都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『ミケル・バルセロ展』 東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー
『Miquel Barceló ミケル・バルセロ展』
2022/1/13~3/25

東京オペラシティアートギャラリーで開催中の『ミケル・バルセロ展』を見てきました。
1957年にスペインのマジョルカ島に生まれたミケル・バルセロは、「ドクメンタ7」(ドイツ・ カッセル。1982年)でデビューすると、パリ、アフリカなどの各地にアトリエを構えて制作し、絵画から彫刻、陶、パフォーマンスといった幅広い作品を発表してきました。
まず目を引くのが、縦横2〜3メートルにも及ぶ大画面の絵画で、激しく力強いタッチの元、一見、抽象を思わせるようなモチーフが描かれていました。いずれも鮮やかな色彩を伴っていて、画肌は時に隆起しては、絵具そのものが荒波を立てるように広がっていました。

『雉のいるテーブル』 1991年
とはいえ、バルセロが表現しているのは抽象ではなく、闘牛や海、また川の風景など、具象的なモチーフに基づいていて、例えばアクションペンティングを思わせる『雉のいるテーブル』も、雉をはじめとした鳥獣や魚などの死骸を花瓶や髑髏をともに描いた作品でした。

『とどめの一突き』 1990年
まるで火口のように見える『とどめの一突き』は、闘牛場をモチーフとしていて、目を凝らすと黒い円の下の方に牛と人間が対峙する姿を見ることが出来ました。ただバルセロはナポリのヴェスヴィオ山を訪ねた際、「空の闘牛場」のように感じたとも語っていて、闘牛場と火口の2つのイメージを重ね合わせた作品と呼べるかもしれません。
また闘牛を愛したバルセロは、危険に立ち向かう闘牛士の姿を、孤独に制作を行う画家の自画像として捉えていて、絵画の重要な主題としてたびたび取り上げてきました。

『小波のうねり』 2002年
地中海の自然の中で育ったバルセロにとって、海も主要なモチーフの1つでした。そのうちの『小波のうねり』は、水色の海面のうねりを繊維状の物質が混じった絵具にて描いていて、左右から立ち位置を変えると色彩が変化するように表現されていました。海面が時間や天候で表情を変えていくのを目にしているように思えたかもしれません。

『マンダラ』 2008年
1988年、西アフリカを旅したバルセロはマリ共和国に拠点を置くと、以来、毎年のように滞在を繰り返しては制作を行うようになりました。『マンダラ』も蛇行するアフリカ川を俯瞰した作品で、カヌーや漁師、樹木などが流れる光景を描いていました。例えばトゥオンブリーの絵画を連想させるような即興的ともいえるタッチも魅力ではないでしょうか。

手前:『堅い頭の動物たち』 2012年
こうした一連の絵画とともに並ぶのが、壺や花瓶、鉢といった陶のオブジェで、いずれも歪みを伴いつつ、中には人の高さほどに大きなものもありました。

『ミケル・バルセロ展』 展示風景
バルセロは陶の制作に際し、力を加えてから窯で焼くことで、さまざまなイメージを作り上げていて、古代の壁画のような動物の絵が描かれるなど、プリミティブな味わいも感じられました。

右:『ドリー』 2013年 左:『マルセラ』 2011年
暗がりの画面にあたかも亡霊のように人が浮かび上がるのが「ブリーチ・ペインティング」と呼ばれる肖像画で、水で溶いた漂白剤にて絵具を脱色する技法にて描いていました。

左:『水浴する人たち』 2019.07-08 右:『内生する1人を含む4人』 2019.07-08
この他にも比較的小さな紙の作品やスケッチブック、またパフォーマンス映像なども展示されていて、バルセロの40年の活動をさまざまな角度から追いかけることができました。

『COVIDのノート』 2020年
『COVIDのノート』と題したコロナ禍のロックダウン下にて描かれた作品も、まさにバルセロのいまを知る上で興味深いかもしれません。

『パソ・ドブレ』(縮約版) 2015年 チューリヒ、スイス
スペイン出身の画家でありつつも、マリ共和国の滞在の経験など、アフリカの土地や文化がバルセロに大きなインスピレーションを与えているように感じられました。
ミケル・バルセロを知っているか? 日本初の回顧展が開催中|Pen Online
一部を除いて撮影も可能でした。3月25日まで開催されています。*一番上の写真の作品は『曇った大地海』2019年
『Miquel Barceló ミケル・バルセロ展』 東京オペラシティアートギャラリー(@TOC_ArtGallery)
会期:2022年1月13日(木)~3月25日(金)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)、2月13日(日)*全館休館日
時間:11:00~19:00
*入場は閉館30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大・高生1000(800)円、中学生以下無料。
*同時開催中の『project N 85 水戸部七絵』の入場料を含む。
*( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
『Miquel Barceló ミケル・バルセロ展』
2022/1/13~3/25

