやレオノーラのウルマナ、それにアルヴァーロのファリーナがさすがに立派でした。(モルの神父は実に説教臭くて、この役にピッタリかもしれません。)ただ、ややカルロ役デラヴァンの声には好き嫌いが分かれるかもしれません。鼻にかかったような歌唱がややマイナスポイントでした。またレチオシルラのペツコヴァーも少し硬かったように思います。もう少し突き抜けてくるような力が欲しいとも感じました。
バイエルンの歌劇場のオーケストラは、このオペラに軽やかなメロディーを刻むようなことはせず、あくまでも暗鬱な憎悪劇としてまとめ上げます。それでも時々ルイージにあおり立てられるのか、半ば暴力的に劇を進めたりもしていました。(幕切れの焦燥感!)ただし暴力的と言っても、金管が殺伐とした雰囲気になることはありません。この辺は地力でしょうか。聴いていて安心出来ます。
NHK-FMではこの放送に引き続いて、「ヨーロッパ・クラシック・ライブ」(さ、最終回!?)と題した、ティーレマンとウィーンフィルの生放送が予定されています。そちらも出来ればまた聴いてみるつもりです。
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