都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「つくることが生きること」 アーツ千代田3331
アーツ千代田3331
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」
3/9-3/31
アーツ千代田3331で開催中の「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」へ行ってきました。
東日本大震災から今日で丸二年。復興への道のりと今も続く原発事故。あくせくとした日常に追われながらも、かの震災の状況を思い起こさないことはありません。
もちろん各々によって震災への向き合い方は異なりますが、いわゆるアートを基点に、様々なジャンルで復興活動する方々のプロジェクトを紹介する展示が、今、末広町のアーツ千代田3331で行われています。
それが「つくることが生きること」東京展。中村政人をディレクターに擁するコマンドN(一般社団法人非営利芸術活動団体)が、震災後、3331を拠点にスタートした「わわプロジェクト」による展覧会です。
「明治三陸大海嘯の実態」リアス・アーク美術館
まずは過去の災害を見つめ直すことから。気仙沼のリアス・アーク美術館から出品されたのは、明治29年に三陸を襲った大津波を伝える報道画。当時の大衆紙「風俗画報」が、明治三陸地震を取材して絵に表したものです。
「明治三陸大海嘯の実態」から「かがり火の為に命を拾い得たるの図(釜石町)」
津波に呑まれる人々や被災住民の様子などを劇画風に描写。光景がかの震災に重なります。
なお同美術館は震災の被害を受けて休館。2012年夏に一部再開した後、気仙沼と南三陸町の被災の記録と調査を行っています。繰り返された津波被害。被災地の美術館としてかの災害をどう後世に伝えるのか。その活動にも注目すべきところかもしれません。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
さて震災が『現在進行形』だと再認識させられるのは、今なお多くの方が避難されているという現実です。まだ10万名以上の方が仮設住宅で暮らしておられることをご存知でしょうか。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
新潟大学工学部岩佐研究室の「仮設のトリセツ」では、震災後に建設された仮設住宅、約53000戸を1000分の1スケールで表現。一口に仮設といえども、様々なタイプや機能があることが分かります。また空き住戸数などもパネルで紹介していました。
「東北・被災地の復興リーダーが語る『わわプロジェクト』」
そして被災地の状況をさらに一歩踏み込んだ形で知ることが出来るのが、東北各地で復興に向けて活動する方々の映像メッセージです。2年たって復興がどう進んでいるのか、また何が問題なのか。報道などで見聞きするよりもリアルにかつダイレクト。強く訴えかけられました。
「ワタノハスマイル」
さてこの展示で私が特に印象深かったのが「ワタノハスマイル」。石巻の小学校の校庭に流れ着いたガレキなり廃材を、同市内の渡波(ワタノハ)地区の子どもたちが自由にくっつけてオブジェにしたというプロジェクトです。
「ワタノハスマイル」
これが驚くほどに創造性に満ちあふれています。
「ワタノハスマイル」
街の残骸、被害を直接的に伝え、ある意味で悲しみの記憶でもある廃材。それが子どもたちの手によって楽し気なオブジェに生まれ変わる。簡単に「悲しみから喜びへ。」と受け止めてはならないかもしれませんが、この逞しき創造力にはどこか『未来への希望』を感じてなりませんでした。
畠山直哉「陸前高田(2011)/気仙川(2002-2010)」デジタル・スライドショー
その他には3.11の以前と以降の陸前高田の風景を表裏のスクリーンで写した畠山直哉のスライド作品も。言うまでもなく畠山は陸前高田の出身。まさに一昨年の写真美術館の個展「Natural Stories」でも、同様に被災地を捉えたシリーズを出品していました。
「3.11メモリアルプロジェクト」から
また津波によって壊された公共物などがそのまま展示。原形をとどめず、ひしゃげて歪みきった道路標識の姿。何とも言い難い恐怖を覚えました。
細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」
ラストは三陸沿岸部と被災地を写して歩いた写真家の細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」シリーズです。あくまでも静かにゆっくりとした「はじまり」の姿。だからこそのしかかる被害の大きさ。希望を持ちつつも、改めて現実を直視すべきであることを強く感じました。
初めにも触れたように今日で震災2年目。今月は国内各地でも震災に関する様々な催しが行われています。その中で「つくることが生きること」は必ずしも目立つものではありません。
しかしながらここにあるのは、いずれも地に足を向けた復興支援プロジェクトの姿。阪神や古くは関東大震災に関する展示もあります。過去と現在。そして来るべき未来の災害。この場を僅かながら共有することだけでも、意味があるのではないかと思いました。
「つくることが生きること 東京展」会場風景
あの日何を考え、その後の状況から何を行動し、何を学んだのか。率直なところ、あの震災について、このブログで云々することの無力感は否めません。それでもあえて冷静に見つめ直したい東日本大震災の被害と復興の状況。その一つの切っ掛けになる展示ではないでしょうか。
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること」イベントスケジュール
3月31日までの開催です。入場は無料でした。
「ADBOAT PROJECT」*会期終了後、この船が実際に三陸の海に出て漁をするそうです!
