都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ミュシャ展」 森アーツセンターギャラリー
森アーツセンターギャラリー
「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」
3/9-5/19
森アーツセンターギャラリーで開催中の「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」のプレスプレビューに参加してきました。
日本で大人気のアール・ヌーヴォーの巨匠、アルフォンス・ミュシャ。1978年に国内で初めてのミュシャ展が行われて以来、大小様々な回顧展が開催されてきましたが、今回ほど言わば「知られざるミュシャ」にスポットを当てたことはなかったかもしれません。
ずばりミュシャのスラブ魂、故国チェコへの熱き想いを知ることが出来る展覧会です。
右:「第8回ソコル祭」1925年 カラーリトグラフ
左:「1918-1928:チェコスロヴァキア独立10周年記念」1928年 カラーリトグラフ
と言うのも、そもそもミュシャの「パリのアール・ヌーヴォー」の時代は、サラのポスターを描いて一世を風靡した1894年からおおよそ10年間あまり。1904年に渡米すると、シカゴの美術学校で教え、さらに祖国チェコへと。その後はおおよそ20年あまりかけて「スラブ叙事詩」の制作に没頭。78歳にて没するまでスラブ民族の歴史や平和を願った作品を描き続けているのです。
右:「母と子:子守唄(プラハ・ハラホル合唱教会の壁画のための習作」1921年頃 油彩・カンヴァス
左:「希望の光」1933年 油彩・カンヴァス
ミュシャは紛れもなくスラブ人であり、スラブを愛していた。ミュシャは新生チェコの切手、紙幣のデザインも無償で引き受けています。もちろんパリ時代の華麗なポスターも出品されていますが、ともすれば固定化された感もあるミュシャのイメージを覆すような展示でした。
第1章 チェコ人ミュシャ
第2章 サラ・ベルナールとの出会い
第3章 ミュシャ様式とアール・ヌーヴォー
第4章 美の探求
第5章 パリ万博と世紀末
第6章 ミュシャの祈り
さて冒頭の自画像から早速チェコ人としてのミュシャが。着ているのはロシア風のルパシカと呼ばれる上着。自画像に限らずミュシャは自作にロシア風デザインをいくつも取り込んでいます。
左:「パレットを持った自画像」1907年頃 油彩・カンヴァス
そして直ぐさまパリへ。かの有名な「ジスモンダ」です。これこそ1894年、大人気の女優サラ・ベルナールのためにデザインした宣伝ポスター。なんとミュシャはこの作品以前に本格的なポスター制作をしたことがありませんでしたが、ともかくいきなりの大ヒット。出世作です。得意とするビザンティン風の艶やかな衣装が目を引きます。
右:「ジスモンダ」1894年 カラーリトグラフ
中央:「ロレンザッチオ」1896年 カラーリトグラフ
左:「椿姫」1896年 カラーリトグラフ
ちなみにサラは以降、6年にわたってミュシャにポスター制作を依頼。彫刻家でありコレクターでもあったサラとの交流は、ミュシャの芸術表現をより高めることにも繋がりました。
中央:「カサン・フィス印刷所」1896年 カラーリトグラフ
このようにしてパリのアート・シーンの寵児となったミュシャですが、「アール・ヌーヴォ」におけるミュシャ様式を完成させたのもこの時期です。会場にはミュシャをミュシャたらしめたポスター群がずらり。煙草、香水、ビスケット、そして自転車など、次々と企業宣伝ポスターを手がけていきます。
右:「装飾資料集 図67の最終習作」1901-02年 鉛筆、白のハイライト、紙
左:「装飾資料集 図43の最終習作」1901-02年 鉛筆、インク、淡彩、白のハイライト、紙
また興味深いのは「装飾資料集」。ミュシャは若いデザイナーのために参考書として出版。リトグラフの完成版はもちろん、ミュシャ直筆の素描(最終習作)も展示。これが実に繊細な線描です。ミュシャの高い表現力を知ることが出来ます。
さらにミュシャの名声を不動のものとした装飾パネル画もあわせて紹介。これは広告用の文字を取り除き、室内装飾の観賞用として作られたポスターです。もちろん大ヒット。
左:「夢想」1897年 カラーリトグラフ
しかしながらここで見逃せないのはスラブ的なモチーフです。確かにミュシャは優美な女性、曲線を多用した調和的構図、また花や自然などのモチーフを取り込み、自らの様式を確立させましたが、例えば「夢想」ではチェコの伝統的な刺繍の意匠もさり気なく挿入。円形モチーフもスラブ教会の聖画の光輪に似た構図となっています。
そうしたミュシャがスラブへの想いを新たにしたのが1900年のパリ万博です。ここでボスニア=ヘルツェゴヴィナのパヴィリオンの内装を請け負ったミュシャですが、その準備のために訪れたバルカン半島の地にて、改めてスラブ民族の置かれた過酷な状況を認識。そもそもチェコはパヴィリオンの依頼者、つまりはオーストリア=ハンガリー帝国の植民地でもあったのです。
右:「主の祈り」1899年 パリ、ピアッツァ社により出版 挿絵本
左:「フリーメイソンのコブレット」(ミュシャによるデザイン)1923年 クリスタル・カット・ガラス
さらに興味深いのはこの時期にフリーメイソンに入団。当時流行していた神智学にのめりこみ、人間の精神世界を見つめ直したことです。
右:「ボスニア伝説:ハサンガ嫁の死」1899年 木炭、紙
左:「ボスニア伝説:死神ムルシア」1899年 木炭、紙
この近辺から作風に変化が生じます。精神の奥底へ向き合った「ボスニア伝説」や「死者たち」の暗鬱な気配は、おおよそ知られるミュシャ画とは異なる世界。
「月と星」シリーズ(下絵) 1902年 インク、水彩、紙
特徴的な女性と花ではなく、天体をテーマにした「月と星」シリーズも実に神秘的。光よりも闇が空間を支配しています。
展覧会のハイライトは「スラブ叙事詩」として差し支えないでしょう。1910年パリからチェコへと戻ったミュシャは、スラブの歴史を扱う本シリーズの制作に着手。1918年にチェコは一次大戦によって悲願の独立を果たしますが、作品はそれから数えること10年、つまり独立10周年の1928年になってプラハ市に寄贈されました。
完成作はなんと横8メートル、縦6メートル、それが全部で20点。さすがにそれらがやってきているわけではありません。
「スラブ叙事詩 第9番『クジージュキの集会』下半分の下絵」1916年 チョーク、紙
しかしながらこのプロジェクトに関する下絵が何点も来日。中でも注目は「スラブ叙事詩 第9番『クジージュキの集会』下半分の下絵」ではないでしょうか。
本作は3年前の修復を経て世界初公開。下絵といっても高さ3メートルの迫力。ミュシャの力強い筆致を見て取ることが出来ます。
「スラブ叙事詩」紹介映像
ちなみに「スラブ叙事詩」の本画は会場内の映像で紹介。BGMにはミュシャが制作にあたって大いに感化されたというスメタナの「わが祖国」も。高らかなる民族愛が歌い上げられます。正直感動ものです。
左上「ヒランダル修道院、聖アトス山」1924年 ガラスネガからプリント 他 (いずれもミュシャ撮影写真)
日本はおろか、世界初公開を含む、全240点の作品で辿るミュシャの人生。リトグラフだけでなく素描や油彩、そしてステンドグラス原画や店舗内装デザイン、さらにはミュシャ自身が作品を作るために撮った写真も数多く公開。これまでと一味も二味も違うミュシャ展です。
参考図「プラハ聖堂ヴィート大聖堂のステンド・グラスの窓」 他
スラブを愛し続けたアルフォンス・ミュシャ。パリ以降のミュシャにこれほど注目した展覧会が今まであったでしょうか。誤解を恐れずに申し上げればまさかミュシャの作品から目頭が熱くなるとは思いもよりませんでした。
「ミュシャ作品集―パリから祖国モラヴィアへ/東京美術」
5月19日までの開催です。強くおすすめします。
「ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り 巡回情報」
[東京展]2013年3月9日(土)~5月19日(日) 森アーツセンターギャラリー
[新潟展]2013年6月1日(土)~8月11日(日) 新潟県立万代島美術館
[松山展]2013年10月26日(土)~2014年1月5日(日) 愛媛県美術館
[仙台展]2014年1月18日(土)~3月23日(日) 宮城県美術館
[札幌展]2014年4月5日(土)~6月15日(日) 北海道立近代美術館
「もっと知りたいミュシャ/千足伸行/東京美術」*本展監修の千足先生のミュシャ本です。
