「椛田ちひろ 世界は鏡を通過する」 アートフロントギャラリー

アートフロントギャラリー
「椛田ちひろ 世界は鏡を通過する」 
10/26-11/11



アートフロントギャラリーで開催中の椛田ちひろ個展、「世界は鏡を通過する」へ行ってきました。

2011年のMOTアニュアル、そして昨年のあざみ野コンテンポラリーと、意欲的に作品を発表し続けている椛田ちひろ。

ここアートフロントギャラリーでも昨年、個展があったばかりですが、今回もまた空間をダイナミックに用いた展示を繰り広げています。

スペースは2つ。まずはメインのギャラリースペースへと進みましょう。

ここではいずれも新作、お馴染みのボールペンによる「事象の地平線」と、ガラスを用いた「鏡は横にひび割れぬ」などが。


手前:椛田ちひろ「すべてが漂っている放浪の海」2012年 インクジェット紙に油性ボールペン・ミラーフォルムマウント
置く:椛田ちひろ「事象の地平線」2012年 インクジェット紙に油性ボールペン アクリルマウント


それにしてもこの深遠な闇、そして凄まじいまでの密度。限りなく近づいて目を凝らさなければ、おおよそボールペンで引かれた無数の線の痕跡だとは思えません。

また椛田の一連のインスタレーションは立ち位置によっても印象が大きく変わってきますが、それは本展示でも同様です。


椛田ちひろ「世界は鏡を通過する」2012年 ガラス・シリコン

展覧会のタイトルにも掲げられた「世界は鏡を通過する」も、前から向き合うのと、壁にそって横から見るのでは、大いに表情が異なります。


椛田ちひろ「世界は鏡を通過する」(部分)2012年 ガラス・シリコン

塗り込められたボールペンの面はまさに鏡のようですが、その何かを撥ねつけるかのような力強さと、反面での吸い込まれそうな感覚も伴うという、言わば二面的な表情も持ち得ています。


椛田ちひろ「鏡は横にひび割れぬ」2012年 ガラス・樹脂・シリコン

また表面に揺らぎを伴うガラス作品も見どころではないでしょうか。


椛田ちひろ「鏡は横にひび割れぬ」(拡大)2012年 ガラス・樹脂・シリコン

反射と透過、その双方の狭間を行き交うような独自の地平、いつもながらに惹かれました。

さて道路に面したもう一つのギャラリースペースでは一転、素材にアルミテープを取り込んだ大胆なインスタレーションが展開されています。


椛田ちひろ 「untitled」(2012年) ミクスドメディア 

先の作品を闇としたら、こちらはまさに光に満ちた世界。全身がテープに反射して輝く光の渦に包み込まれるではありませんか。


椛田ちひろ 「untitled」(2012年) ミクスドメディア

それにテープは時に捻れながらも、何層かの平面を作るかのように広がっているのもポイントです。

これまでのボールペンの作品が光を吸収するとしたら、こちらはそれを解き放ってスパークしているかのようなダイナミックさも。上下、また斜めに交錯する光の面、その鮮烈な煌めきは刺激的ですらありました。


椛田ちひろ 「untitled」(2012年) ミクスドメディア(外から)

ところで今回は展示を夜に拝見しましたが、全体として光と闇のコントラストがより際立っているような印象を受けました。昼間出かけた方には再度、日没後の観覧もおすすめします。

11月11日まで開催されています。

「椛田ちひろ 世界は鏡を通過する」 アートフロントギャラリー@art_front
会期:10月26日(金)~11月11日(日)
休廊:月曜日
時間:11:00~19:00
住所:渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA棟
交通:東急東横線代官山駅より徒歩5分
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「あざみ野コンテンポラリー vol.3 ART×DANCE 2012」 横浜市民ギャラリーあざみ野

横浜市民ギャラリーあざみ野
「あざみ野コンテンポラリー vol.3 ART×DANCE 2012」
10/20-11/11



横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の「あざみ野コンテンポラリー vol.3 ART×DANCE 2012」へ行って来ました

横浜はあざみ野発、ジャンルに捉われずに比較的若い世代のアーティストを取り上げる「あざみ野コンテンポラリー」。今回のタイトルは「ART×DANCE」、キーワードはダンスです。

