都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「没後120年 ゴッホ展」 国立新美術館
国立新美術館(港区六本木7-22-2)
「没後120年 ゴッホ展 - こうして私はゴッホになった」
10/1-12/20

主にオランダのファン・ゴッホ美術館、及びクレラー=ミュラー美術館の所蔵品にてゴッホの画業を明らかにします。国立新美術館で開催中の「没後120年 ゴッホ展」へ行って来ました。
ゴッホというと2005年に東近美で開催された大回顧展を思い出しますが、改めて今回接してまた新たな発見や魅力を見出だされた方も多いかもしれません。単刀直入に言うと私はゴッホがかなり苦手ですが、それでもこの展覧会には大いに感心させられるものがありました。サブタイトルの「こうして私はゴッホになった」に偽りはありません。周辺の画家との関係から、ゴッホの全貌を解き明かす巧みな構成には舌を巻くほどでした。
展示の章立ては以下の通りです。
1 伝統 ファン・ゴッホに対する最初期の影響
2 若き芸術家の誕生
3 色彩理論と人体の研究、ニューネン
4 パリのモダニズム
5 真のモダン・アーティストの誕生 - アルル
6 さらなる探求と様式の展開 - サン=レミやオーヴェール=シュル=オワーズ
基本的には時系列でゴッホの作品を追っていましたが、特に前半部において彼に影響を与えた画家を丹念に紹介していました。

ジョルジュ・スーラ「オンフルールの港の入口」1886年 クレラー=ミュラー美術館
そして今回の最大の見所は、そうしたゴッホとゴッホ以下の画家の作品との比較に他なりません。実際、全出品作120点のうちゴッホが70点、そして他の画家が約40点(資料含む)を占めています。
ゴッホは最初期、精神的導き手としてミレーを挙げ、例えば「掘る人」のモチーフなどを多数描きましたが、展示でも彼とミレーの素描が等しく並べられ、ゴッホの研究の経過を知ることが出来ました。
また同じく若きゴッホ時代で重要なのが、唯一の師である風景画家アントン・モーグとの関係です。モーグによる農村の一コマを描いた「オランダ風納屋と差し掛け」などが展示されるのと同時に、絵画技術についてゴッホが指導を受けたことなどが紹介されていました。

トゥールーズ=ロートレック「テーブルの若い女」1887年 ファン・ゴッホ美術館
またさらに中期、パリへ移住後のゴッホにおいても同時代の印象派やロートレックなどから様々な技法を取り入れたことについても触れられています。一見、似つかないゴッホとモネがその色彩において、そしてシスレーやシニャックらがタッチなどにおいて類似性を見せているのには驚かされた方も多いのではないでしょうか。

「カフェにて」1887年 ファン・ゴッホ美術館
また静物においてもファンタン=ラトゥールの「プリムラ、梨、ザクロ」やフランソワ・ラファエリの「野の花」と、ゴッホの「バラとシャクヤク」が、表現上において一つの軸で繋がっていることが示されています。同時代との画家の対比によってゴッホは決して単なる『孤高の天才』でないことか良くわかる展開となっていました。
また勿論、有名な浮世絵との関連についても言及があります。頻繁に指摘される部分ではありますが、広重などの作品も展示されていました。

「アイリス」1890年 ファン・ゴッホ美術館
アルル以降についてはゴッホの独擅場です。後半部は鮮烈でかつ暗鬱な色彩とタッチによる、言わばゴッホをゴッホたらしめた作品が続きます。アルル以降の作品に殆ど共感出来ない私にとっては何とも申し上げようがありませんが、先に触れたまだ同時代と関連付け得る花の絵画が叫び悶える「アイリス」へと変化したのを見ると、そこから感じられる痛々しいまでのある種の苦悩に押し潰され、会場を後にする他ありませんでした。

「アルルの寝室」1888年 ファン・ゴッホ美術館
展示中にはかの有名なアルルの寝室が主催のTBSによって再現されています。ハリボテと非難するのは容易いかもしれませんが、近くに展示されていた実際の絵画と見比べた時、ゴッホの生活の息吹きが伝わってくるような気がしました。効果的な演出です。

「サン=レミの療養院の庭」1889年 クレラー=ミュラー美術館
大人気のゴッホ展ということでさすがに会場は大にぎわいでした。なお混雑の具合ですが、土日でも朝一番か夕方以降は比較的余裕があるそうです。(一方、最混雑時間帯は3時頃で、これまでに最長30分程度の待ち時間が発生しているとのことでした。)また金曜日夜間なども狙い目かもしれません。ともかくこの手の展覧会の会期末の混雑は尋常ではないので、なるべく早く出かけられることをおすすめします。
NHK日曜美術館「ゴッホ 模倣から生まれた天才」 11月28日(日)朝9:00~放送予定
「もっと知りたいゴッホ/圀府寺司/東京美術」
12月20日までの開催です。なお東京展終了後、九州国立博物館(2011年1月1日~ 2月13日)と名古屋市美術館(2011年2月22日~4月10日)へと巡回します。
「没後120年 ゴッホ展 - こうして私はゴッホになった」
10/1-12/20