「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」(@Mucha2013) 森アーツセンターギャラリー
会期:3月9日(土)~5月19日(日)
休館:4月25日(木)
時間:10:00~20:00(火曜日は17時まで) *3/23(土)はアートナイト開催のため22時まで。入館は閉館時間の30分前まで。
料金:一般1500(1300)円、大学生1200(1000)円、中・高校生800(600)円。小学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体料金
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」
3/9-5/19
森アーツセンターギャラリーで開催中の「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」のプレスプレビューに参加してきました。
日本で大人気のアール・ヌーヴォーの巨匠、アルフォンス・ミュシャ。1978年に国内で初めてのミュシャ展が行われて以来、大小様々な回顧展が開催されてきましたが、今回ほど言わば「知られざるミュシャ」にスポットを当てたことはなかったかもしれません。
ずばりミュシャのスラブ魂、故国チェコへの熱き想いを知ることが出来る展覧会です。
右:「第8回ソコル祭」1925年 カラーリトグラフ
左:「1918-1928:チェコスロヴァキア独立10周年記念」1928年 カラーリトグラフ
と言うのも、そもそもミュシャの「パリのアール・ヌーヴォー」の時代は、サラのポスターを描いて一世を風靡した1894年からおおよそ10年間あまり。1904年に渡米すると、シカゴの美術学校で教え、さらに祖国チェコへと。その後はおおよそ20年あまりかけて「スラブ叙事詩」の制作に没頭。78歳にて没するまでスラブ民族の歴史や平和を願った作品を描き続けているのです。
右:「母と子:子守唄(プラハ・ハラホル合唱教会の壁画のための習作」1921年頃 油彩・カンヴァス
左:「希望の光」1933年 油彩・カンヴァス
ミュシャは紛れもなくスラブ人であり、スラブを愛していた。ミュシャは新生チェコの切手、紙幣のデザインも無償で引き受けています。もちろんパリ時代の華麗なポスターも出品されていますが、ともすれば固定化された感もあるミュシャのイメージを覆すような展示でした。
第1章 チェコ人ミュシャ
第2章 サラ・ベルナールとの出会い
第3章 ミュシャ様式とアール・ヌーヴォー
第4章 美の探求
第5章 パリ万博と世紀末
第6章 ミュシャの祈り
さて冒頭の自画像から早速チェコ人としてのミュシャが。着ているのはロシア風のルパシカと呼ばれる上着。自画像に限らずミュシャは自作にロシア風デザインをいくつも取り込んでいます。
左:「パレットを持った自画像」1907年頃 油彩・カンヴァス
そして直ぐさまパリへ。かの有名な「ジスモンダ」です。これこそ1894年、大人気の女優サラ・ベルナールのためにデザインした宣伝ポスター。なんとミュシャはこの作品以前に本格的なポスター制作をしたことがありませんでしたが、ともかくいきなりの大ヒット。出世作です。得意とするビザンティン風の艶やかな衣装が目を引きます。
右:「ジスモンダ」1894年 カラーリトグラフ
中央:「ロレンザッチオ」1896年 カラーリトグラフ
左:「椿姫」1896年 カラーリトグラフ
ちなみにサラは以降、6年にわたってミュシャにポスター制作を依頼。彫刻家でありコレクターでもあったサラとの交流は、ミュシャの芸術表現をより高めることにも繋がりました。
中央:「カサン・フィス印刷所」1896年 カラーリトグラフ
このようにしてパリのアート・シーンの寵児となったミュシャですが、「アール・ヌーヴォ」におけるミュシャ様式を完成させたのもこの時期です。会場にはミュシャをミュシャたらしめたポスター群がずらり。煙草、香水、ビスケット、そして自転車など、次々と企業宣伝ポスターを手がけていきます。
右:「装飾資料集 図67の最終習作」1901-02年 鉛筆、白のハイライト、紙
左:「装飾資料集 図43の最終習作」1901-02年 鉛筆、インク、淡彩、白のハイライト、紙
また興味深いのは「装飾資料集」。ミュシャは若いデザイナーのために参考書として出版。リトグラフの完成版はもちろん、ミュシャ直筆の素描(最終習作)も展示。これが実に繊細な線描です。ミュシャの高い表現力を知ることが出来ます。
さらにミュシャの名声を不動のものとした装飾パネル画もあわせて紹介。これは広告用の文字を取り除き、室内装飾の観賞用として作られたポスターです。もちろん大ヒット。
左:「夢想」1897年 カラーリトグラフ
しかしながらここで見逃せないのはスラブ的なモチーフです。確かにミュシャは優美な女性、曲線を多用した調和的構図、また花や自然などのモチーフを取り込み、自らの様式を確立させましたが、例えば「夢想」ではチェコの伝統的な刺繍の意匠もさり気なく挿入。円形モチーフもスラブ教会の聖画の光輪に似た構図となっています。
そうしたミュシャがスラブへの想いを新たにしたのが1900年のパリ万博です。ここでボスニア=ヘルツェゴヴィナのパヴィリオンの内装を請け負ったミュシャですが、その準備のために訪れたバルカン半島の地にて、改めてスラブ民族の置かれた過酷な状況を認識。そもそもチェコはパヴィリオンの依頼者、つまりはオーストリア=ハンガリー帝国の植民地でもあったのです。
右:「主の祈り」1899年 パリ、ピアッツァ社により出版 挿絵本
左:「フリーメイソンのコブレット」(ミュシャによるデザイン)1923年 クリスタル・カット・ガラス
さらに興味深いのはこの時期にフリーメイソンに入団。当時流行していた神智学にのめりこみ、人間の精神世界を見つめ直したことです。
右:「ボスニア伝説:ハサンガ嫁の死」1899年 木炭、紙
左:「ボスニア伝説:死神ムルシア」1899年 木炭、紙
この近辺から作風に変化が生じます。精神の奥底へ向き合った「ボスニア伝説」や「死者たち」の暗鬱な気配は、おおよそ知られるミュシャ画とは異なる世界。
「月と星」シリーズ(下絵) 1902年 インク、水彩、紙
特徴的な女性と花ではなく、天体をテーマにした「月と星」シリーズも実に神秘的。光よりも闇が空間を支配しています。
展覧会のハイライトは「スラブ叙事詩」として差し支えないでしょう。1910年パリからチェコへと戻ったミュシャは、スラブの歴史を扱う本シリーズの制作に着手。1918年にチェコは一次大戦によって悲願の独立を果たしますが、作品はそれから数えること10年、つまり独立10周年の1928年になってプラハ市に寄贈されました。
完成作はなんと横8メートル、縦6メートル、それが全部で20点。さすがにそれらがやってきているわけではありません。
「スラブ叙事詩 第9番『クジージュキの集会』下半分の下絵」1916年 チョーク、紙
しかしながらこのプロジェクトに関する下絵が何点も来日。中でも注目は「スラブ叙事詩 第9番『クジージュキの集会』下半分の下絵」ではないでしょうか。
本作は3年前の修復を経て世界初公開。下絵といっても高さ3メートルの迫力。ミュシャの力強い筆致を見て取ることが出来ます。
「スラブ叙事詩」紹介映像
ちなみに「スラブ叙事詩」の本画は会場内の映像で紹介。BGMにはミュシャが制作にあたって大いに感化されたというスメタナの「わが祖国」も。高らかなる民族愛が歌い上げられます。正直感動ものです。
左上「ヒランダル修道院、聖アトス山」1924年 ガラスネガからプリント 他 (いずれもミュシャ撮影写真)
日本はおろか、世界初公開を含む、全240点の作品で辿るミュシャの人生。リトグラフだけでなく素描や油彩、そしてステンドグラス原画や店舗内装デザイン、さらにはミュシャ自身が作品を作るために撮った写真も数多く公開。これまでと一味も二味も違うミュシャ展です。
参考図「プラハ聖堂ヴィート大聖堂のステンド・グラスの窓」 他
スラブを愛し続けたアルフォンス・ミュシャ。パリ以降のミュシャにこれほど注目した展覧会が今まであったでしょうか。誤解を恐れずに申し上げればまさかミュシャの作品から目頭が熱くなるとは思いもよりませんでした。
「ミュシャ作品集―パリから祖国モラヴィアへ/東京美術」
5月19日までの開催です。強くおすすめします。
「ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り 巡回情報」
[東京展]2013年3月9日(土)~5月19日(日) 森アーツセンターギャラリー
[新潟展]2013年6月1日(土)~8月11日(日) 新潟県立万代島美術館