絵画、写真、そしてインスタレーションとダンスを組み合わせ、そこから広がる多様な空間表現を見る仕掛けとなっていました。

参加作家は以下の通りです。(インタビュー:youtube動画

亀井佑子(1979~)
山下残(1970~)
佐々木愛(1976~)
酒井幸菜(1985~)
梅田宏明(1977~)


さて順路からしてトップバッターは亀井佑子、15点ほどの写真が展示されています。

元々、大学でダンスを学んでいた彼女は、今の時代の「テンポラリーな状況をかたちとして収める」(解説冊子より引用。一部改変。)ため、カメラを片手にまた新たな表現を行うようになりました。


亀井佑子「To Infinity and Beyond」2012年 ゼラチン・シルバー・プリント 他

モチーフとして選ばれたのは、何気ない都市空間です。


亀井佑子「in the grid」2008年 ゼラチン・シルバー・プリント 他

「in the grid」では、都市に無数に現れる直角や並行といった幾何学的構造に、動きによって直線を強調した身体を介在させています。

そして介在といえば、まさにこの展示室で撮られた最新作の「To Infinity and Beyond」も同様。いうまでもなく展示台の上でポーズを取っているのは彼女の姿に他なりません。

またよく見ると手にはカメラのスイッチも。写すということが、より身体性を強く伴う行為へと転化されていました。

続いては白く覆われたステージのあるスペース、佐々木愛と酒井幸菜の展示です。


佐々木愛「振付けのことばのための絵」2012年 紙、アクリル、色鉛筆、パステル

ここで面白いのが彼女の制作プロセス、実はダンサーの酒井とペインターの佐々木が共に作品を交換し合い、そこから着想を得たイメージを新作に表しています。

ずらりと並ぶペインティングは酒井の「振付けの言葉」を受けて描かれたもの。舞台を制作のアイデアやイメージを書き留めた言葉が、絵画という平面表現へ、しかも別の制作者を通して置き換えられるのです。


佐々木愛「Time to Live」2010-2012年 ペインティングのスライドプロジェクション

一方で酒井のダンスは佐々木のスライド作品、「Time to Live」にインスピレーションを受けて制作されたもの。佐々木はオーストラリアの砂漠で見たという枯木が言わば土に帰らず、ただ朽ちている姿に衝撃を受け、このスライド作品を制作しました。

その前で披露されたのが酒井のダンス、「光る森、青い樹」です。実は私は彼女のパフォーマンスが行われる時間に合わせて展示を見ましたが、白く静寂の空間に差し込む青白い光の中、枯木を手にしながらまるで神託を受けて舞う巫女のような姿。その美しさと緊張感に、思わずうっとりとさせれてしまいました。

なお彼女のダンスを見られるチャンスはあと一回、会期末前日の11月10日(土)の14時から。また山下残のパフォーマンスも随時行われていますが、ともかくそうした機会に合わせて展示をご覧になるよう強くおすすめします。

さて二階へ上がりましょう。ここでは最近、映像インスタレーションの分野でも作品を発表している梅田宏明と、振付家として舞台でも活躍する山下残の展示が。


梅田宏明「split flow」2011年 レーザーインスタレーション

暗室の床面に照射されたレーザービーム、これぞ「動かないと見えない光」をテーマにした「split flow」です。


梅田宏明「split flow」 (ご一緒した@butainunana2さんに踊っていただきました。)

ここでは我らもダンサー、光を浴びながら身体を動かしてみましょう。すると真っ暗闇だったはずの空間へ俄かに光、つまりは手足の動きに当っては反射する光の軌跡が現れます。

ラストの山下残はそのステージからして壮大、何と展示室を横切るのは、本物の鉄道のレールではありませんか。


山下残「大行進」2012年 ステージ *美術:カミイケタクヤ「訪れる列車」

これは美術家のカミイケタクヤにより、「海に沈んだ世界」を表したものだそうですが、レールしかり、朽ちた小屋に転がる材木、そしておもむろに現れる動物の人形など、幻想的とも言える世界には思わず息をのんでしまいます。


山下残「大行進」2012年 ステージ *美術:カミイケタクヤ「訪れる列車」

山下はこのインスタレーションを舞台に会期中、ほぼ連日、パフォーマンスを行っています。

最終日までのスケジュールは今日を含めると残り5回、7日(水)~9日(金)、そして11日(日)です。(いずれも15時スタート。) 一体ここで如何なるステージが繰り広げられるのか、何とか見に行ければと思いました。

入場料は300円ですが、ミューポンを利用すると100円引になります。iPhoneのお持ち方はお忘れなく!

