都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「VOCA展 2006」 上野の森美術館 3/25
上野の森美術館(台東区上野公園1-2)
「VOCA展 2006」
3/15-30

毎年定期的に開催されていたことは知っていたのですが、実際に出向いたのは今回が初めてです。上野公園の一分、二分咲きの桜を横目にしながら、上野の森美術館のVOCA展へ足を運んできました。

出品作品は全て40歳未満の作家の平面作品に限るという、かなりコンセプトの絞られた展覧会ですが、これまでに私が美術館やギャラリーで拝見した作家の作品がいくつか展示されていたのは嬉しいところです。佳作賞を受賞した高木紗恵子。以前オペラシティーで開催された「project N」の展示でも印象深かったのですが、今回出品作の鮮やかなアクリル画「Untitled」も、まさに春を思わせるような華やかな画面で楽しませてくれました。咲き誇る花と木々の響宴。爽やかで美しいイメージが、瑞々しいアクリルのタッチで伸びやかに広がります。所々でキラリと光っているウレタン樹脂も魅力的です。また遠近感のない、全てを平面に閉じ込めたような画風も個性的でした。

既知の作家と言えば、つい先日までギャラリー小柳にて二人展を開催していた鬼頭健吾とロバート・プラットも充実した作品を展示しています。小柳ではフラフープのインスタレーションが見事だった鬼頭健吾。もちろん今回は平面で勝負です。ガラスビーズやアクリルが所狭しと鏡のボードを覆っている「cosmic dust」。白いビーズがまるで雪のように降り積もり、そこにまさにフラフープの曲線をイメージさせるような糸状に縺れたピンク、青などの線が重なります。また小柳での個展では今ひとつ魅力が伝わってこなかったプラットも、今回出品作の「Rendezvous」は非常に素晴らしい作品かと思いました。画面中央を軸にして形成される上下二つの幻想世界。雪の舞う木々に囲まれた湖面上には、馬が何頭も気持ちよさそうに疾走しています。そして一番上の木目調の紋様からは鹿の駆ける円柱がいくつか突き出していて、それらがまるでメリーゴーランドのように回転している。白、黒、ミントの色彩が何層にも重なって生まれる錯視的な立体感。小さくシャボン玉のように浮いた円の中には、スノーマンのような可愛らしいクマがこちらを向いていました。これは一押しにしたい作品です。
これまで未知だった作家の作品にも、当然ながらいくつも見応えのあるものが並んでいます。まずは藤本英明の「Thermoscape」でしょうか。赤から朱色へ移り行く美しいグラデーション。それが真っ直ぐ伸びた地平線によって二分割され、横に広大な草原地帯が広がります。その一番手前にてこちらをジッと見つめる一頭の牛。この広々とした空間にポツンと寂しそうに佇んでいます。また画面全体を覆った横方向の線は、まるでテレビの走査線のようにも見え、作品に不思議な映像効果をもたらします。果てしなく広がる荒涼とした大地に立つ者。その時受けるであろう孤独感。牛の前からなかなか立ち去ることが出来ませんでした。
厚く塗られた油彩絵具と屏風のように折り曲げられたパネルが、作品に巧みな立体感を与えている花澤洋太の「もり」も印象的です。白、さらには限りなく白に近い青や黄色の色彩。それらが四角形の痕跡を残りながら、分厚くベタベタと塗られている。波打つパネルと、ボリューム感のある盛り上がった油彩絵具が、まるで作品を壁画か工芸作品のように見せてきます。同じく工芸作品のような味わいがあった青木克世の「鏡よ鏡」と合わせて、平面のカテゴリーにギリギリおさまったような表現も興味深いところでした。(その他では、浜田涼による写真を絵画のように見せた作品や、流麻二果のコラージュなども印象に残りました。)
今の上野のアートシーンを飾る、ロダンやプラド展の濃厚な味わいとはまた異なった、フレッシュでちょっぴり刺激のある展覧会です。今月30日までの開催です。
「VOCA展 2006」
3/15-30