[松山展]2013年10月26日(土)~2014年1月5日(日) 愛媛県美術館
[仙台展]2014年1月18日(土)~3月23日(日) 宮城県美術館
[札幌展]2014年4月5日(土)~6月15日(日) 北海道立近代美術館
「もっと知りたいミュシャ/千足伸行/東京美術」*本展監修の千足先生のミュシャ本です。
「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」(@Mucha2013) 森アーツセンターギャラリー
会期:3月9日(土)~5月19日(日)
休館:4月25日(木)
時間:10:00~20:00(火曜日は17時まで) *3/23(土)はアートナイト開催のため22時まで。入館は閉館時間の30分前まで。
料金:一般1500(1300)円、大学生1200(1000)円、中・高校生800(600)円。小学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体料金
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「奇跡のクラーク・コレクション」 三菱一号館美術館
三菱一号館美術館
「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」
2/9-5/26
三菱一号館美術館で開催中の「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」へ行ってきました。
ボストンから車で3時間、マサチューセッツ州ウィリアムズタウンに位置するクラーク美術館。アメリカの富豪、ロバート・スターリング・クラーク夫妻が一代で築いた印象派絵画。その良質なコレクション、通称「クラコレ」は意外にも国外でまとまって公開されたことは殆どありませんでした。
クロード・モネ「エトルタの断崖」
1885年 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
ここに世界巡回が実現。ミラノ、バルセロナ、ロンドン、モントリオールなどを経て東京へ。ルノワールを筆頭に、コロー、ミレー、ピサロ、モネなどのフランス絵画73点が一同に展観されています。
さてここまでは公式サイトなどでも発表済の情報。もちろん魅力的なコレクションであるのは言うまでもありませんが、今回の展示を簡単に表すなら以下の一言に集約されるのではないでしょうか。
「一コレクターの審美眼、趣味の方向性を強く伺える印象派コレクションの展覧会。」
ともかくその特徴とはビビットな色遣いです。数ある印象派コレクション展の中でも、これほど色鮮やかでかつ光に満ちた作品ばかりだったことは記憶にありません。
と言うわけで早速、目玉のルノワールから。出品全73点のうちルノワールは22点。質量ともにコレクションの中核です。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「シャクヤク」
1880年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
鮮やかさという観点からの一推しは「シャクヤク」。図版で見てもこの美しさ。しっとりと湿り気を帯びたような深みのある色遣い。赤いシャクヤクに白く青の混じるクロスの対比。誰もが見ても惹かれる作品ではないでしょうか。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「ヴェネツィア、総督宮」
1881年 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
クラコレのルノワールで見逃せないのが、こうした静物画に風景画。「ヴェネツィア、総督宮」などもモネを思わせるようなエメラルドブルーが目に飛び込んできます。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「劇場の桟敷席(音楽会にて)」
1880年 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
もちろんチラシ表紙を飾る「劇場の桟敷席(音楽会にて)」などの人物画も充実していますが、ともかく今回のルノワールはモチーフに明快、色に鮮烈な作品ばかり。
実は私、どこか靄のかかったような画家特有のタッチが苦手でしたが、クラコレのルノワールには素直に惹かれました。
さてルノワール以外にもいくつか私の思う見どころを。まずは計4点のシスレーから「籠のリンゴとブドウ」。風景画の巨匠シスレーに珍しい静物画です。
アルフレッド・シスレー「籠のリンゴとブドウ」
1880-81年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
これが思いがけないほど秀作です。銀色を帯びたクロスの上にリンゴやナイフ、また籠に入ったブドウなどを力強いタッチで表現。また注意したいのはクロスはもとより、下方のリンゴ2個が画面を超えて下、左方向に切れている。ようは空間が画面から拡大していることです。
その視点はまるでセザンヌです。そもそも上方から手前へと広がるような構図感も似ています。シスレー画とセザンヌ画との関係。実に興味深いものがありました。
ジャン=レオン・ジェローム「蛇使い」
1879年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
さてもう一人、本展で注目したい画家を。それがジャン=レオン・ジェローム。歴史画やオリエント地方を題材とした作品で一世を風靡した人物です。彼の作品は3点出ていましたが、中でも圧巻なのが「蛇使い」。裸の少年が蛇を身体に巻いて芸をする様子を描かれています。
ともかく青く透き通るような壁面、そして少年を始めとする人物の精緻でかつ写実的な描写が目を引きますが、実はこれは実景ではなく、写真などからジャロームの頭の中で再構築された理想風景なのです。
壁はトプカプ宮殿、床はモスク。よく見ると観客たちの姿、格好もバラバラ。まさにエキゾチック。強烈なオリエンタリズムです。
ジェロームは実際にエジプトなどを訪問。こうした主題をいくつも手がけたそうですが、その趣味はともかくも、今回の展示で最も印象に残った作品でした。
最後にクラーク・コレクションを象徴する一枚を。ジェロームと同じアカデミズムの画家からジェームズ・ティソの「菊」です。
ジェームズ・ティソ「菊」
1874-76年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
イギリスの上流階級を描いたというティソ。菊に埋もれるようにしてしゃがむ女性の姿。色とりどり、まるで匂い立つような菊の美しさ、そしてそのボリューム感と行ったら比類がありません。
ビビットな印象派「クラコレ」。絵画を見る純粋な喜びを味わえる展覧会でした。
「奇跡のクラーク・コレクション展公式図録」
会場内は賑わっていました。一号館の展覧会は会期末がかなり混雑します。ともかく早めがおすすめです。
5月26日まで開催されています。
「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」 三菱一号館美術館
会期:2月9日(土)~5月26日(日)
休館:毎週月曜。祝日の場合は18:00まで開館、翌火曜休館。但し5月20日(月)は開館。
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
料金:大人1500円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
*「アフター6割引」対象日:平日の木曜・金曜 時間:18時~20時 料金:1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」
2/9-5/26
三菱一号館美術館で開催中の「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」へ行ってきました。
ボストンから車で3時間、マサチューセッツ州ウィリアムズタウンに位置するクラーク美術館。アメリカの富豪、ロバート・スターリング・クラーク夫妻が一代で築いた印象派絵画。その良質なコレクション、通称「クラコレ」は意外にも国外でまとまって公開されたことは殆どありませんでした。
クロード・モネ「エトルタの断崖」
1885年 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