[山下残ダンスパフォーマンス]
日程:10月20日(土)、21日(日)、23日(火)~26日(金)、29日(月)~31日(水)。11月2日(金)、3日(土)、5日(月)~9日(金)、11日(日)
時間:15:00~15:30
出演:山下残
美術:カミイケタクヤ
会場:展示室2

[酒井幸菜ダンスパフォーマンス]
日程:10月20日(土)、27日(土)、28日(日)、11月4日(日)、10日(土)
時間:14:00~14:30
出演:酒井幸菜
会場:展示室1

*いずれも事前申込不要、参加無料。(ただし当時のみ有効の本展チケットが必要。)



11月11日まで開催されています。

「あざみ野コンテンポラリーvol.2 Viewpoints いま『描く』ということ」 横浜市民ギャラリーあざみ野@artazamino
会期:10月20日(土)~11月11日(日)
休館:10/22(月)
時間:10:00~18:00 *11月1日(木)は20:30まで開館
料金:一般300円。高校生以下無料。
 *10月21日(日)は「アートフォーラム・フェスティバル2012」開催につき無料。
住所:横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内
交通:東急田園都市線あざみ野駅東口徒歩5分、横浜市営地下鉄ブルーラインあざみ野駅1番出口徒歩5分。
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「ハーブ&ドロシー 50×50」が来春3/30に公開!

アメリカのハーバード&ドロシー・ヴォーゲル夫妻。郵便局員の夫と図書館司書の妻という立場ながら、自らの感覚を頼りに長年に渡って築き上げた一大現代美術コレクションは、アメリカでも大いな驚きを持って受け止められました。


「ハーブ&ドロシー」公式サイト

そうした二人の人生を描いたのが前作の「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」。アートの観点にとどまらず、ヒューマンドラマとしても大いに見応えがありました。

作品は口コミで評判が広がり、日本では5万名を動員。人気を博しました。そして今、続編にあたる「ハーブ&ドロシー 50×50(フィフティ・バイ・フォフティ)」が、来春の公開を目指して鋭意製作されています。

と言うわけで昨日、「ハーブ&ドロシー 50×50」のグラウドファウンディングを紹介するパーティが渋谷のCafe Teoで開催。私も早速、参加してきました。

ではまず冒頭、前作に引き続きメガホンをとる佐々木芽生監督のご挨拶から。


「ハーブ&ドロシー 50×50」の佐々木芽生監督。

映画制作の現状、そして何よりもハーブさんが亡くなられたという大きな出来事があったこと、またコレクションの終了に伴い、新しい人生を歩まれているドロシーさんにもスポットを当てたい、などというお話がありました。

ちなみにタイトルの「50×50」についても。

これは彼らの築き上げた2500点ものコレクションを各50点ずつ、全米50州の美術館に寄贈するという一大プロジェクトで、当然ながら製作中の「50×50」で描かれる内容に他なりません。

パーティでは一部制作中の場面も特別に公開。



これが実に興味深いオープニング(仮)の二つのバージョン。一つは美術館で子どもたちがコレクションをガイドの方と一緒に見ていくシーン、もう一つは前作のダイジェスト版的な流れで、本作へ繋げていこうとする展開です。どちらを採用するかは決まっていないそうですが、それぞれに魅力がありました。