主にオランダのファン・ゴッホ美術館、及びクレラー=ミュラー美術館の所蔵品にてゴッホの画業を明らかにします。国立新美術館で開催中の「没後120年 ゴッホ展」へ行って来ました。
ゴッホというと2005年に東近美で開催された大回顧展を思い出しますが、改めて今回接してまた新たな発見や魅力を見出だされた方も多いかもしれません。単刀直入に言うと私はゴッホがかなり苦手ですが、それでもこの展覧会には大いに感心させられるものがありました。サブタイトルの「こうして私はゴッホになった」に偽りはありません。周辺の画家との関係から、ゴッホの全貌を解き明かす巧みな構成には舌を巻くほどでした。
展示の章立ては以下の通りです。
1 伝統 ファン・ゴッホに対する最初期の影響
2 若き芸術家の誕生
3 色彩理論と人体の研究、ニューネン
4 パリのモダニズム
5 真のモダン・アーティストの誕生 - アルル
6 さらなる探求と様式の展開 - サン=レミやオーヴェール=シュル=オワーズ
基本的には時系列でゴッホの作品を追っていましたが、特に前半部において彼に影響を与えた画家を丹念に紹介していました。

ジョルジュ・スーラ「オンフルールの港の入口」1886年 クレラー=ミュラー美術館
そして今回の最大の見所は、そうしたゴッホとゴッホ以下の画家の作品との比較に他なりません。実際、全出品作120点のうちゴッホが70点、そして他の画家が約40点(資料含む)を占めています。
ゴッホは最初期、精神的導き手としてミレーを挙げ、例えば「掘る人」のモチーフなどを多数描きましたが、展示でも彼とミレーの素描が等しく並べられ、ゴッホの研究の経過を知ることが出来ました。
また同じく若きゴッホ時代で重要なのが、唯一の師である風景画家アントン・モーグとの関係です。モーグによる農村の一コマを描いた「オランダ風納屋と差し掛け」などが展示されるのと同時に、絵画技術についてゴッホが指導を受けたことなどが紹介されていました。

トゥールーズ=ロートレック「テーブルの若い女」1887年 ファン・ゴッホ美術館
またさらに中期、パリへ移住後のゴッホにおいても同時代の印象派やロートレックなどから様々な技法を取り入れたことについても触れられています。一見、似つかないゴッホとモネがその色彩において、そしてシスレーやシニャックらがタッチなどにおいて類似性を見せているのには驚かされた方も多いのではないでしょうか。

「カフェにて」1887年 ファン・ゴッホ美術館
また静物においてもファンタン=ラトゥールの「プリムラ、梨、ザクロ」やフランソワ・ラファエリの「野の花」と、ゴッホの「バラとシャクヤク」が、表現上において一つの軸で繋がっていることが示されています。同時代との画家の対比によってゴッホは決して単なる『孤高の天才』でないことか良くわかる展開となっていました。
また勿論、有名な浮世絵との関連についても言及があります。頻繁に指摘される部分ではありますが、広重などの作品も展示されていました。

「アイリス」1890年 ファン・ゴッホ美術館
アルル以降についてはゴッホの独擅場です。後半部は鮮烈でかつ暗鬱な色彩とタッチによる、言わばゴッホをゴッホたらしめた作品が続きます。アルル以降の作品に殆ど共感出来ない私にとっては何とも申し上げようがありませんが、先に触れたまだ同時代と関連付け得る花の絵画が叫び悶える「アイリス」へと変化したのを見ると、そこから感じられる痛々しいまでのある種の苦悩に押し潰され、会場を後にする他ありませんでした。

「アルルの寝室」1888年 ファン・ゴッホ美術館
展示中にはかの有名なアルルの寝室が主催のTBSによって再現されています。ハリボテと非難するのは容易いかもしれませんが、近くに展示されていた実際の絵画と見比べた時、ゴッホの生活の息吹きが伝わってくるような気がしました。効果的な演出です。

「サン=レミの療養院の庭」1889年 クレラー=ミュラー美術館
大人気のゴッホ展ということでさすがに会場は大にぎわいでした。なお混雑の具合ですが、土日でも朝一番か夕方以降は比較的余裕があるそうです。(一方、最混雑時間帯は3時頃で、これまでに最長30分程度の待ち時間が発生しているとのことでした。)また金曜日夜間なども狙い目かもしれません。ともかくこの手の展覧会の会期末の混雑は尋常ではないので、なるべく早く出かけられることをおすすめします。
NHK日曜美術館「ゴッホ 模倣から生まれた天才」 11月28日(日)朝9:00~放送予定

12月20日までの開催です。なお東京展終了後、九州国立博物館(2011年1月1日~ 2月13日)と名古屋市美術館(2011年2月22日~4月10日)へと巡回します。
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