映画「四畳半タイムマシンブルース」を観た。
タイムマシンもののスラップスティックといえば、筒井康隆の「笑うな」を真っ先に思い出す。1980年に初版が出版され、いまでは電子書籍にもなっている。内容は馬鹿馬鹿しいのだが、人間存在へのある種の皮肉になっているところに筒井康隆らしい味があった。
本作品は、冒頭の「私」によるオタッキーでペダンチックなモノローグに若干辟易しそうになったが、大学生たちが繰り広げる馬鹿騒ぎには筒井康隆に通じる皮肉を感じて、俄然面白くなった。特にタイムマシンが登場してからの一連の考察と検証は飛躍したり行き詰まったりで、なかなか愉快だった。
「馬骨野郎」という言葉には「私」の自虐的な諦観のようなものがある。全部が無意味だと切り捨ててしまいそうになるのを踏みとどまって、過去も現在も概ね肯定しているところがいい。名もなき人々の名もなき青春も、否定されるべきではないのだ。
筒井康隆ほどの世の中を穿つようなブラックな洞察はないが、時系列がきちんと整理された謎解きにはそれなりに感心した。特に河童の像の種明かしはケッサクだ。二枚目ぶっている男を三枚目に突き落とすのが、本作品のスラップスティックなのだろう。ウケる。