『描くひと 谷口ジロー展』 世田谷文学館

世田谷文学館
『描くひと 谷口ジロー展』
2021/10/16~2022/2/27



世田谷文学館で開催中の「描くひと 谷口ジロー展」を見てきました。

1971年に漫画誌にデビューした谷口ジロー(1947〜2017)は、ハードボイルドから時代劇や家庭劇、はたまたSFから動物をモチーフとした作品をてがけ、多くの言語に翻訳されるなど世界各地で愛読されてきました。

その谷口の作品を紹介するのが『描くひと 谷口ジロー展』で、初期から未完の遺作までの自筆原画など約300点もの作品が公開されていました。

高校卒業までを鳥取市にて過ごした谷口は、20歳にして漫画家を目指し上京すると、動物漫画で知られる石川球太のアシスタントとして働きました。

そして1971年に『嗄れた部屋』が「ヤングコミック」に掲載されると、「昭和の絵師」とも呼ばれた上村一夫のアシスタントを担い、1975年には『遠い声』が第14回ビックコミック賞佳作に入選しました。そしてこの頃より多くの成年コミック誌に作品を発表しました。


『青の戦士』 1980~81年 原作:狩撫麻礼

関川夏央との共作である『事件屋稼業』は、1979年からはじまり、断続的に1990年代の半ばまで続いたロングランの作品で、1980年には狩撫麻礼が原作を手がけた『青の戦士』がスタートしました。このように共作者、原作者とともに活動した谷口は、多くの傑作を生み出していきました。


『ブランカ』 1984〜86年 展示風景

谷口は人間と動物の絆や自然への畏怖や敬意など、動物や自然をテーマとした作品を多く描いていて、1982年の『ブランカ』では遺伝子操作された軍用犬が飼い主のいるニューヨークを目指す物語を表しました。また1991年の『犬を飼う』は、谷口本人の飼い犬が亡くなった体験をもとにした作品で、犬への愛情をリアルでかつ細やかに描いていました。


『孤独のグルメ』 1994~2015年 原作:久住昌之 展示風景

1990年代には『犬を飼う』をはじめ、セリフがほとんどない『歩くひと』や、久住昌之の原作による『孤独のグルメ』など多様な作品を手がけていて、故郷を舞台に父と子や家族を描いた『父の暦』や『遙かな町へ』は多くの言語に翻訳されるなど、世界でも評価を得るようになりました。


『歩くひと』 1990〜91年 表紙用イラスト。

そして『歩くひと』や『ブランカ』、『父の暦』などがフランスをはじめとして各国で紹介されると、Jiro Taniguchiとして人気を集め、2000年代には各国の漫画祭などで賞を受賞して脚光を浴びました。


『「坊っちゃん」の時代』から『不機嫌亭漱石』 1987~96年 共作:関川夏央 展示風景

2010年代には『孤独のグルメ』や『事件屋稼業』がテレビドラマ化されたほか、ヨーロッパでは『遙かな町へ』が実写映画化されるなど、映像作品としても人気を集めました。


『神の犬』 1995~96年

ともかく「描くひと」とあるように貪欲なまでに多様な主題を描いた谷口でしたが、初期の劇画調からのちに描かれた作品にはタッチの違いも見られて、そうした作風の変化にも興味を引かれるものがありました。


『VENICE』 2014年


『孤独のグルメ』の直筆イラストも公開。世界で愛された漫画界の巨人、谷口ジローの作品に酔いしれる|Pen Online

会場内の撮影も可能でした。予約は不要ですが、混雑時は入場が規制される場合があります。



2月27日まで開催されています。

『描くひと 谷口ジロー展』 世田谷文学館@SETABUN
会期:2021年10月16日(土)~2022年2月27日(日)
休館:月曜日。但し月曜が祝日の場合は開館し、翌平日に休館。年末年始(2021年12月29日~2022年1月3日)。
時間:10:00~18:00 *入場、及びミュージアムショップの営業は17時半まで。
料金:一般900(720)円、大学・高校生・65歳以上600(480)円、小・中学生300(240)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:世田谷区南烏山1-10-10
交通:京王線芦花公園駅より徒歩5分。
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