見もの・読みもの日記

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心の凝りをほぐして/福田平八郎と日本画モダン(山種美術館)

2012-07-07 10:06:31 | 行ったもの(美術館・見仏)
山種美術館 特別展 生誕120年『福田平八郎と日本画モダン』(2012年5月26日~7月22日)

 6/26から後期となった会場に初訪問。すごく混んでいるのに驚いた。福田平八郎という名前には記憶がなたっかが、『筍』『芥子花』を見て、ああ、あの絵を描いた人か、と分かった。本展は、福田平八郎(1892-1974)だけでなく、小野竹喬、山口蓬春など、同時代に活躍した画家たちのモダンで洗練された作品を集めて展観する。「日本画モダン」は、同美術館顧問の山下裕二氏が考えた造語だという。

 確かに、日本画・日本美術を見ていると「モダン」と形容したくなる作品に出会うことがある。明るく、オシャレ。のびのび自由で、斬新な発想。理知的だけど、あまり思想的でない。「近代的」に置き換えると、そのニュアンスが消えてしまうのは、日本文化独特の事情を含んでいるような気もする。

 私は小中学生の頃から、わりと同時代の日本画を見る機会が多かった。当時(1970年代)は、もう少しテーマの重い作品が主流だったが、こういう、美しい色彩・斬新な構図が、直接、感覚に訴えてくるような作品も、ずいぶんあった気がする(すべて子どもの記憶だけど)。だから、この展覧会は、新しいような、懐かしいような、不思議な感じがした。

 代表作だという『漣』は前期展示で見られなかったが(どうやら私は『画家の眼差し、レンズの眼』展で同作品を見ているらしい…あまり記憶になかった)、『雨』が見られてよかった。黒い屋根瓦をクローズアップで描いた作品で、会場に行って『雨』というタイトルを見て、はじめて、整然とした瓦の列に、ポツポツと落ちかかる雨滴の跡に気づいた。

 福田が30代のはじめくらいに描いた『牡丹』は、まだ伝統的な東洋絵画の技法にのっとり、紅白の牡丹の株を偏執狂的な細密さで描いている。いつも不思議に思うのだが、画家って、洋の東西を問わず、若い頃は伝統的な技法をきっちり勉強し、老年に至ってから、驚くほど自由でみずみずしい(若々しい)作品を描き始める人が多い職業だと思う。

 前田青邨の『おぼこ』は、水面に集まったボラの幼魚を描いたもので、思わず、ふふっと笑いがもれてしまうような作品。ドラマチックな歴史画のイメージが強い青邨に、こんな愛らしい作品があったとは。山口蓬春も、これまで、あまり注目したことがない画家だったが、本展で見た『夏の印象』や『榻上の花』は一目で好きになった。

 肩の凝らない、というか、肩の凝りも心の凝りもほぐされる作品の多い展覧会である。この展覧会に出ているような作品が一枚でも、日常、目にできる範囲にあったら、どんなに幸せだろう。
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