都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ウフィツィ美術館自画像コレクション」 損保ジャパン東郷青児美術館
損保ジャパン東郷青児美術館(新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階)
「ウフィツィ美術館自画像コレクション - 巨匠たちの秘めた素顔 1664-2010 - 」
9/11-11/14

損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ウフィツィ美術館自画像コレクション - 巨匠たちの秘めた素顔 1664-2010 - 」へ行って来ました。
ウフィツィ如何に関わらず、これほど自画像が一同に揃うこと自体、非常に貴重な機会と言えるのかもしれません。今回、同美術館に集まったのは、フィレンツェのウフィツィ美術館が17世紀より収蔵してきた様々な芸術家たちの自画像、約80点でした。
構成は以下の通りです。
第1章 レオポルト枢機卿とメディチ家の自画像コレクション(1664~1736)
第2章 ハプスブルク=ロートリンゲン家の時代(1737~1860)
第3章 イタリア王国の時代(1861~1919)
第4章 20世紀の巨匠たち(1920~1980)
第5章 現代作家たちの自画像と自刻像(1980~2010)
ともかく年代を見るだけでも明らかですが、コレクションの長い歴史には驚かされるものがあります。よって展示作品も17世紀当初のカラッチやベルニーニから、何とこれから収蔵される草間や横尾らに至るという異色のラインナップになっていました。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ「自画像」1635年頃
17世紀の自画像からちょっとしたお宝が揃っています。髪を振りかざし、襟を立てて斜めを見据える好男子が誰かと思えば、何とかのバロック彫刻の大家ベルニーニ37歳の時の自画像でした。

ティントレッタ「自画像」1580年頃
またチェンバロの前に立つティントレットの娘、ティントレッタの作品や、あまり状態が良くないものの苦渋に満ちた表情が印象に深いレンブラントの自画像なども目を引きます。

ニコラ・ファン・ハウブラーケン「花輪のなかの自画像(?)」1720年頃
また痛快なのは一人花に囲まれた奇妙な男、ニコラ・ファン・ハウブラーケンの作品です。まさにだまし絵のように花輪の向こうのキャンバスを破って現れていますが、何とこの人物は画家本人ではなく、彼と一緒に仕事をしていた友人とのことでした。画家ニコラは花卉画を得意としていたということで、花輪を彼とすればこれは友人よ二人の自画像でもあるのかもしれません。
ところで一般的に展覧会のチラシに何故この図版をと思うことも少なくありませんが、今回の損保ジャパンにおいては全く異論はありません。出品作でも文句なしに際立って充実していたのは、マリー=ルイーズ=エリザベート・ヴィジェ=ル・ブランの自画像「マリー・アントワネットの肖像を描くヴィジェ=ル・ブラン」でした。

マリー=ルイーズ=エリザベート・ヴィジェ=ル・ブラン「マリー・アントワネットの肖像を描くヴィジェ=ル・ブラン」1790年
タイトルの通り、アントワネットの肖像を描く画家の姿が表されたものですが、白い透明感のあるブーケ、ブロンドの軽やかな髪、そして仄かな紅に染まった肌から手に持つ絵筆までが極めて充実したタッチで描かれています。彼女はこれが展示された当時「みんなが私を見にくるのです。」と手紙へ記したこともあったそうですが、そうした得意気な気持ちになるのも無理はないと納得出来るほどでした。
ベルギー美術展でお馴染みのアンソールやエミール・クラウスらと並び、19世紀末から20世紀初頭の作品で目立っているのはフレデリック・レイトンの「自画像」です。不気味なほどに艶やかなオレンジの色彩の迫力には思わず息をのんでしまいました。

マルク・シャガール「自画像」1959-68年
第二次世界大戦や洪水などでウフィツィ美術館の自画像収集は低迷した時期がありましたが、それを救ったのシャガールでした。彼は1973年、自ら美術館へ向かい、自画像を寄贈します。これを契機に美術館には再び多くの自画像が集まるようになりました。また2005年には同美術館が現代美術関連の自画像を一括購入します。コレクションは一層充実していきました。
そして今回、この展覧会にあわせて寄贈されることになったのが、草間彌生、横尾忠則、杉本博司の3名の日本人アーティストです。変化球の杉本も自画像表現の変容を知れて興味深いものがありますが、ここはいつものドットが眩い草間の方がより強い印象を与えていました。
画家の代表作の図版まで掲載したキャプションも理解を深めます。展示の作りはとても丁寧でした。好印象です。
なお東京展終了後、大阪の国立国際美術館(2010/11/27~2011/2/20)へと巡回しますが、出品作が20点ほど入れ替わるそうです。2つの展示を追っかけるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
11月14日まで開催されています。おすすめします。
「ウフィツィ美術館自画像コレクション - 巨匠たちの秘めた素顔 1664-2010 - 」
9/11-11/14

