◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「偽物が出ないため、DNAを登録」って?

2009-08-02 10:04:33 | 気になる言葉、具体例
                            あ、マウスの偽物!
 7月19日の記事で挙げた変な日本語、「偽物が出ないため、DNAを登録」ですが、たまたまとても分かりやすい例を幾つかニュースで聞いたので、改めて説明します。その前に、「偽物が出ないため、DNAを登録」について、19日の記事をお読みになっていないかたのために説明しておきましょう。
 ブランド牛の話題で「偽物が出ないため、DNAを登録」というテロップが出たのですが、これだと、偽物が出ないのにDNAの登録なんかする必要があるのかという矛盾を感じますよね。有名ブランドに偽物は付き物ですから、本物と偽物の区別がつくようにしておかないと大変です。ある有名なブランド牛の産地では、牛を一頭ずつすべてDNA登録して厳重に管理しているということで、それなら、「偽物が出ないようにするため」もしくは「偽物と区別するため」と書かなければなりません。
 もっと言えば、DNA登録が抑止力となって偽物は出にくくなるかもしれませんが、完全に出ないようにするのは難しいでしょうから、「偽物と区別するため」のほうがより現実的です。また、簡潔に書く必要があるテロップということで考えてもやはりこれですね。
 さて、ニュースで聞いたのは「危機を繰り返さないために」と「土砂崩れを防ぐために」ですが、聞いた瞬間、これだよ! と思いました。「繰り返す」「防ぐ」は他動詞ですから、「危機を繰り返さない」「土砂崩れを防ぐ」という決意、そして、そのために○○する、というふうに続くわけですから、自然な流れですね。
 これに対して、「偽物が出ないため、DNAを登録」のほうは、「出る」が自動詞ですから、「偽物が出ない」は、ただ単にそういう状況であるという意味になります。決意なら「偽物を出さない」ですね。よって、「~ため」と続けても、偽物が出ないのですから、「特に何もしていない」と続くのなら分かりますが、DNA登録という対策を講じるなんて矛盾します。
 こんなこと、本来、説明なんか不要ですよね。でも、現に、テレビにはこんなのが出てくるのですから情けない。そういえば、テレビに出ている人たちは「出る」と「出す」を区別していませんね。「△△(テレビ番組や映画)に出させて(ださせて)いただいて」と言うでしょう、何を出すのでしょうか、顔? 手? △△に出るのだから「でさせて」じゃないですか? あるいは「△△に出していただいて」じゃないですか? ついには「偽物が出ない」と「偽物を出さない」の区別もつかなくなった?
コメント
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