ここに世界巡回が実現。ミラノ、バルセロナ、ロンドン、モントリオールなどを経て東京へ。ルノワールを筆頭に、コロー、ミレー、ピサロ、モネなどのフランス絵画73点が一同に展観されています。
さてここまでは公式サイトなどでも発表済の情報。もちろん魅力的なコレクションであるのは言うまでもありませんが、今回の展示を簡単に表すなら以下の一言に集約されるのではないでしょうか。
「一コレクターの審美眼、趣味の方向性を強く伺える印象派コレクションの展覧会。」
ともかくその特徴とはビビットな色遣いです。数ある印象派コレクション展の中でも、これほど色鮮やかでかつ光に満ちた作品ばかりだったことは記憶にありません。
と言うわけで早速、目玉のルノワールから。出品全73点のうちルノワールは22点。質量ともにコレクションの中核です。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「シャクヤク」
1880年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
鮮やかさという観点からの一推しは「シャクヤク」。図版で見てもこの美しさ。しっとりと湿り気を帯びたような深みのある色遣い。赤いシャクヤクに白く青の混じるクロスの対比。誰もが見ても惹かれる作品ではないでしょうか。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「ヴェネツィア、総督宮」
1881年 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
クラコレのルノワールで見逃せないのが、こうした静物画に風景画。「ヴェネツィア、総督宮」などもモネを思わせるようなエメラルドブルーが目に飛び込んできます。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「劇場の桟敷席(音楽会にて)」
1880年 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
もちろんチラシ表紙を飾る「劇場の桟敷席(音楽会にて)」などの人物画も充実していますが、ともかく今回のルノワールはモチーフに明快、色に鮮烈な作品ばかり。
実は私、どこか靄のかかったような画家特有のタッチが苦手でしたが、クラコレのルノワールには素直に惹かれました。
さてルノワール以外にもいくつか私の思う見どころを。まずは計4点のシスレーから「籠のリンゴとブドウ」。風景画の巨匠シスレーに珍しい静物画です。
アルフレッド・シスレー「籠のリンゴとブドウ」
1880-81年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
これが思いがけないほど秀作です。銀色を帯びたクロスの上にリンゴやナイフ、また籠に入ったブドウなどを力強いタッチで表現。また注意したいのはクロスはもとより、下方のリンゴ2個が画面を超えて下、左方向に切れている。ようは空間が画面から拡大していることです。
その視点はまるでセザンヌです。そもそも上方から手前へと広がるような構図感も似ています。シスレー画とセザンヌ画との関係。実に興味深いものがありました。
ジャン=レオン・ジェローム「蛇使い」
1879年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
さてもう一人、本展で注目したい画家を。それがジャン=レオン・ジェローム。歴史画やオリエント地方を題材とした作品で一世を風靡した人物です。彼の作品は3点出ていましたが、中でも圧巻なのが「蛇使い」。裸の少年が蛇を身体に巻いて芸をする様子を描かれています。
ともかく青く透き通るような壁面、そして少年を始めとする人物の精緻でかつ写実的な描写が目を引きますが、実はこれは実景ではなく、写真などからジャロームの頭の中で再構築された理想風景なのです。
壁はトプカプ宮殿、床はモスク。よく見ると観客たちの姿、格好もバラバラ。まさにエキゾチック。強烈なオリエンタリズムです。
ジェロームは実際にエジプトなどを訪問。こうした主題をいくつも手がけたそうですが、その趣味はともかくも、今回の展示で最も印象に残った作品でした。
最後にクラーク・コレクションを象徴する一枚を。ジェロームと同じアカデミズムの画家からジェームズ・ティソの「菊」です。
ジェームズ・ティソ「菊」
1874-76年頃 油彩/カンヴァス クラーク美術館
Image Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA
イギリスの上流階級を描いたというティソ。菊に埋もれるようにしてしゃがむ女性の姿。色とりどり、まるで匂い立つような菊の美しさ、そしてそのボリューム感と行ったら比類がありません。
ビビットな印象派「クラコレ」。絵画を見る純粋な喜びを味わえる展覧会でした。
「奇跡のクラーク・コレクション展公式図録」
会場内は賑わっていました。一号館の展覧会は会期末がかなり混雑します。ともかく早めがおすすめです。
5月26日まで開催されています。
「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」 三菱一号館美術館
会期:2月9日(土)~5月26日(日)
休館:毎週月曜。祝日の場合は18:00まで開館、翌火曜休館。但し5月20日(月)は開館。
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
料金:大人1500円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
*「アフター6割引」対象日:平日の木曜・金曜 時間:18時~20時 料金:1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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「新井淳一の布 伝統と創生」 東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー
「新井淳一の布 伝統と創生」
1/12-3/24
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「新井淳一の布 伝統と創生」を見てきました。
織物の街、群馬県は桐生出身のテキスタイルプランナー、新井淳一(1932~)。60年に渡り糸の開発、また染織や織、加工を手がけ、新たな布の可能性を追求。三宅一生との恊働などファッションとの関わりでも大きな業績を残した。
こう言われても、率直なところ見る前は今ひとつピンと来るものがありませんでした。
結論から述べましょう。この布の魅力に降参。まさかこれほど布に多様な表情、そして「景色」が広がっているとは思いもよりません。
「万華鏡IV」ポリエステル、アルミニウム 1992年
冒頭はその新井が生み出した布のサンプルの展示。と言っても、単純に布がずらずらと並んでいるわけではありません。
何故ながら展示をパリを拠点に活動する建築家ユニットDGT(ドレル・ゴットメ・田根/アーキテクツ)の田根剛が担当。一つのストーリーを思わせるようなインスタレーションが展開されているのです。
この良さを言葉にするのが難しいのですが、布から広がるイメージ。それはもはや大自然の世界へと通じます。
「白虹」ナイロン、アルミニウム 1993年
新井は布はともかく多様。彼は国内外の素材メーカーと協力し、金属糸からプラスチックフィルム、またフェルトなどを、伝統的な染めや絞りの技術を用いて今に再生。色に素材に鮮やかでかつ言わば新奇な布を無数に制作しています。
「青」ウール、ナイロン、アルミニウム 1995年
青に白がせめぎあう布、その襞。さらにはざわめく布のうねり。そして艶。そこからは大海原や大山脈の景色が浮かんでくるではありませんか。
そしてインスタレーションと言えば続くギャラリー2の作品が圧巻。高さ5メートル超、全長15メートルにも及ぶ布がとぐろをまいた、その名も「マワリテメグル」です。
こちたはウォークイン方式。螺旋に沿って布の中心部へ。奥へと進んでいくと徐々に暗くなり、最奥部にはぽっかりと空洞が出現。布から透けて見える景色に布自体の光沢感の美しさ。その姿はまるで巨大な有機物のようです。そこに呑み込まれていくような感覚は神秘的ですらありました。
「プリーツI」ポリフェニレンサルファイド、アルミニウム 2007年
