「DOMANI・明日展 2012」 国立新美術館

国立新美術館
「DOMANI・明日展 文化庁芸術家在外研修の成果」
1/14-2/12



国立新美術館で開催中の「DOMANI・明日展」へ行ってきました。

毎年恒例、文化庁の海外研修制度を利用したアーティストを紹介するグループ展が、今年も国立新美術館で始まりました。

今回の出品のアーティストは計8名です。

阿部守(1954~)彫刻
横澤典(1971~)写真
山口牧子(1962~)絵画
元田久治(1973~)版画
児嶋サコ(1976~)絵画
津田睦美(1962~)写真
綿引展子(1958~)現代美術
塩谷亮(1975~)洋画


いつもながら彫刻から写真に絵画など、幅広いジャンルの作品が展示されていました。


山口牧子「Bird Spinning No.9」2010年

冒頭、顔料に蜜蝋などをあわせた山口牧子の一連のペインティングがなかなか魅力的です。水色に染まり、時にピンクや白、そしてイエローが霞のように漂う色面は、例えれば空の雲に差し込む光とも言えるのではないでしょうか。

またメディウムの効果なのか、近づいて浮き上がるキラキラとした画肌も際立っています。作品を見ていると、いつしか空を見上げ、降り注ぐ色の光を浴びているのような気持ちにさせられました。


阿部守「曳舟(部分)」2008年

一転して存在感のあるオブジェを展開するのが阿部守です。素材はずばり鉄です。ゆうに1メートルは超えるであろう筒状の塊がホワイトキューブを支配しています。

表面は時に爛れ、穴が空いたりしているのも興味深いものですが、その薄い面によるのか、鉄という素材らしからぬ軽やかさがあるのも印象に残りました。それこそまるで竹の皮のように鉄が延び。そしてとぐろをまいているわけです。

写真家の横澤はニューヨークをモチーフとした連作を発表しています。一見、何気ない摩天楼を捉えたようにも映りますが、視覚トリック的な要素がある点も見逃せません。連なる高層ビル、そして明かりの漏れた窓は、そこに実際にあるはずの遠近感を喪失させた形で示されています。三次元のビルはあくまでもフラットな平面、また幾何学的な図像へと還元されていました。


綿引展子「つまさきだけは正直に」2010年

布を用いたパッチワーク風の作品で魅せてくれるのは綿引展子です。彼女はドイツに研修しましたが、彼の地で古着という素材と出会い、それをキャンバス地に縫い付けて新たな平面を生み出しました。

一見、抽象的ながらも、人物像のようなモチーフがあるのも親しみやすいかもしれません。水彩やアクリルの色彩と布の相性も巧みでした。


元田久治「Indication-Harbour Bridge(Sydney)」2010年

いわゆる「廃墟」を描く元田久治は、リトグラフの他、油彩をあわせ20点超の出品です。見慣れた東京駅や六本木ヒルズがまさに朽ち果てて無人の廃墟と化しています。

もちろんそこには木々が生い茂るなど、言わば再生へのメッセージも内包していますが、今回はどうしてもあの震災の記憶と重なるのか、いつも以上に破滅的な終末感を感じてなりませんでした。何とも言えない悲しさが心にこみ上げてきます。

ところで今年は研修制度発足から45周年ということで、これまでに紹介された作家の新作なども一同に展示されています。そうしたベテランの作品と向き合いながら、この制度について色々と考えてみるのも良いかもしれません。

公式WEBサイトのアーティスト紹介がやや異色です。研修先の話題はともかくも、Q&A方式にて「好きなテレビ番組」などといった各作家の趣味までが掲載されています。

DOMANI・明日展:出品作家

会期中にはギャラリートーク、イベントも行われます。(以下は本日以降のスケジュール

1月27日(金)18:00~
津田睦美+rimaconaコンサート

1月28日(土)11:00~
トーク:奥谷博・福島瑞穂・峯田義郎・柳澤紀子

1月29日(日)11:00~
トーク:北久美子・北郷悟・絹谷幸二・久野和洋・田村能里子・宮いつき・谷中武彦・渡辺恂三

2月4日(土)11:00~
トーク:相笠昌義・池田良二・今井信吾・内田あぐり・大成浩・高柳裕・中井貞次・馬越陽子

2月5日(日)11:00~
トーク:阿部守・塩谷亮・元田久治

2月12日までの開催です。(プリントアウト用割引券

「DOMANI・明日展 文化庁芸術家在外研修の成果」 国立新美術館
会期:1月14日(土)~2月12日(日)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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