損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ウフィツィ美術館自画像コレクション - 巨匠たちの秘めた素顔 1664-2010 - 」へ行って来ました。
ウフィツィ如何に関わらず、これほど自画像が一同に揃うこと自体、非常に貴重な機会と言えるのかもしれません。今回、同美術館に集まったのは、フィレンツェのウフィツィ美術館が17世紀より収蔵してきた様々な芸術家たちの自画像、約80点でした。
構成は以下の通りです。
第1章 レオポルト枢機卿とメディチ家の自画像コレクション(1664~1736)
第2章 ハプスブルク=ロートリンゲン家の時代(1737~1860)
第3章 イタリア王国の時代(1861~1919)
第4章 20世紀の巨匠たち(1920~1980)
第5章 現代作家たちの自画像と自刻像(1980~2010)
ともかく年代を見るだけでも明らかですが、コレクションの長い歴史には驚かされるものがあります。よって展示作品も17世紀当初のカラッチやベルニーニから、何とこれから収蔵される草間や横尾らに至るという異色のラインナップになっていました。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ「自画像」1635年頃
17世紀の自画像からちょっとしたお宝が揃っています。髪を振りかざし、襟を立てて斜めを見据える好男子が誰かと思えば、何とかのバロック彫刻の大家ベルニーニ37歳の時の自画像でした。

ティントレッタ「自画像」1580年頃
またチェンバロの前に立つティントレットの娘、ティントレッタの作品や、あまり状態が良くないものの苦渋に満ちた表情が印象に深いレンブラントの自画像なども目を引きます。

ニコラ・ファン・ハウブラーケン「花輪のなかの自画像(?)」1720年頃
また痛快なのは一人花に囲まれた奇妙な男、ニコラ・ファン・ハウブラーケンの作品です。まさにだまし絵のように花輪の向こうのキャンバスを破って現れていますが、何とこの人物は画家本人ではなく、彼と一緒に仕事をしていた友人とのことでした。画家ニコラは花卉画を得意としていたということで、花輪を彼とすればこれは友人よ二人の自画像でもあるのかもしれません。
ところで一般的に展覧会のチラシに何故この図版をと思うことも少なくありませんが、今回の損保ジャパンにおいては全く異論はありません。出品作でも文句なしに際立って充実していたのは、マリー=ルイーズ=エリザベート・ヴィジェ=ル・ブランの自画像「マリー・アントワネットの肖像を描くヴィジェ=ル・ブラン」でした。

マリー=ルイーズ=エリザベート・ヴィジェ=ル・ブラン「マリー・アントワネットの肖像を描くヴィジェ=ル・ブラン」1790年
タイトルの通り、アントワネットの肖像を描く画家の姿が表されたものですが、白い透明感のあるブーケ、ブロンドの軽やかな髪、そして仄かな紅に染まった肌から手に持つ絵筆までが極めて充実したタッチで描かれています。彼女はこれが展示された当時「みんなが私を見にくるのです。」と手紙へ記したこともあったそうですが、そうした得意気な気持ちになるのも無理はないと納得出来るほどでした。
ベルギー美術展でお馴染みのアンソールやエミール・クラウスらと並び、19世紀末から20世紀初頭の作品で目立っているのはフレデリック・レイトンの「自画像」です。不気味なほどに艶やかなオレンジの色彩の迫力には思わず息をのんでしまいました。

マルク・シャガール「自画像」1959-68年
第二次世界大戦や洪水などでウフィツィ美術館の自画像収集は低迷した時期がありましたが、それを救ったのシャガールでした。彼は1973年、自ら美術館へ向かい、自画像を寄贈します。これを契機に美術館には再び多くの自画像が集まるようになりました。また2005年には同美術館が現代美術関連の自画像を一括購入します。コレクションは一層充実していきました。
そして今回、この展覧会にあわせて寄贈されることになったのが、草間彌生、横尾忠則、杉本博司の3名の日本人アーティストです。変化球の杉本も自画像表現の変容を知れて興味深いものがありますが、ここはいつものドットが眩い草間の方がより強い印象を与えていました。
画家の代表作の図版まで掲載したキャプションも理解を深めます。展示の作りはとても丁寧でした。好印象です。
なお東京展終了後、大阪の国立国際美術館(2010/11/27~2011/2/20)へと巡回しますが、出品作が20点ほど入れ替わるそうです。2つの展示を追っかけるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
11月14日まで開催されています。おすすめします。
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