ラストは布の森。「琳派」や「稲妻」、それに「氷河」などと名付けられた、いずれも縦6メートルほどの布が天井から吊り下がります。そして突き当たりには「プラクシス」。巨大な壁一面に幾重にも連なる白い布が雲のように渦を巻いていました。
「新井淳一の布 伝統と創生」プロモーションムービー
会場の風景はyoutube動画の他、下記リンク先の同ギャラリーの公式サイトにも。百聞は一見にしかずです。是非ともご覧ください。
「新井淳一の布」展示風景@東京オペラシティアートギャラリー
布から開ける自然と宇宙への共感。世界を巡る布の旅。そのスケール感は圧倒的でした。
「新井淳一―布・万華鏡/森山明子/美学出版
3月24日までの開催です。ずばりおすすめします。
「新井淳一の布 伝統と創生」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:1月12日(土)~3月24日(日)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)及び2/10(日)。
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。最終入場は閉館30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(600)円、中・小生600(400)円。
*( )内は15名以上の団体料金。土・日・祝は小中学生無料。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
「新井淳一の布 伝統と創生」
1/12-3/24
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「新井淳一の布 伝統と創生」を見てきました。
織物の街、群馬県は桐生出身のテキスタイルプランナー、新井淳一(1932~)。60年に渡り糸の開発、また染織や織、加工を手がけ、新たな布の可能性を追求。三宅一生との恊働などファッションとの関わりでも大きな業績を残した。
こう言われても、率直なところ見る前は今ひとつピンと来るものがありませんでした。
結論から述べましょう。この布の魅力に降参。まさかこれほど布に多様な表情、そして「景色」が広がっているとは思いもよりません。
「万華鏡IV」ポリエステル、アルミニウム 1992年
冒頭はその新井が生み出した布のサンプルの展示。と言っても、単純に布がずらずらと並んでいるわけではありません。
何故ながら展示をパリを拠点に活動する建築家ユニットDGT(ドレル・ゴットメ・田根/アーキテクツ)の田根剛が担当。一つのストーリーを思わせるようなインスタレーションが展開されているのです。
この良さを言葉にするのが難しいのですが、布から広がるイメージ。それはもはや大自然の世界へと通じます。
「白虹」ナイロン、アルミニウム 1993年
新井は布はともかく多様。彼は国内外の素材メーカーと協力し、金属糸からプラスチックフィルム、またフェルトなどを、伝統的な染めや絞りの技術を用いて今に再生。色に素材に鮮やかでかつ言わば新奇な布を無数に制作しています。
「青」ウール、ナイロン、アルミニウム 1995年
青に白がせめぎあう布、その襞。さらにはざわめく布のうねり。そして艶。そこからは大海原や大山脈の景色が浮かんでくるではありませんか。
そしてインスタレーションと言えば続くギャラリー2の作品が圧巻。高さ5メートル超、全長15メートルにも及ぶ布がとぐろをまいた、その名も「マワリテメグル」です。
こちたはウォークイン方式。螺旋に沿って布の中心部へ。奥へと進んでいくと徐々に暗くなり、最奥部にはぽっかりと空洞が出現。布から透けて見える景色に布自体の光沢感の美しさ。その姿はまるで巨大な有機物のようです。そこに呑み込まれていくような感覚は神秘的ですらありました。
「プリーツI」ポリフェニレンサルファイド、アルミニウム 2007年
ラストは布の森。「琳派」や「稲妻」、それに「氷河」などと名付けられた、いずれも縦6メートルほどの布が天井から吊り下がります。そして突き当たりには「プラクシス」。巨大な壁一面に幾重にも連なる白い布が雲のように渦を巻いていました。
「新井淳一の布 伝統と創生」プロモーションムービー
会場の風景はyoutube動画の他、下記リンク先の同ギャラリーの公式サイトにも。百聞は一見にしかずです。是非ともご覧ください。
「新井淳一の布」展示風景@東京オペラシティアートギャラリー
布から開ける自然と宇宙への共感。世界を巡る布の旅。そのスケール感は圧倒的でした。
「新井淳一―布・万華鏡/森山明子/美学出版
3月24日までの開催です。ずばりおすすめします。
「新井淳一の布 伝統と創生」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:1月12日(土)~3月24日(日)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)及び2/10(日)。
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。最終入場は閉館30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(600)円、中・小生600(400)円。
*( )内は15名以上の団体料金。土・日・祝は小中学生無料。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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「若冲が来てくれました」 仙台市博物館
仙台市博物館
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」
3/1-5/6
仙台市博物館で開催中の「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」のプレスプレビューに参加しました。
カリフォルニア在住のプライス夫妻が長年に渡って蒐集してきた江戸絵画コレクション。2006年には「人生最後の帰国展」(プライスさん談)として、東京・京都・名古屋・九州での里帰り展が実現。延べ80万名超の来場者を記録し、言わば一大江戸絵画ブームを呼び起こしました。
そのプライスコレクションが今度は東北の地に。まさに東北へ「若冲が来てくれました」。ここ仙台を皮切りに岩手、福島へと巡回します。
さて「最後の帰国展」を何故にプライスさんが再び開催することを決断したのか。それは言うまでもなくかの東日本大震災にあります。
第3章「プライス動物園」展示室風景
震災の状況をカリフォルニアの自宅で見知ったプライス夫妻は、その甚大な被害に強い衝撃を受け、ともかくも自分たちに何が出来るのかを自問自答したそうです。
そして2週間後。瓦礫に埋まっていた梅の木から白い花が咲いたというニュースに感銘を受けます。過酷な状況でも生きる花の力強さ、そして美しさ。そうしたものが何か心の支えになるのではないか。省みて美しい草花や生き生きとした動物たちを描いた自らの江戸絵画コレクションも、被災地で展示することで何か一つの慰めになるのではないか。そう考えて本展監修の辻惟雄氏に連絡。そこから結果的に2年越しの展覧会が実現したというわけなのです。(作品は無償で貸与されました。)
酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」 展示期間:3/1~4/7(1~6月)、4/9~5/6(7~12月)
前置きが長くなりました。ともかくそうしたプライス夫妻の想いが詰まったコレクション展。展示では如何に江戸絵画を楽しく、また分かりやすく接してもらうかに主眼が置かれています。
早速、この7つの章立てから。出品は約100点です。(展示替えリスト)
第1章「ようこそプライスワールドへ」
第2章「はる・なつ・あき・ふゆ」
第3章「プライス動物園」
第4章「美人大好き」
第5章「お話きかせて」
第6章「若冲の広場」
第7章「生命のパラダイス」
何ともキャッチー、それでいて江戸絵画の魅力を凝縮したようなテーマではないでしょうか。
さらに親しみやすく作品に接してもらう試みも。それがキャプションとタイトルです。一例を挙げましょう。
酒井抱一「三十六歌仙図屏風」 展示期間:3/1~4/7
例えば我らが抱一の「三十六歌仙図屏風」、言うまでもなく古来からの和歌の名人たちを生き生きと表した作品ですが、子ども向け作品名として「三十六人のうたの名人」とも表記。しかも実は35名しか描かれていないことを紹介するパネルも分かりやすい!
