『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』 府中市美術館

府中市美術館
『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』 
2021/12/18~2022/2/27



府中市美術館で開催中の『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』を見てきました。

1967年生まれの池内晶子は、絹糸を用いた作品を手がけ、国内各地の美術館や芸術祭などでインスタレーションを発表してきました。

その池内の美術館での初めての個展が『あるいは、地のちからをあつめて』で、3つの企画展示室とロビーを用い、絹糸による大掛かりな作品、および紙やガラスを用いた小品などを展示していました。

まず最初の展示室にて姿を現すのが『Knotted Thread-red―Φ1.4cm-Φ720cm』と題した作品で、ガランとした何もないスペースの中央に筒状のかたちをした絹糸が吊られ、床には同じく赤い糸が円を描くように広がっていました。



これらは池内が6日間かけて、実に全長2万メートルを超える糸をつなぎ合わせて作られたもので、直径は7メートルにもおよんでいました。また作品を取り囲むガラスケースへ赤い糸がぼんやりと映り込む光景も幻想的だったかもしれません。

続く暗がりのスペースでは『Knotted Thread-h220cm(north-south)』が展示されていて、南北から張られた糸の中央に、たくさんの結び目をつけた1本の糸が吊るされていました。また糸は機械ではなく、新潟の「朝日村 まゆの花の会」による手よりのもので、照明の効果によってわずかな光を放っていました。といえ糸は極めて細く、時折姿を隠すようにして見えなくなるほどでした。

最後の展示室では5メートルの軸糸に10センチ間隔の糸を結びつけた『Knotted Thread--red-east-west-catenary-h360cm』が公開されていて、空調の風などによって微かに波打つように揺らめいていました。またガラスケースの中に同じようなかたちで糸が渡されていました。

ちょうど糸の波を前にすると確かに糸を確認できるものの、大変に細いためか、角度を変えると見えなくなったりしていて、表情は一様ではありませんでした。



この他、ロビーにはドローイングや糸による小品、また版画などが展示されていました。また制作風景を映したドキュメンタリー映像も興味深いのではないでしょうか。



いずれも空気の流れ、さらに湿度などでも表情が変化していく繊細なインスタレーションで、ゆらゆらと靡く絹糸を見つめていると、いつしか糸が消え、空間全体へと溶けていくような錯覚に陥りました。またエントランスロビーの吹き抜けにも一本の絹糸が渡されていましたが、注意して見ないと気がつかないかもしれません。


ロビーの一部作品のみ撮影が可能でした。2月27日まで開催されています。

『池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて』 府中市美術館@FuchuArtMuseum
会期:2021年12月18日(土)~2022年2月27日(日)
休館:月曜日。2月24日(木)。
時間:10:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般700(560)円、大学・高校生350(280)円、中学・小学生150(120)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *府中市内の小中学生は「学びのパスポート」で無料。
場所:府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内
交通:京王線東府中駅から徒歩15分。京王線府中駅からちゅうバス(多磨町行き)「府中市美術館」下車。
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