映画やテレビドラマの録音と言う仕事をしていました。 現場では役者さんと一緒に仕事をするので、色々な想い出があります。 私には心に残っている役者さんがいます。
■ 一人目は 今井健二 さんです。 私が新人の頃 「 ザ・ガードマン ( TBS ) 大映テレビ室 」 の撮影現場 ( スタジオセット ) で、私は ニ重に乗り ( ニ重 = セットでは天井がなくその高さに、板で細い幅の回り廊下みたいな足場の事 ) その上から竿の先に付けたマイクを差し出し収音していました。
照明の光をさけて ( マイクの影が壁などに映りこまない様に ) カメラの画角に入らない様に、マイクを突き出していましたが、どうしても、オフすぎて録音チーフから OK が出ません。 困っている時は照明さんも協力して少し照明を変えてくれたりするのですが、照明さんに変更を頼むことは、基本的にマイクマンの恥なんです。
しかし、どうにもならないので、なんとかお願いしようと思った、その時、新人が困っているのを察したからでしょうか、役者の 今井健二 さんが、ニ重を見上げて 「 もう少し大きい声で喋ろうか 」 とペーペーの私に言ってくれたのです。 録音チーフが 「 了解、それでお願いします 」 そんな訳でマイクの影問題は解決しました。 助かりました。
撮影のキャストのなかで 一番怖い ( 役の上ではね ) のは 今井健二 さん ( やくざ役や悪役で有名 ) です。 そんな人がまさか 優しい言葉 を言ってくれるなんて ‼ これをギャップ萌えと言うんですかね。 一変でファンになりました。 しかし、本当の所は 「 照明なんか弄ってたら時間が掛かる 」 と思われたのかも知れません。
でも私は今でもあの一言を忘れません。
■ そして、もうひとり、ロケの撮影現場に大遅刻した時の話です。 その日は現場に直行するため、録音機材を自宅に持ち帰っていました。 当時、私のアパートに電話は無く、会社からの連絡は、なんと電報でした 「 ロケゲンバデ ミンナマッテイル 」 とね。 遅刻だ ‼ えらい事になった。
飛び起きて撮影現場の日野市 ( 当時は造成中の新興住宅地でした ) に直行しました。 約 2 時間の大遅刻でした。 現場に着いて平謝りです。 すると主役の 左とん平 さんが 「 若い時、こんな失敗は誰にもあるよ、さ、仕事しよう 」 と、ピリピリしていた現場の雰囲気を和ませてくれました。 スタッフは 20 人ぐらいいたでしょうか。 1973 年に出した 「 とん平のヘイ・ユウ・ブルース 」 は丁度この頃です。
左とん平 さんは 2 年前に故人ななられました。 いつもニコニコしている姿が印象に残っています。 優しい人でした。
■ 【 過去ログ 】 うつみ宮土理 さんの事