「三十六人のうたの名人」解説パネル
また「仏涅槃図」は、ずばり「おしゃかさまがお亡くなりになりました」。日本美術はとかくタイトルが難しいこともありますが、本展に限っては問題なし。ともかく感覚的に楽しむことが出来ました。
葛蛇玉「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」 展示期間:3/1~4/7
さていつくかの作品をご紹介。既に江戸絵画では定評のあるプライスコレクション、見応えがあるのは言うまでもありませんが、例えば葛蛇玉の「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」、通称「雪の夜の白いウサギと黒いカラス」における墨の明暗表現は実に見事。決して知名度の高い絵師ではありませんが、ともかく若い頃から「好きなものを買っていった。」というプライスさんの趣味が伺える作品です。
長沢盧雪「白象黒牛図屏風」 全期間展示
また盧雪の作品が充実しているのも見逃せないポイント。巨大な白象と黒牛、そして小さな鴉に白い子犬と、大小、白黒を対比させた「白象黒牛図屏風」(白いゾウと黒いウシ)も、硬軟使い分ける盧雪の魅力を味わえる大作ではないでしょうか。
第6章「若冲の広場」展示室風景
それにお目当ての若冲も20点弱展示。プライスさんが最初にコレクションした「葡萄図」をはじめ、アクロバットな鶏、そして筋目描の鯉、さらには裏彩色に透き通る鶴、また可愛らしい伏見人形などなどと、多様な若冲作品が一堂に会しています。
そしてトリを飾るのが升目描きの「鳥獣花木図屏風」。何とガラスケースを取っ払った露出展示です。ちなみに本作の別名は「花も木も動物もみんな生きている」。ここにプライスさんの本展にかけるメッセージがあります。
と言うのもこの展覧会、この作品だけでも日本に出したいというプライスさんの願いからスタートしているのです。
伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」 全期間展示
震災後、毎日この屏風を拝むように眺めていたというプライスさん。夫妻は屏風の中に描かれた無数の動物たちが共存、ようは強い動物も弱い動物も一緒に花や草木とともにいる姿に、一種の楽園、仏画的平穏の世界を見て取っています。
だからこその「みんな生きている」というタイトル。生きていることの喜び。まさに生命讃歌です。もちろんこの作品については様々な議論もありますが、私自身、今回ほど「鳥獣花木図屏風」が美しく鮮やかに見えたことはありませんでした。
第6章「若冲の広場」展示室風景
さらに本展では「特別賛助出品」として三の丸尚蔵館、東京・奈良・京都の国立博物館、またMIHO MUSEUMからも計10点超の作品が出品。展示替えがあるため、一度に見られるわけではありませんが、3/26からは2008年に発見されて大いに話題を集めた若冲のクジラ、「象と鯨図屏風」(ゾウとクジラの呼び交わし)も登場します。
「若冲が来てくれました展」ミュージアムショップ
さて会場先には定番のミュージアムショップ。もちろん若冲などの江戸絵画モチーフの絵はがきやファイルなどが売られていますが、今回はいつもと一味も二味も違う工夫が。
「若冲が来てくれました展」オリジナルグッズ 日本酒セット
というのも東北三県に因んだオリジナルグッズを販売。うち中には津波によって倉庫を流されてしまった蔵本のお酒などもあります。こちらは改めて別エントリで紹介しますが、ともかく単なるコラボグッズとは一線を画したアイテムが登場しているのです。(グッズ売上の一部は被災地に寄付されます。)
「若冲が来てくれました展図録/日本経済新聞社」
そして最後にご紹介したいのが図録です。出品作の図版と解説が記されているのは言うまでもありませんが、本展にかけるプライス夫妻の意気込みの伝わるインタビュー記事なども充実。そして何よりも見開きには被災地の子どもたちの写真が。プライス夫妻が常に述べる「子どもたちにこそ見て欲しい。」そう、彼ら彼女らの未来が主役なのです。
「若冲が来てくれました展」図録見開き
図録は一般書籍として一部書店でも販売。入手可能です。是非ともお手にとってご覧ください。
最後に巡回の情報を改めて整理しておきます。
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」(開催情報)
【宮城】仙台市博物館 3月1日(金)~5月6日(月・振休)
【岩手】岩手県立美術館 5月18日(土)~7月15日(月・祝)
【福島】福島県立美術館 7月27日(土)~9月23日(月・祝)
記者会見時に悦子・プライスさんが「色々批判はあろうとも、優しさの押し売りで良い。」とまで仰った展覧会。そして「日本人のもの作りの精神は江戸絵画でも同じ。今こそ見つめ直して欲しい。」という力強いメッセージもいただきました。(メッセージは公式サイトから動画で聞くことも出来ます。)
「若冲が来てくれました」展記者会見時のプライス夫妻(右のお二人)
5月6日(月・祝)までの開催です。もちろんおすすめします。高校生以下は無料です!
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」 仙台市博物館
会期:3月1日(金)~5月6日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し3/11、4/29、5/6は開館。
時間:9:00~16:45(入館は16:15まで)
料金:一般・大学生800円、高校生以下無料。*10名以上の団体は100円引。*割引券
住所:仙台市青葉区川内26
交通:仙台駅西口バスプール9番乗場710~720系統のバス(718系統を除く)で約10分、博物館・国際センター前下車徒歩3分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」
3/1-5/6
仙台市博物館で開催中の「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」のプレスプレビューに参加しました。
カリフォルニア在住のプライス夫妻が長年に渡って蒐集してきた江戸絵画コレクション。2006年には「人生最後の帰国展」(プライスさん談)として、東京・京都・名古屋・九州での里帰り展が実現。延べ80万名超の来場者を記録し、言わば一大江戸絵画ブームを呼び起こしました。
そのプライスコレクションが今度は東北の地に。まさに東北へ「若冲が来てくれました」。ここ仙台を皮切りに岩手、福島へと巡回します。
さて「最後の帰国展」を何故にプライスさんが再び開催することを決断したのか。それは言うまでもなくかの東日本大震災にあります。
第3章「プライス動物園」展示室風景
震災の状況をカリフォルニアの自宅で見知ったプライス夫妻は、その甚大な被害に強い衝撃を受け、ともかくも自分たちに何が出来るのかを自問自答したそうです。
そして2週間後。瓦礫に埋まっていた梅の木から白い花が咲いたというニュースに感銘を受けます。過酷な状況でも生きる花の力強さ、そして美しさ。そうしたものが何か心の支えになるのではないか。省みて美しい草花や生き生きとした動物たちを描いた自らの江戸絵画コレクションも、被災地で展示することで何か一つの慰めになるのではないか。そう考えて本展監修の辻惟雄氏に連絡。そこから結果的に2年越しの展覧会が実現したというわけなのです。(作品は無償で貸与されました。)
酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」 展示期間:3/1~4/7(1~6月)、4/9~5/6(7~12月)
前置きが長くなりました。ともかくそうしたプライス夫妻の想いが詰まったコレクション展。展示では如何に江戸絵画を楽しく、また分かりやすく接してもらうかに主眼が置かれています。
早速、この7つの章立てから。出品は約100点です。(展示替えリスト)
第1章「ようこそプライスワールドへ」
第2章「はる・なつ・あき・ふゆ」
第3章「プライス動物園」
第4章「美人大好き」
第5章「お話きかせて」
第6章「若冲の広場」
第7章「生命のパラダイス」
何ともキャッチー、それでいて江戸絵画の魅力を凝縮したようなテーマではないでしょうか。
さらに親しみやすく作品に接してもらう試みも。それがキャプションとタイトルです。一例を挙げましょう。
酒井抱一「三十六歌仙図屏風」 展示期間:3/1~4/7
例えば我らが抱一の「三十六歌仙図屏風」、言うまでもなく古来からの和歌の名人たちを生き生きと表した作品ですが、子ども向け作品名として「三十六人のうたの名人」とも表記。しかも実は35名しか描かれていないことを紹介するパネルも分かりやすい!