Herb and Dorothy 50×50 Trailer


さてここでパーティの本題へ。このタイトルにもある「グラウドファウンディング」、一体何を意味するのかご存知でしょうか。

実はこれは映画制作の資金集めにおける新しい手法。一言で表せばサポーター方式といっても差し支えないでしょう。

「『ハーブ&ドロシー』続編・クラウドファンティング」

つまりネット上でこの続編を作るための資金を集めていこうとする試みで、単に募金とは異なり、支援者へは一定の特典が与えられるのも特徴です。

支援はクレジットカードで500円から。30000円の支援では何とエンドロールに名前も掲載されます。

現在、受付開始から20日で200万円。かつてないスピードで集まっているものの、目標額の1000万円への道のりは決して易しいものではありません。


グラウドファウンディングのデモンストレーションと伊勢丹新宿店の中陽次店長。

またパーティでは個人としてもこの映画を応援されている伊勢丹新宿店の中店長によるグラウドファウンディングのデモンストレーションも。


応援スピーチをされる「フクヘン。」こと鈴木芳雄さん。

そしてお馴染みフクヘンさんもこの映画にかける熱い思いを語って下さいました。

最後には佐々木監督から公開日と上映館の発表が。国内公開は来春3月30日。劇場は新宿ピカデリー(以降全国順次公開)です!

実は私は前作を劇場で見逃してしまい、DVD化されたのを見て、ハーブさんとドロシーさんの温かい夫婦愛に魅了され、すぐさま映画のファンになりましたが、今回必ずや劇場へ行こうと改めて誓いました。


「アートフェア東京」エグゼクティブ・ディレクターの金島隆弘さん。

最後にパーティのスピーチから一つ、大変に印象に残ったものをご紹介。

この映画には4つの愛、つまりは「ハーブとドロシーの夫婦愛」、そして「夫婦とアーティスト」、また「夫婦と作品」、そして「佐々木監督と夫婦」とに愛があるということ。

それを踏まえて私が思うのが、もう一つの愛とまでは言えないかもかもしれないものの、この「グラウドファウンディング」を利用することで、「観客と作品との絆」も生まれるのではないかということです。


「ハーブ&ドロシー 50×50」キックオフパーティ会場。(テレビ取材カメラも。)

ようは色々応援したいと心では思っていながらも、なかなか実際に動けないのも事実。それを「グラウドファウンディング」で目に見えた形での支援が出来るわけです。

まずはワンコインから。関心のある方は参加しては如何でしょうか。もちろん私も微力ながら勝手応援、参加するつもりでいます。

「ハーブ&ドロシー 50×50」は来春3月30日の公開されます。



「ハーブ&ドロシー 50X50(フィフティ・バイ・フィフティ)」@herb_dorothy
監督・製作:佐々木芽生
公開予定:2013年3月30日(土)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
フェイスブックページ:http://www.facebook.com/Herb.and.Dorothy.jp
クラウドファンディング:http://motion-gallery.net/projects/herbanddorothy5050
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11月の展覧会・ギャラリーetc

11月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「新装開館記念名品展 時代の美」 五島美術館(奈良・平安編~11/18、鎌倉・室町編11/23~)
・「琉球の紅型」 日本民藝館(~11/24)
・「さわひらき Whirl」 神奈川県民ホールギャラリー(~11/24)
・「大正・昭和のグラフィックデザイン 小村雪岱」 ニューオータニ美術館(~11/25)
・「月岡芳年」 太田記念美術館(~11/25)
 #前期:10/2~10/28、後期:11/1~11/25
・「古道具その行き先 坂田和實の40年」 渋谷区立松濤美術館(~11/25)
・「出雲 聖地の至宝」 東京国立博物館(~11/25)
・「もうひとつの川村清雄展」 目黒区美術館(~12/16)
・「横山大観と再興院展の仲間たち」 野間記念館(~12/16)
・「須田悦弘展」 千葉市美術館(~12/16)
 #「公開制作」:須田悦弘がまる1日かけて「雑草」を制作。作家の木彫技術を間近で観覧可能。日時:11/11(日)10:00~17:00 11階講堂にて。無料。
・「ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画」 根津美術館(~12/16)
・「中国 王朝の至宝」 東京国立博物館(~12/24)
・「篠山紀信展 写真力」 東京オペラシティアートギャラリー(~12/24)
・「はじまりは国芳 江戸スピリットのゆくえ」 横浜美術館(11/3~2013/1/14)
 #講演会「絵描きたちの職人魂 国芳から芳年、暁斎、清方へ」 11/18(日) 14:00~ 講師:山下裕二(美術史家) 定員240名。先着順、無料。 
・「ベン・シャーン展 線の魔術師」 埼玉県立近代美術館(11/17~2013/1/14)
・「生誕100年 松本竣介展」 世田谷美術館(11/23~2013/1/14)
 #講演会「松本竣介の生涯と作品」 日時:11/24(土) 14:00~ 講師:粟津則雄(文芸評論家) 美術館講堂にて、先着150名。無料。
・「森と湖の国 フィンランド・デザイン」 サントリー美術館(11/21~2013/1/20)
・「手の痕跡」 国立西洋美術館(11/3~2013/1/27)
 #「文化の日」(11/3)、及び「FUN DAY」(11/10、11/11)は無料観覧日。
・「アートと音楽/MOTアニュアル2012」 東京都現代美術館(~2013/2/3)
 #「d.v.dライヴ・パフォーマンス」  日時:11/18(日)15:00~ 出演:d.v.d 定員200名。無料。
・「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」 東京ステーションギャラリー(~2013/2/24)
・「チョコレート展」 国立科学博物館(11/3~2013/2/24)
・「会田誠 天才でごめんなさい」 森美術館(11/17~2013/3/31)