東京オペラシティアートギャラリーで開催中の『ミケル・バルセロ展』を見てきました。
1957年にスペインのマジョルカ島に生まれたミケル・バルセロは、「ドクメンタ7」(ドイツ・ カッセル。1982年)でデビューすると、パリ、アフリカなどの各地にアトリエを構えて制作し、絵画から彫刻、陶、パフォーマンスといった幅広い作品を発表してきました。
まず目を引くのが、縦横2〜3メートルにも及ぶ大画面の絵画で、激しく力強いタッチの元、一見、抽象を思わせるようなモチーフが描かれていました。いずれも鮮やかな色彩を伴っていて、画肌は時に隆起しては、絵具そのものが荒波を立てるように広がっていました。

『雉のいるテーブル』 1991年
とはいえ、バルセロが表現しているのは抽象ではなく、闘牛や海、また川の風景など、具象的なモチーフに基づいていて、例えばアクションペンティングを思わせる『雉のいるテーブル』も、雉をはじめとした鳥獣や魚などの死骸を花瓶や髑髏をともに描いた作品でした。

『とどめの一突き』 1990年
まるで火口のように見える『とどめの一突き』は、闘牛場をモチーフとしていて、目を凝らすと黒い円の下の方に牛と人間が対峙する姿を見ることが出来ました。ただバルセロはナポリのヴェスヴィオ山を訪ねた際、「空の闘牛場」のように感じたとも語っていて、闘牛場と火口の2つのイメージを重ね合わせた作品と呼べるかもしれません。
また闘牛を愛したバルセロは、危険に立ち向かう闘牛士の姿を、孤独に制作を行う画家の自画像として捉えていて、絵画の重要な主題としてたびたび取り上げてきました。

『小波のうねり』 2002年
地中海の自然の中で育ったバルセロにとって、海も主要なモチーフの1つでした。そのうちの『小波のうねり』は、水色の海面のうねりを繊維状の物質が混じった絵具にて描いていて、左右から立ち位置を変えると色彩が変化するように表現されていました。海面が時間や天候で表情を変えていくのを目にしているように思えたかもしれません。

『マンダラ』 2008年
1988年、西アフリカを旅したバルセロはマリ共和国に拠点を置くと、以来、毎年のように滞在を繰り返しては制作を行うようになりました。『マンダラ』も蛇行するアフリカ川を俯瞰した作品で、カヌーや漁師、樹木などが流れる光景を描いていました。例えばトゥオンブリーの絵画を連想させるような即興的ともいえるタッチも魅力ではないでしょうか。

手前:『堅い頭の動物たち』 2012年
こうした一連の絵画とともに並ぶのが、壺や花瓶、鉢といった陶のオブジェで、いずれも歪みを伴いつつ、中には人の高さほどに大きなものもありました。

『ミケル・バルセロ展』 展示風景
バルセロは陶の制作に際し、力を加えてから窯で焼くことで、さまざまなイメージを作り上げていて、古代の壁画のような動物の絵が描かれるなど、プリミティブな味わいも感じられました。

右:『ドリー』 2013年 左:『マルセラ』 2011年
暗がりの画面にあたかも亡霊のように人が浮かび上がるのが「ブリーチ・ペインティング」と呼ばれる肖像画で、水で溶いた漂白剤にて絵具を脱色する技法にて描いていました。

左:『水浴する人たち』 2019.07-08 右:『内生する1人を含む4人』 2019.07-08
この他にも比較的小さな紙の作品やスケッチブック、またパフォーマンス映像なども展示されていて、バルセロの40年の活動をさまざまな角度から追いかけることができました。

『COVIDのノート』 2020年
『COVIDのノート』と題したコロナ禍のロックダウン下にて描かれた作品も、まさにバルセロのいまを知る上で興味深いかもしれません。

『パソ・ドブレ』(縮約版) 2015年 チューリヒ、スイス
スペイン出身の画家でありつつも、マリ共和国の滞在の経験など、アフリカの土地や文化がバルセロに大きなインスピレーションを与えているように感じられました。
【新着】ミケル・バルセロを知っているか? 日本初の回顧展が開催中 https://t.co/N1s90uvsZw
— Pen Magazine (@Pen_magazine) January 21, 2022
ミケル・バルセロを知っているか? 日本初の回顧展が開催中|Pen Online
一部を除いて撮影も可能でした。3月25日まで開催されています。*一番上の写真の作品は『曇った大地海』2019年
『Miquel Barceló ミケル・バルセロ展』 東京オペラシティアートギャラリー(@TOC_ArtGallery)
会期:2022年1月13日(木)~3月25日(金)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)、2月13日(日)*全館休館日
時間:11:00~19:00
*入場は閉館30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大・高生1000(800)円、中学生以下無料。
*同時開催中の『project N 85 水戸部七絵』の入場料を含む。
*( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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