「三十六人のうたの名人」解説パネル
また「仏涅槃図」は、ずばり「おしゃかさまがお亡くなりになりました」。日本美術はとかくタイトルが難しいこともありますが、本展に限っては問題なし。ともかく感覚的に楽しむことが出来ました。
葛蛇玉「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」 展示期間:3/1~4/7
さていつくかの作品をご紹介。既に江戸絵画では定評のあるプライスコレクション、見応えがあるのは言うまでもありませんが、例えば葛蛇玉の「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」、通称「雪の夜の白いウサギと黒いカラス」における墨の明暗表現は実に見事。決して知名度の高い絵師ではありませんが、ともかく若い頃から「好きなものを買っていった。」というプライスさんの趣味が伺える作品です。
長沢盧雪「白象黒牛図屏風」 全期間展示
また盧雪の作品が充実しているのも見逃せないポイント。巨大な白象と黒牛、そして小さな鴉に白い子犬と、大小、白黒を対比させた「白象黒牛図屏風」(白いゾウと黒いウシ)も、硬軟使い分ける盧雪の魅力を味わえる大作ではないでしょうか。
第6章「若冲の広場」展示室風景
それにお目当ての若冲も20点弱展示。プライスさんが最初にコレクションした「葡萄図」をはじめ、アクロバットな鶏、そして筋目描の鯉、さらには裏彩色に透き通る鶴、また可愛らしい伏見人形などなどと、多様な若冲作品が一堂に会しています。
そしてトリを飾るのが升目描きの「鳥獣花木図屏風」。何とガラスケースを取っ払った露出展示です。ちなみに本作の別名は「花も木も動物もみんな生きている」。ここにプライスさんの本展にかけるメッセージがあります。
と言うのもこの展覧会、この作品だけでも日本に出したいというプライスさんの願いからスタートしているのです。
伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」 全期間展示
震災後、毎日この屏風を拝むように眺めていたというプライスさん。夫妻は屏風の中に描かれた無数の動物たちが共存、ようは強い動物も弱い動物も一緒に花や草木とともにいる姿に、一種の楽園、仏画的平穏の世界を見て取っています。
だからこその「みんな生きている」というタイトル。生きていることの喜び。まさに生命讃歌です。もちろんこの作品については様々な議論もありますが、私自身、今回ほど「鳥獣花木図屏風」が美しく鮮やかに見えたことはありませんでした。
第6章「若冲の広場」展示室風景
さらに本展では「特別賛助出品」として三の丸尚蔵館、東京・奈良・京都の国立博物館、またMIHO MUSEUMからも計10点超の作品が出品。展示替えがあるため、一度に見られるわけではありませんが、3/26からは2008年に発見されて大いに話題を集めた若冲のクジラ、「象と鯨図屏風」(ゾウとクジラの呼び交わし)も登場します。
「若冲が来てくれました展」ミュージアムショップ
さて会場先には定番のミュージアムショップ。もちろん若冲などの江戸絵画モチーフの絵はがきやファイルなどが売られていますが、今回はいつもと一味も二味も違う工夫が。
「若冲が来てくれました展」オリジナルグッズ 日本酒セット
というのも東北三県に因んだオリジナルグッズを販売。うち中には津波によって倉庫を流されてしまった蔵本のお酒などもあります。こちらは改めて別エントリで紹介しますが、ともかく単なるコラボグッズとは一線を画したアイテムが登場しているのです。(グッズ売上の一部は被災地に寄付されます。)
「若冲が来てくれました展図録/日本経済新聞社」
そして最後にご紹介したいのが図録です。出品作の図版と解説が記されているのは言うまでもありませんが、本展にかけるプライス夫妻の意気込みの伝わるインタビュー記事なども充実。そして何よりも見開きには被災地の子どもたちの写真が。プライス夫妻が常に述べる「子どもたちにこそ見て欲しい。」そう、彼ら彼女らの未来が主役なのです。
「若冲が来てくれました展」図録見開き
図録は一般書籍として一部書店でも販売。入手可能です。是非ともお手にとってご覧ください。
最後に巡回の情報を改めて整理しておきます。
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」(開催情報)
【宮城】仙台市博物館 3月1日(金)~5月6日(月・振休)
【岩手】岩手県立美術館 5月18日(土)~7月15日(月・祝)
【福島】福島県立美術館 7月27日(土)~9月23日(月・祝)
記者会見時に悦子・プライスさんが「色々批判はあろうとも、優しさの押し売りで良い。」とまで仰った展覧会。そして「日本人のもの作りの精神は江戸絵画でも同じ。今こそ見つめ直して欲しい。」という力強いメッセージもいただきました。(メッセージは公式サイトから動画で聞くことも出来ます。)
「若冲が来てくれました」展記者会見時のプライス夫妻(右のお二人)
5月6日(月・祝)までの開催です。もちろんおすすめします。高校生以下は無料です!
「若冲が来てくれましたープライスコレクション 江戸絵画の美と生命」 仙台市博物館
会期:3月1日(金)~5月6日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し3/11、4/29、5/6は開館。
時間:9:00~16:45(入館は16:15まで)
料金:一般・大学生800円、高校生以下無料。*10名以上の団体は100円引。*割引券
住所:仙台市青葉区川内26
交通:仙台駅西口バスプール9番乗場710~720系統のバス(718系統を除く)で約10分、博物館・国際センター前下車徒歩3分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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3月の展覧会・ギャラリーetc
恒例のリストアップ企画です。3月に見たい展示を挙げてみました。
展覧会
・「二年後。自然と芸術、そしてレクイエム」 茨城県立近代美術館(~3/20)
・「新井淳一の布 伝統と創生」 東京オペラシティアートギャラリー(~3/24)
・「二川幸夫・建築写真の原点 日本の民家一九五五年」 パナソニック汐留ミュージアム(~3/24)
・「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」 埼玉県立近代美術館(~3/24)
・「狩野派以外も大賑わい」 板橋区立美術館(~3/24)
#講演会:「肉筆浮世絵のつくられた場」 日時:3/16(土)15時~ 講師:大久保純一(国立歴史民俗博物館教授)
#講演会:「江戸のやまと絵」 日時:3/23(土)15時~ 講師:榊原悟(岡崎市美術博物館館長) ともに聴講無料、先着100名。
・「VOCA展2013 現代美術の展望」 上野の森美術館(3/15~3/30)
#受賞作家トーク 日時:3/16(土)15時~ 出演:佐藤翠、柴田麻衣、平子雄一
#受賞作家トーク 日時:3/23(土)15時~ 出演:大凬のぶゆき、鈴木紗也香、吉田晋之介 ともに申込み不要。
・「歌舞伎 江戸の芝居小屋」 サントリー美術館(~3/31)
・「琳派から日本画へ」 山種美術館(~3/31)
#前期:2/9~3/3、後期:3/5~3/31
・「アーティスト・ファイル2013」 国立新美術館(~4/1)
#出品作家による各種ギャラリートークあり。
・「エドワード・スタイケン写真展 モダン・エイジの光と影1923-1937」 世田谷美術館(~4/7)
・「第16回 岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館(~4/7)
・「円山応挙展―江戸時代絵画 真の実力者」 愛知県美術館(~4/14)
・「博物館でお花見を」 東京国立博物館(3/19~4/14)
・「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」 Bunkamuraザ・ミュージアム(3/9~4/21)
・「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画」 府中市美術館(3/9~5/6)
#前期:3/9~4/7、後期:4/9~5/6
・「若冲が来てくれましたープライスコレクション」 仙台市博物館(3/1~5/6)
・「幕末・明治の千住の美術 琳派と高橋廣湖」 足立区立郷土博物館(3/23~5/6)
・「坂茂 建築の考え方と作り方」 水戸芸術館(3/2~5/12)
・「特別展覧会 狩野山楽・山雪」 京都国立博物館(3/30~5/12)
・「生誕120年 木村荘八展」 東京ステーションギャラリー(3/23~5/19)
・「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館(3/8~5/26)
#連続講演会:「すべて参加すればあなたもベーコン通!」→スケジュール(3/22、3/30、4/5、4/13) 講師:桝田倫広、保坂健二朗(本展企画者)
・「ラファエロ」 国立西洋美術館(3/2~6/2)
#各種講演会あり→スケジュール
・「カリフォルニア・デザイン 1930-1965」 国立新美術館(3/20~6/3)
・「Paris、パリ、巴里─日本人が描く 1900–1945」 ブリヂストン美術館(3/23~6/9)
・「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 原美術館(3/20~6/30)
ギャラリー
・「森本美絵 pH」 MISAKO & ROSEN(~3/3)
・「ここに、建築は、可能か」 ギャラリー間(~3/23)
・「金光男-apart-」 リクシルギャラリー(~3/27)
・「第7回 shiseido art egg 川村麻純」 資生堂ギャラリー(3/5~3/28)
・「友政麻理子 トレーニング|Training 」 TALION GALLERY(3/2~3/30)
・「和田真由子 火のための枠」 児玉画廊|東京(3/2~4/6)
・「小出ナオキ Read Me a Story, Daddy」 小山登美夫ギャラリー(3/2~4/6)
・「トリックス・アンド・ヴィジョンからもの派へ」 東京画廊(3/9~4/6)
・「文谷有佳里展」 Gallery Jin Projects(3/13~4/13)
・「巧術3.50 KO-JUTSU 3.50」@ラディウムーレントゲンヴェルケ(3/2~4/28)
間もなく春の展覧会シーズンということで、今月もまた目白押しですが、まず一にも二にも注目したいのは、東京国立近代美術館で開催される「フランシス・ベーコン展」です。
「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館(3/8~5/26)
昨年の記者発表会に参加して以来、常にどこか頭を離れないベーコンのイメージ。また展覧会に関連した講演会なども充実。何ともご丁寧に「初級・中級・上級編」と分かれています。
【連続講演会 すべて参加すればあなたもベーコン通!】
3/22(金)18:30~19:30 「ベーコンについて 初級」桝田倫広(東京国立近代美術館研究員、本展企画者)
3/30(土)14:00~15:30 「ベーコンについて 初級」保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員、本展企画者)
4/5(金) 18:30~19:30 「ベーコンについて 中級」桝田倫広
4/13(土)14:00~15:30 「ベーコンについて 上級」保坂健二朗
会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階)
*開場は開演30分前。申込不要、参加無料。(先着140名)
国内では知られざるベーコンにどっぷりと浸れるチャンスです。ここは大いに期待したいと思います。
さて先にも触れた春の展覧会と言えばやはり上野。国立西洋美術館でラファエロ展が始まりました。
「ラファエロ」@国立西洋美術館(3/2~6/2)
既に都美館ではグレコ展が開催中。さらに下旬からは東博でお馴染みのお花見企画「博物館でお花見を」も。また上野の森では「VOCA2013」もスタートします。言うまでもなく桜の時期の上野は大混雑必至です。ラファエロだけは混まないうち出かけたいものです。
仙台市博物館で宮城、岩手、福島の東北三巡回、「プライスコレクション 若冲が来てくれました」が始まりました。
「若冲が来てくれましたープライスコレクション」@仙台市博物館(3/1~5/6)
プライス夫妻が東日本大震災の被害に衝撃を受け、何か出来ないかと考えたことから実現した企画。作品の無償貸与、またグッズ売上なども義援金として寄付されるという震災の復興支援企画です。実はご縁あって昨日の内覧会にお邪魔してきました。早々にレポートをまとめます。
また番外編としては年度末恒例、3月23日の「六本木アートナイト」も。今年も軽く参加するつもりです。
「芸術新潮2013年3月号/森洋子のブリューゲル講義/新潮社」
*2010年の「ブリューゲル版画の世界」(Bunkamura)を監修された森先生によるブリューゲル特集。記事図版ともに充実。永久保存版です!