ギャラリー

・「天明屋尚 韻」 ミヅマアートギャラリー(~11/10)
・「椛田ちひろ展」 アートフロントギャラリー(~11/11)
・「冨井大裕 つくることの理由」 Galley Kart(~11/16)
・「佐藤イチダイ個展」 アルマスギャラリー(~11/17)
・「宮島達男 LIFE I-model」 SCAI(10/12~11/17)
・「gesture, form, technique 2」 TARONASU(11/2~11/22)
・「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.6 衣川明子」 ギャラリーαM(~11/24)
・「TRANS ARTS TOKYO」 旧東京電機大学校舎11号館(~11/25)
・「イケムラレイコ 銀のほのお」 シュウゴアーツ(~11月下旬)
・「山田純嗣 絵画をめぐって 死んでいるのか、生きているのか」 不忍画廊(11/5~12/8)
・「ignore your perspective 17 HIGH LIGHT 2012/2013」 児玉画廊東京(11/17~12/22)
・「ブラジル現代写真展」 資生堂ギャラリー(~12/23)

さていつもながらに今月も展覧会が目白押しですが、まずは今日見てきたばかりの「須田悦弘」展を挙げないわけにはいきません。



「須田悦弘展」@千葉市美術館(~12/16)

感想はまた後日書きますが、単に精緻な木彫の魅力にとどまらない、空間全体を大胆に用いたインスタレーション、いつもながらの「見せ方の極致」とでも言えるような展示手法にも強く感心させられる展覧会でした。

なお同館のサイトにも記載がありますが、靴を脱いであがる作品が何点かあります。足元は簡単なものにしておいた方が良さそうです。

さて続いては根津美術館から是真展です。



「ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画」@根津美術館(~12/16)

最近の是真展は海外作品が多かったそうですが、今回の根津の展示は全てが国内の所蔵。また工芸だけでなく絵画にも大いに目を向けた企画です。実はこちらは内覧にお邪魔してきたので、早めにブログへ紹介記事をあげるつもりです。

最後は密かにファンの会田さんの展覧会をプッシュ。



「会田誠 天才でごめんなさい」@森美術館(11/17~2013/3/31)

きっとまたあっと驚くような何かをして下さるはず。そのように期待しながら、展覧会を心待ちにしたいと思います。

一気に冷え込んできました。体調にお気をつけてお過ごし下さい。

それでは今月も宜しくお願いします。
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「DIC川村記念美術館~千葉市美術館」間で無料シャトルバスが運行されます

中西夏之展を開催中の千葉・佐倉のDIC川村記念美術館。


DIC川村記念美術館

その広大な敷地を有する美術館はイギリスのマナー・ハウスの趣きすらありますが、都内からのアクセスは決して良いと言えないのも事実。「ぶらっとお出かけ。」というのは難しいかもしれません。

「中西夏之展」 DIC川村記念美術館(拙ブログ。プレビュー時の様子です。)