毎年定期的に開催されていたことは知っていたのですが、実際に出向いたのは今回が初めてです。上野公園の一分、二分咲きの桜を横目にしながら、上野の森美術館のVOCA展へ足を運んできました。

出品作品は全て40歳未満の作家の平面作品に限るという、かなりコンセプトの絞られた展覧会ですが、これまでに私が美術館やギャラリーで拝見した作家の作品がいくつか展示されていたのは嬉しいところです。佳作賞を受賞した高木紗恵子。以前オペラシティーで開催された「project N」の展示でも印象深かったのですが、今回出品作の鮮やかなアクリル画「Untitled」も、まさに春を思わせるような華やかな画面で楽しませてくれました。咲き誇る花と木々の響宴。爽やかで美しいイメージが、瑞々しいアクリルのタッチで伸びやかに広がります。所々でキラリと光っているウレタン樹脂も魅力的です。また遠近感のない、全てを平面に閉じ込めたような画風も個性的でした。

既知の作家と言えば、つい先日までギャラリー小柳にて二人展を開催していた鬼頭健吾とロバート・プラットも充実した作品を展示しています。小柳ではフラフープのインスタレーションが見事だった鬼頭健吾。もちろん今回は平面で勝負です。ガラスビーズやアクリルが所狭しと鏡のボードを覆っている「cosmic dust」。白いビーズがまるで雪のように降り積もり、そこにまさにフラフープの曲線をイメージさせるような糸状に縺れたピンク、青などの線が重なります。また小柳での個展では今ひとつ魅力が伝わってこなかったプラットも、今回出品作の「Rendezvous」は非常に素晴らしい作品かと思いました。画面中央を軸にして形成される上下二つの幻想世界。雪の舞う木々に囲まれた湖面上には、馬が何頭も気持ちよさそうに疾走しています。そして一番上の木目調の紋様からは鹿の駆ける円柱がいくつか突き出していて、それらがまるでメリーゴーランドのように回転している。白、黒、ミントの色彩が何層にも重なって生まれる錯視的な立体感。小さくシャボン玉のように浮いた円の中には、スノーマンのような可愛らしいクマがこちらを向いていました。これは一押しにしたい作品です。
これまで未知だった作家の作品にも、当然ながらいくつも見応えのあるものが並んでいます。まずは藤本英明の「Thermoscape」でしょうか。赤から朱色へ移り行く美しいグラデーション。それが真っ直ぐ伸びた地平線によって二分割され、横に広大な草原地帯が広がります。その一番手前にてこちらをジッと見つめる一頭の牛。この広々とした空間にポツンと寂しそうに佇んでいます。また画面全体を覆った横方向の線は、まるでテレビの走査線のようにも見え、作品に不思議な映像効果をもたらします。果てしなく広がる荒涼とした大地に立つ者。その時受けるであろう孤独感。牛の前からなかなか立ち去ることが出来ませんでした。
厚く塗られた油彩絵具と屏風のように折り曲げられたパネルが、作品に巧みな立体感を与えている花澤洋太の「もり」も印象的です。白、さらには限りなく白に近い青や黄色の色彩。それらが四角形の痕跡を残りながら、分厚くベタベタと塗られている。波打つパネルと、ボリューム感のある盛り上がった油彩絵具が、まるで作品を壁画か工芸作品のように見せてきます。同じく工芸作品のような味わいがあった青木克世の「鏡よ鏡」と合わせて、平面のカテゴリーにギリギリおさまったような表現も興味深いところでした。(その他では、浜田涼による写真を絵画のように見せた作品や、流麻二果のコラージュなども印象に残りました。)
今の上野のアートシーンを飾る、ロダンやプラド展の濃厚な味わいとはまた異なった、フレッシュでちょっぴり刺激のある展覧会です。今月30日までの開催です。
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