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
展覧会
・「二年後。自然と芸術、そしてレクイエム」 茨城県立近代美術館(~3/20)
・「新井淳一の布 伝統と創生」 東京オペラシティアートギャラリー(~3/24)
・「二川幸夫・建築写真の原点 日本の民家一九五五年」 パナソニック汐留ミュージアム(~3/24)
・「ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅」 埼玉県立近代美術館(~3/24)
・「狩野派以外も大賑わい」 板橋区立美術館(~3/24)
#講演会:「肉筆浮世絵のつくられた場」 日時:3/16(土)15時~ 講師:大久保純一(国立歴史民俗博物館教授)
#講演会:「江戸のやまと絵」 日時:3/23(土)15時~ 講師:榊原悟(岡崎市美術博物館館長) ともに聴講無料、先着100名。
・「VOCA展2013 現代美術の展望」 上野の森美術館(3/15~3/30)
#受賞作家トーク 日時:3/16(土)15時~ 出演:佐藤翠、柴田麻衣、平子雄一
#受賞作家トーク 日時:3/23(土)15時~ 出演:大凬のぶゆき、鈴木紗也香、吉田晋之介 ともに申込み不要。
・「歌舞伎 江戸の芝居小屋」 サントリー美術館(~3/31)
・「琳派から日本画へ」 山種美術館(~3/31)
#前期:2/9~3/3、後期:3/5~3/31
・「アーティスト・ファイル2013」 国立新美術館(~4/1)
#出品作家による各種ギャラリートークあり。
・「エドワード・スタイケン写真展 モダン・エイジの光と影1923-1937」 世田谷美術館(~4/7)
・「第16回 岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館(~4/7)
・「円山応挙展―江戸時代絵画 真の実力者」 愛知県美術館(~4/14)
・「博物館でお花見を」 東京国立博物館(3/19~4/14)
・「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」 Bunkamuraザ・ミュージアム(3/9~4/21)
・「春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画」 府中市美術館(3/9~5/6)
#前期:3/9~4/7、後期:4/9~5/6
・「若冲が来てくれましたープライスコレクション」 仙台市博物館(3/1~5/6)
・「幕末・明治の千住の美術 琳派と高橋廣湖」 足立区立郷土博物館(3/23~5/6)
・「坂茂 建築の考え方と作り方」 水戸芸術館(3/2~5/12)
・「特別展覧会 狩野山楽・山雪」 京都国立博物館(3/30~5/12)
・「生誕120年 木村荘八展」 東京ステーションギャラリー(3/23~5/19)
・「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館(3/8~5/26)
#連続講演会:「すべて参加すればあなたもベーコン通!」→スケジュール(3/22、3/30、4/5、4/13) 講師:桝田倫広、保坂健二朗(本展企画者)
・「ラファエロ」 国立西洋美術館(3/2~6/2)
#各種講演会あり→スケジュール
・「カリフォルニア・デザイン 1930-1965」 国立新美術館(3/20~6/3)
・「Paris、パリ、巴里─日本人が描く 1900–1945」 ブリヂストン美術館(3/23~6/9)
・「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 原美術館(3/20~6/30)
ギャラリー
・「森本美絵 pH」 MISAKO & ROSEN(~3/3)
・「ここに、建築は、可能か」 ギャラリー間(~3/23)
・「金光男-apart-」 リクシルギャラリー(~3/27)
・「第7回 shiseido art egg 川村麻純」 資生堂ギャラリー(3/5~3/28)
・「友政麻理子 トレーニング|Training 」 TALION GALLERY(3/2~3/30)
・「和田真由子 火のための枠」 児玉画廊|東京(3/2~4/6)
・「小出ナオキ Read Me a Story, Daddy」 小山登美夫ギャラリー(3/2~4/6)
・「トリックス・アンド・ヴィジョンからもの派へ」 東京画廊(3/9~4/6)
・「文谷有佳里展」 Gallery Jin Projects(3/13~4/13)
・「巧術3.50 KO-JUTSU 3.50」@ラディウムーレントゲンヴェルケ(3/2~4/28)
間もなく春の展覧会シーズンということで、今月もまた目白押しですが、まず一にも二にも注目したいのは、東京国立近代美術館で開催される「フランシス・ベーコン展」です。
「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館(3/8~5/26)
昨年の記者発表会に参加して以来、常にどこか頭を離れないベーコンのイメージ。また展覧会に関連した講演会なども充実。何ともご丁寧に「初級・中級・上級編」と分かれています。
【連続講演会 すべて参加すればあなたもベーコン通!】
3/22(金)18:30~19:30 「ベーコンについて 初級」桝田倫広(東京国立近代美術館研究員、本展企画者)
3/30(土)14:00~15:30 「ベーコンについて 初級」保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員、本展企画者)
4/5(金) 18:30~19:30 「ベーコンについて 中級」桝田倫広
4/13(土)14:00~15:30 「ベーコンについて 上級」保坂健二朗
会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階)
*開場は開演30分前。申込不要、参加無料。(先着140名)
国内では知られざるベーコンにどっぷりと浸れるチャンスです。ここは大いに期待したいと思います。
さて先にも触れた春の展覧会と言えばやはり上野。国立西洋美術館でラファエロ展が始まりました。
「ラファエロ」@国立西洋美術館(3/2~6/2)
既に都美館ではグレコ展が開催中。さらに下旬からは東博でお馴染みのお花見企画「博物館でお花見を」も。また上野の森では「VOCA2013」もスタートします。言うまでもなく桜の時期の上野は大混雑必至です。ラファエロだけは混まないうち出かけたいものです。
仙台市博物館で宮城、岩手、福島の東北三巡回、「プライスコレクション 若冲が来てくれました」が始まりました。
「若冲が来てくれましたープライスコレクション」@仙台市博物館(3/1~5/6)
プライス夫妻が東日本大震災の被害に衝撃を受け、何か出来ないかと考えたことから実現した企画。作品の無償貸与、またグッズ売上なども義援金として寄付されるという震災の復興支援企画です。実はご縁あって昨日の内覧会にお邪魔してきました。早々にレポートをまとめます。
また番外編としては年度末恒例、3月23日の「六本木アートナイト」も。今年も軽く参加するつもりです。
「芸術新潮2013年3月号/森洋子のブリューゲル講義/新潮社」
*2010年の「ブリューゲル版画の世界」(Bunkamura)を監修された森先生によるブリューゲル特集。記事図版ともに充実。永久保存版です!
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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