そうしたアクセスの面で一つ朗報が。千葉市美術館で始まった須田悦弘展にあわせ、両展会期中、相互に行き来する無料シャトルバスが運行されます。

[DIC川村記念美術館~千葉市美術館無料シャトルバス]
運行日:11/3(土)~12/16(日)までの毎週土・日曜日。
時刻表:千葉市美術館発 12:00/14:00→DIC川村記念美術館着
    DIC川村記念美術館発 13:00/15:00→千葉市美術館着

運行日時は期間限定。11/3~12/16までの毎週土日、各日2往復での運行です。


「中西夏之展」展示室風景(撮影は許可を得ています。)

実はシャトルバスは以前にも運行されたことがあり、私も乗りましたが、交通状況で多少前後するものの、約30分程度の所要時間でした。

*追記:11/3(土)の15時の便(川村→千葉市美)を実際に利用しましたが、ちょうど30分でした。ただし道路がかなり空いていたようなので、混雑しているともう少しかかるかもしれません。バスでは目安として40~50分との案内がありました。

また私としておすすめなのが、東京駅八重洲口と川村記念美術館を結ぶ高速バスを利用するコースです。

[マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート(ちばグリーンバス)]
行き:東京駅発 9:55→DIC川村記念美術館着 10:57
帰り:DIC川村記念美術館発 15:29→東京駅着 16:26
料金:大人片道1300円
東京駅乗り場:八重洲北口から徒歩5分、京成高速バス3番のりば。

こちらは1日一往復ですが、所要時間は僅か約1時間。JRや京成を経由し、佐倉駅からの送迎バスを使うよりも余程早く行くことが出来ます。


DIC川村記念美術館エントランス(写真はアンフラマンス展の時のものです。)

行きか帰りにこの高速バスを利用し、千葉市美と川村記念の間でシャトルバスを使うと、効率良く両館を廻れるのではないでしょうか。

というわけで簡単にモデルコースを組んでみました。

東京駅発 9:55~高速バス~DIC川村記念美術館着 10:57
 ↓ 
中西夏之展を鑑賞(ロスコルームをはじめとした常設はもちろん、お庭の散策もオススメ。)
 ↓
DIC川村記念美術館発 13:00/15:00~無料シャトルバス~千葉市美術館着
 ↓
須田悦弘展を鑑賞(土曜日は20時、日曜は18時まで開館。)
 ↓
観賞後、千葉駅まで移動。千葉駅からJR総武快速線で帰京。(東京駅まで約40分。)


もちろん一日がかりではありますが、千葉市美と川村記念の間を「電車+駅からの送迎バス」で移動することを考えれば、ずっとスムーズでかつお手軽です。

なお両美術館では以下のようなチケットの割引サービスも実施中。

[千葉市美術館「須田悦弘展」(10/30~12/16)との連携]
チケット半券(有料券)を提示すると入場料を割引。
千葉市美術館:一般1000円→700円、大学生700円→490円
DIC川村記念美術館:一般1200円→1000円、学生・65歳以上 1000円→800円

私自身は千葉県内在住なので、先に川村記念へ電車で向かい、千葉市美への移動時に無料シャトルバスを利用しようと思っています。


DIC川村記念美術館園庭

佐倉、千葉間はこのシャトルバスを使うと意外にも遠くありません。中西夏之展と須田悦弘展でどっぷり浸る千葉での現代美術の一日。これを機会に是非如何でしょうか。



「中西夏之 韻 洗濯バサミは攪拌行動を主張する 擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑」 DIC川村記念美術館@kawamura_dic
会期:2012年10月13日(土)~2013年1月14日(月・祝)
休館:月曜日。但し12/24、1/14は開館。年末年始(12/25-1/1)。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)



「須田悦弘展」 千葉市美術館
会期:10月30日(火)~ 12月16日(日)
休館:11月5日(月)、12月3日(月)
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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「ジェームズ・アンソール展」 損保ジャパン東郷青児美術館

損保ジャパン東郷青児美術館
「ジェームズ・アンソール 写実と幻想の系譜」 
9/8-11/11



損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ジェームズ・アンソール 写実と幻想の系譜」へ行ってきました。

ベルギーの近代美術を代表するシュルレアリスムの画家、ジェームズ・アンソール(1860-1949)。まさにチラシ表紙のような仮面や骸骨のモチーフを多用したことでも知られているかもしれません。