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」 アーツ千代田3331(@3331ArtsChiyoda) メインギャラリー
会期:3月9日(土)~3月31日(日)
休館:火曜日
時間:12:00~19:00 入場は閉場の30分前まで。
料金:無料
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 1階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」
3/9-3/31
アーツ千代田3331で開催中の「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」へ行ってきました。
東日本大震災から今日で丸二年。復興への道のりと今も続く原発事故。あくせくとした日常に追われながらも、かの震災の状況を思い起こさないことはありません。
もちろん各々によって震災への向き合い方は異なりますが、いわゆるアートを基点に、様々なジャンルで復興活動する方々のプロジェクトを紹介する展示が、今、末広町のアーツ千代田3331で行われています。
それが「つくることが生きること」東京展。中村政人をディレクターに擁するコマンドN(一般社団法人非営利芸術活動団体)が、震災後、3331を拠点にスタートした「わわプロジェクト」による展覧会です。
「明治三陸大海嘯の実態」リアス・アーク美術館
まずは過去の災害を見つめ直すことから。気仙沼のリアス・アーク美術館から出品されたのは、明治29年に三陸を襲った大津波を伝える報道画。当時の大衆紙「風俗画報」が、明治三陸地震を取材して絵に表したものです。
「明治三陸大海嘯の実態」から「かがり火の為に命を拾い得たるの図(釜石町)」
津波に呑まれる人々や被災住民の様子などを劇画風に描写。光景がかの震災に重なります。
なお同美術館は震災の被害を受けて休館。2012年夏に一部再開した後、気仙沼と南三陸町の被災の記録と調査を行っています。繰り返された津波被害。被災地の美術館としてかの災害をどう後世に伝えるのか。その活動にも注目すべきところかもしれません。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
さて震災が『現在進行形』だと再認識させられるのは、今なお多くの方が避難されているという現実です。まだ10万名以上の方が仮設住宅で暮らしておられることをご存知でしょうか。
新潟大学工学部岩佐研究室「仮設のトリセツ」
新潟大学工学部岩佐研究室の「仮設のトリセツ」では、震災後に建設された仮設住宅、約53000戸を1000分の1スケールで表現。一口に仮設といえども、様々なタイプや機能があることが分かります。また空き住戸数などもパネルで紹介していました。
「東北・被災地の復興リーダーが語る『わわプロジェクト』」
そして被災地の状況をさらに一歩踏み込んだ形で知ることが出来るのが、東北各地で復興に向けて活動する方々の映像メッセージです。2年たって復興がどう進んでいるのか、また何が問題なのか。報道などで見聞きするよりもリアルにかつダイレクト。強く訴えかけられました。
「ワタノハスマイル」
さてこの展示で私が特に印象深かったのが「ワタノハスマイル」。石巻の小学校の校庭に流れ着いたガレキなり廃材を、同市内の渡波(ワタノハ)地区の子どもたちが自由にくっつけてオブジェにしたというプロジェクトです。
「ワタノハスマイル」
これが驚くほどに創造性に満ちあふれています。
「ワタノハスマイル」
街の残骸、被害を直接的に伝え、ある意味で悲しみの記憶でもある廃材。それが子どもたちの手によって楽し気なオブジェに生まれ変わる。簡単に「悲しみから喜びへ。」と受け止めてはならないかもしれませんが、この逞しき創造力にはどこか『未来への希望』を感じてなりませんでした。
畠山直哉「陸前高田(2011)/気仙川(2002-2010)」デジタル・スライドショー
その他には3.11の以前と以降の陸前高田の風景を表裏のスクリーンで写した畠山直哉のスライド作品も。言うまでもなく畠山は陸前高田の出身。まさに一昨年の写真美術館の個展「Natural Stories」でも、同様に被災地を捉えたシリーズを出品していました。
「3.11メモリアルプロジェクト」から
また津波によって壊された公共物などがそのまま展示。原形をとどめず、ひしゃげて歪みきった道路標識の姿。何とも言い難い恐怖を覚えました。
細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」
ラストは三陸沿岸部と被災地を写して歩いた写真家の細川剛の「変わらない風景、はじまりの風景」シリーズです。あくまでも静かにゆっくりとした「はじまり」の姿。だからこそのしかかる被害の大きさ。希望を持ちつつも、改めて現実を直視すべきであることを強く感じました。
初めにも触れたように今日で震災2年目。今月は国内各地でも震災に関する様々な催しが行われています。その中で「つくることが生きること」は必ずしも目立つものではありません。
しかしながらここにあるのは、いずれも地に足を向けた復興支援プロジェクトの姿。阪神や古くは関東大震災に関する展示もあります。過去と現在。そして来るべき未来の災害。この場を僅かながら共有することだけでも、意味があるのではないかと思いました。
「つくることが生きること 東京展」会場風景
あの日何を考え、その後の状況から何を行動し、何を学んだのか。率直なところ、あの震災について、このブログで云々することの無力感は否めません。それでもあえて冷静に見つめ直したい東日本大震災の被害と復興の状況。その一つの切っ掛けになる展示ではないでしょうか。
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること」イベントスケジュール
3月31日までの開催です。入場は無料でした。
「ADBOAT PROJECT」*会期終了後、この船が実際に三陸の海に出て漁をするそうです!
「東日本大震災復興支援 つくることが生きること 東京展」 アーツ千代田3331(@3331ArtsChiyoda) メインギャラリー
会期:3月9日(土)~3月31日(日)
休館:火曜日
時間:12:00~19:00 入場は閉場の30分前まで。
料金:無料
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 1階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
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