都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「オラファー・エリアソン 影の光」 原美術館 2/25
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「オラファー・エリアソン 影の光」
2005/11/17-2006/3/5(会期延長)
光を操るアーティスト、オラファー・エリアソンの日本初個展です。趣のある原美術館の館内を、柔らかな光で美しく飾り立てます。素直に楽しめる展覧会です。
上にアップしたパンフレットに掲載されている写真は、ズバリ「美」(1993)という作品でした。暗室の中で霧のシャワーにあたるランプの光。それがカーテン状になった水の幕に虹を生み出します。もちろん見る角度によって、水と光の織りなす色や形が様々に異なってきますが、思い切って水のカーテンの中へ飛び込むのも一興です。私が出向いた時は会場がかなり混んでいたので、やや手狭な空間が魅力を削いでしまっている気もしましたが、パッと現れる光の帯びはまるでオーロラのよう。ずっと眺めていても飽きることはありません。
一階展示室で最も魅力的だったのは、レンズを利用して外の景色を巧みに取り込んだ「カメラオブスキュラ」(1999)でした。こちらも暗室に一枚のスクリーン。そこには天地の逆になった、どこか北欧の森林のような光景が見られますが、ボーッと眺めているとその内に仕掛けが分かってきます。つまり、スクリーンの後ろにあるフィルターを通した外の景色が映し出されているのです。風になびく木々の揺らめきと、日向と日陰に反応する光と影。それが幻想的で、まるで夢の中の世界のようにぼやけた、そして一瞬にして崩れ去りそうな映像として作り出されます。普段あまり見ることのないこの美術館の裏庭の狭いスペースが、無限に続く大自然の広がりのようにも見えてくる。そしてそのレンズが、それこそ「どこでもドア」のように瞬時にこの場を移動させて、今自分が立っているはずの空間の認識すら危うくさせます。この展覧会では一押しの作品です。
二階へ上がると、一番奥の部屋から、何やら奇妙なオレンジ色の光がもれていることに気がつきました。それが「単色の部屋と風が吹くコーナー」(2004)という作品です。入口付近に送風機が何台も付けられたその場へおそるおそる入っていくと、これはビックリ、全ての色がなくなってしまいます。要は部屋に仕掛けられた単周波ライトによって、色が喪失して見えるのです。人の顔や手はまるで死人のように生気がなく、しばらく居ると気分が悪くなるほどに不気味な空間。ちなみにこの単周波ライトの部屋は、外へもれ出す光によって、その手前の廊下側からも色を奪い取っています。階段方向から色が無くなっていく様子を見るのも面白く、また色のない部屋から色のある方向を眺めていくのも興味深い。(特に後者がオススメです。)普段はあまり気にすることのない、色と光の関係を強く意識させる作品です。
球形の物体に光をあて、それを回転させながら「影の光」を楽しむ作品では、最もシンプルな「空間を包み込むもの」(2004)が非常に魅力的でした。丸い輪がゆっくりと回ることによって出来る大きな円。その一つ一つが惑星や恒星の動きのようにも見えて、まるで今宇宙空間をのんびりと旅しながら、星の誕生と死に立ち会っている、そんな錯覚さえしてきます。簡素な円とその輝きが、これほどに力強さと広がりを見せてくるとは驚きです。
まるで部屋の四隅から光が漏れ出しているようにも見える「四隅をさす光」(2004)なども美しい作品でした。難しいことを抜きにして、誰もが光と色の美しさを楽しめるような展覧会です。次の日曜日までの開催です。
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