ところがこの展覧会、そうした奇怪なアンソールを求めて出かけると、かなり面食らいます。


ジェームズ・アンソール「牡蠣を食べる女」1882年

まず全出品作100点のうちアンソールは50点のみ。しかもその多くは仮面に至る前、初期の比較的写実的な作品ばかりです。

何故にアンソールの作品が全体の半分にとどまり、また初期作が多いのか。結論からすると実はその点こそが本展の最も重要なポイントというわけでした。

さてその要点をいくつか簡単に紐解いていきましょう。


ペーテル・パウル・ルーベンス「ミネルヴァ」1630年

展示は何とルーベンスから始まりますが、それはアンソールがアカデミスム時代に学んでいた歴史画に他なりません。

後にアンソールはアカデミスムに背を向け、次第に写実主義を目指し、一例としてクールベ画を理想とします。


ギュスターヴ・クールベ「オルナンの岩」1855-65年

実は初期アンソールとクールベにはかなり親和性が。ここではクールベの「オルナンの岩」(1855-65年)とアンソールの「灰色の海の風景」(1880年)を見比べると一目瞭然、確かにあの物質感ある筆致など、クールベの画風にかなり近いことが見て取れます。


ジェームズ・アンソール「白い雲」1884年

また当時のベルギーで力を持ちつつあった外光主義との関連も重要。同時代の外光主義の画家とアンソールを見比べても作風はさほど乖離していません。


ペリクレス・パンタジス「浜辺にて」1880-84年

結論から言えば、このように他の画家の作品を多数引用することで、アンソールの画業の変遷を際立たせるというのが、本展の主旨というわけでした。

さてアンソールに影響を与えたもう一つの絵画を引用してみます。

それが何とも意外なことに17世紀のオランダの画家たち。


ヤコブ・フォッペンス・ヴァン・エス「牡蠣のある静物」1635-60年

ヤコブ・フォッペンス・ヴァン・エスの「牡蠣のある静物」とアンソールの「牡蠣(または光の研究)」の例を挙げてもご覧の通り、アンソールはこうした身近なモチーフによる静物画をオランダの画家に倣って描いています。


ジェームズ・アンソール「牡蠣(または光の研究)」1882年

アンソール展でまさか出てくるとは思わないオランダの静物画、しかしながら確かにアンソールの創造の一つの原点でもあったのです。

さて後半はアンソールがどのように骸骨や仮面を獲得していったのかが解き明かされます。

まずはシノワズリー、日本や中国などの東洋美術への関心です。


ジェームズ・アンソール「シノワズリー」1880年

アンソールは当時、ヨーロッパを席巻していた東洋美術品から能面や歌舞伎に「奇怪さ」を見出し、絵のモチーフとして取り入れるようになりました。


ピーテル・ブリューゲル(子)「七つの善行」1616年以前

またもう一つ面白いのが、15~16世紀の初期フランドル絵画です。例えば悪魔も登場するブリューゲルにも大いに感化されます。

また14~15世紀の死の舞踏のモチーフ、さらには16~17世紀のイタリアで流行した仮面演劇も。またルドンにも影響されたそうですが、ともかくアンソールは洋の東西を問わず、様々な芸術から、仮面や骸骨のモチーフを確立していったわけなのです。


ジェームズ・アンソール「陰謀」1890年

ラストを飾る大作の「陰謀」も、そうしたアンソールの辿った道を踏まえると、また新鮮に写るもの。さらに最後にはアンソールが音楽を好み、作曲を手がけていたことにも触れています。

骸骨や仮面だけでないアンソールの世界、実に多面的な視点から画業を捉えています。好企画でした。

11月11日まで開催されています。おすすめします。(図版は全てアントワープ王立美術館蔵)

「アントワープ王立美術館所蔵 ジェームズ・アンソール 写実と幻想の系譜」 損保ジャパン東郷青児美術館
会期:9月8日(土)~11月11日(日)
休館:月曜。但し9月17日、10月1日、8日は開館。
時間:10:00~18:00。毎週金曜日は20時まで。(入館は閉館30分前まで)
料金:一般100円(800)円、大・高校生600(500)円、65歳以上800円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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