おはようございます。
アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
『財務3表一体理解法』(朝日新書)やドラッカーで有名な國貞 克則さん(有限会社 ボナ・ヴィータ・コーポレーション 代表取締役)からいただいた『ドラッカーが教えてくれる「マネジメントの本質」』(日経BP、1,980円)を読むことで、別の視座からアドラーが見えてきました。
書きたいことは國貞さんとパネル・ディスカッションを行いたいくらいあるのですが、ここではこの本から啓示を受けたアドラーとドラッカーの3つの共通点に留めることにしましょう。
1.「巨人の肩」に乗ることについて
アイザック・ニュートンが「自分の業績は過去の偉大な先人たちの業績があったからだ」と言った表現は、「昔から先人たちが積み重ねてきた学問の成果や技術などがあってこそ、現在の学問や技術がある、ということのたとえ」(コトバンク)としてよく使われています。
この表現はドラッカーだけでなくアドラーも使っています。
アドラーの出典は思い出せませんが、「フロイトの肩の上に乗った」という記述をアドラーの著書の中で読んだことがあります。
アドラーとドラッカーとは「巨人の肩」に乗って自分の理論を発展させた共通点があります。
2.洞察対象を個人からより広い共同体に広げていたこと
ドラッカーは自らを「経営学者」ではなく「社会生態学者」と名乗って、個人と組織だけでなく産業界、より広い社会に向けた発信をしています。
アドラーもまた、精神科医として個人治療から発展し、より広い教育分野、さらには「共同体感覚」を基調に宇宙的な規模にまで視界を広げています。
この2人の巨人を連携させることによって今後、組織に対する新たな発信ができそうな気がしてなりません。
3.目的・目標志向であること
アドラーとドラッカーには目的・目標志向である共通点があります。
アドラーは「目的論」(Teleology)の心理学ですし、ドラッカーもまた目的・目標の言葉を著書でよく使っているそうです。
ただし、翻訳の点で大きな違和感がある箇所があることを表明しておきます。
この本ではドラッカーの原書で”objectives”や”goals”といった言葉のうち”objectives”の出てくる箇所によって「目標」と訳されたり「目的」と訳されていることがあることに対し、國貞さんはあえて「目的・目標」とした、と151ページの注釈に加えていることです。
私の理解では”goals”は到達目標であり、”objectives”は数値などで具体的に示される目標です。
どちらにも「目的」とは違います。
「目的」は”purpose”です。複数形で示されるのが稀です。
このところを國貞さんにお教えいただきたいです。
最後に1つだけ批判的なことを書いてしまいましたが、この本はドラッカーが教えてくれているものを本質的な側面から、時に原著を参照しながら、研修にも使えるような平易さで書かれた類まれな本です。
多くの人たちに読まれることを願っています。
ご恵贈くださった國貞 克則さんに心から感謝申し上げます。
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