「超おさらい!日本美術史。」 Pen(2018/11/15号)

縄文時代から戦前へと至る日本美術の歴史を、一挙におさらい出来る特集が、雑誌「Pen」11月15日号に掲載されています。



「完全保存版 超おさらい!日本美術史。」 Pen(ペン) 2018年11/15号
https://www.pen-online.jp/magazine/pen/463-nihonbijyutsushi/

それが「完全保存版 超おさらい!日本美術史。」で、縄文、飛鳥、平安、桃山、江戸(前〜中期、後期)、明治、そして戦前の順に、各時代の核となる作品を参照しながら、美術の大まかな通史を紹介していました。



はじまりは縄文時代で、東京国立博物館での「特別展 縄文」でも記憶に新しい十日町の「火炎型土器」のほか、有名な「遮光器土偶」を見比べながら、土器の文様の変遷、また土偶における造形美を踏まえ、縄文人の生活などについて触れていました。



また、基本的に通史ながらも、利休の「わび」や南蛮美術、それに若冲や蕭白、蘆雪などの18世紀の京都の絵師に着目したコーナーもあり、それぞれの特質や各絵師の個性を見比べることも出来ました。



私として特に面白かったのは、「美人」や「かわいい」などをキーワードに、時代を横断して作品をピップアップしていることで、「美人」では奈良時代の「鳥毛立女屏風」に起源を辿りつつ、平安時代の「源氏物語」、さらには清長や歌麿の美人画から、黒田清輝の「智・感・情」などを取り上げ、時代ごとに移り変わる「美」の様相、ないしトレンドを追っていました。

現代美術に関しては、「現代のアートシーンに現れた、日本美術のDNA」と題し、美術史家の山下裕二先生のインタビュー記事が掲載されていました。ここでは山下先生が注目する現代アーティストを取り上げ、それぞれの作品から見られる、日本美術の影響について触れていました。

来年2月より開催予定の「奇想の系譜」展にも関した特集、「奇想をキーワードに、非凡なる美を再発見」も興味深いのではないでしょうか。ここでは奇想を「奇なる発想に基づく、既知や諧謔、エンターテイメント性に富んだ芸術表現」と捉え、奈良から明治時代までの奇想的な作品を紐解いていました。また各時代の監修者が作品を選出しているのも特徴で、推薦コメントならぬ、解説も付されていました。新たな視点で作品を理解することができるかも知れません。

さらに「日本画の味わいをつくり出す、伝統的な画材」では、顔料、筆、また絹や和紙など日本画の画材の特徴についても踏み込んでいて、時代を経て、どのように使われていたのかを紹介していました。



【縄文時代から戦前までの日本美術史を、各時代の出来事とともに学ぶ】(特集より一部紹介)
縄文時代:1万年もの定住生活から生まれ出た、美の原点。「火焔型土器」「遮光器土偶」etc.
飛鳥時代:仏教が伝来し、日本で初めて仏像がつくられた。「法隆寺 釈迦三尊像」「中宮寺菩薩半跏像」etc.
平安時代:往生を切望する貴族が欲した、華麗なる仏画。/スクロールする絵巻の楽しさ。『仏涅槃図』『伴大納言絵巻』(常盤光長)etc.
桃山時代:天下人に愛された、永徳と等伯がしのぎを削る。『檜図屏風』(狩野永徳)『松林図屏風』(長谷川等伯)etc.
江戸時代(前~中期):美意識の継承によって、育まれていった琳派。『風神雷神図屏風』(俵屋宗達)『風神雷神図屏風』(尾形光琳)etc.
江戸時代(後期):江戸の風俗を生き生きと描いた、浮世絵の盛栄。『高島おひさ』(喜多川歌麿)『三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛』(東洲斎写楽)etc.
明治時代~戦前:西洋の写実表現に学びを得た、近代の日本画。『班猫』(竹内栖鳳)『落葉』(菱田春草)etc.



見開きの図版が精細でかつ大きく、それを見るだけでも楽しめますが、テキストの記述が詳細で、かなり読み応えがありました。しばらく楽しめそうです。

「Pen 2018年11/15号[超おさらい! 日本美術史。]CCCメディアハウス

雑誌「Pen」、特集「超おさらい!日本美術史。」は、11月1日に発売されました。

「Pen(ペン) 2018年11/15号 [超おさらい! 日本美術史。]」(@Pen_magazine
出版社:CCCメディアハウス
発売日:2018/11/1
価格:700円(税込)
内容:燃え盛る炎のような模様の縄文土器、力強い肉体を表した仏像、金を貼った豪華な屏風……。誰もが知る名作でも、なぜそれが生まれ、どんな意味をもったかを案外知らないものだ。今回Penの誌上には、縄文時代から現代まで、日本美術史上の傑作が勢揃いした。パリやモスクワで日本美術の展覧会が相次ぐなど、海外からも注目される日本の美。その歴史を作品誕生のエピソードや背景となる当時の情勢を交えながら、時代別に振り返ろう。
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