都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「菅木志雄個展 『空気の流路』」 東京画廊 3/9
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「菅木志雄個展 『空気の流路』」
2/18-3/11
先日、菅木志雄の個展を小山登美夫ギャラリーで見て来たところですが、同時開催中のもう一つの個展も出向いてみました。会場は銀座8丁目の東京画廊です。
メインの作品は、タイトルにもなっている「空気の流路」(2006)です。高さ2メートル強、幅30センチ弱の2つの大きな木製の柱が、2枚の透明ビニールシートを介してつながっています。シートの間はもちろん空洞。そこが「空気の流路」と言うことなのでしょうか。特に風が送られているわけではないのに、部屋の空調などに反応して、時折ゆらゆらとビニールがたわみます。そしてその揺らぎや、透明な素材へ仄かに反射する光の瞬きがまた絶妙です。やや重ための木材と、透き通った軽く伸びやかなビニールの組み合わせ。小山登美夫ギャラリーで見たガラス作品(「静止へ」)にも通じる、洗練された美しさが感じられました。
巨大な木枠のような作品「対応-21」(2006)は、見せ方にも優れていたのか、同系統の他の作品ではあまり得られなかった面白さを感じることが出来ました。会場の奥にて展示されている、高さ2メートル×幅1.5メートル強の大きな木枠。その中央からやや上の部分には、細い木の棒が2本交互に枠の内部へ突き出しています。見せ方に優れていたと書いたのは、作品の奥にある窓に掛けられたブラインドとの良い相乗効果です。木枠、棒、白いブラインド、窓の順にしばらく眺めていると、不思議と遠近感が喪失して、それらが一つの作品空間として形成されているように見えて来ます。2本の棒とブラインドが呼応しながら、木枠の存在感、または重量感を変化させる。重々しく無表情だった木枠が、まるで空気を包みこんで浮いているように感じられました。私の出向いた時は既に日没後だったので外は真っ暗でしたが、日中なら窓から陽の光も差し込むことでしょう。そうしたらもっと美しく見えるかもしれない。そんなことも思いました。
小山登美夫ギャラリーで惹かれた「界向律」に似た「志向性」(2006)も、また味わい深い作品です。升目状に刻まれた黒い板。そこへ尖った木片がいくつも突き刺さっています。いわゆる美しい作品ではなく、むしろおどろおどろしい部分もある作品ですが、妙に惹かれるシリーズです。
二つの個展を合わせて見たことで、今までなかなか感じ取れなかった菅の魅力に少しだけ出会えた気がしました。11日までの開催です。(東京画廊のHPには、この個展に出品されている菅の作品が、写真付きで丁寧に紹介されています。『作家一覧→菅木志雄』の順で辿ると出てきますので、興味のある方はご覧になられては如何でしょう。)
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