○出光美術館 日本の美・発見VII『祭 MATSURI -遊楽・祭礼・名所』(2012年6月16日~7月22日)
17世紀初めに誕生した「近世初期風俗画」と呼ばれるジャンルから、特に祭礼や芸能を題材とする絵画を選び、その舞台となった「場」(社寺、景観)に注目して魅力を探る展覧会。
出光コレクションの近世初期風俗画には、大好きなものがたくさんある。描写が細密で、内容豊富なので、何度見ても飽きない。本当をいうと、こういう作品は、パソコンの画面で、隅から隅まで好き放題にいじり倒したい。冒頭の狩野宗秀筆『洛中名所図扇面貼付屏風』(桃山時代)は、いいなあ。人の姿が小さくて、「人の世離れ」した平和な時間がまったりと流れている。神戸市立博物館の『都の南蛮寺図』の一具。以前、東京美術倶楽部の記事にも書いたことがある。
『祇園祭祭礼図屏風』を初めて見たときは、祇園祭を全く知らなかったので、何もかも驚きだったが、いま見ると、現代に引き継がれている山鉾の姿に感慨を覚える。船鉾だーとか、浄妙山だーとか。母衣(ほろ)武者はこの時代だけの風俗だろうと思っていたが、まだ見たことのない花傘巡行(7/24)には登場するらしい。見たい! なお、さりげないパネル解説に、長刀鉾と船鉾の位置に注目すると、屏風絵の視点が、どの通りからどの方角を向いて描かれているか分かる、という図解があって、面白かった。
第2章では、京都の祇園祭と江戸の三社祭を見比べてみると、後発の江戸の祭が、文化の先進都市・京都を意識していたことが分かる。でも私は東京人なのに、祇園祭には何度か行ったことがあるが、三社祭は全く体験したことがないのだ。どの程度、古い風俗を残しているんだろう? 今度、調べてみよう。『江戸名所図屏風』(寛永期)は、人々の表情が活気にあふれた楽しい屏風。江戸博から直行だったので、日本橋はどこかな!?と、まず探してしまった。もちろん、ちゃんと描かれてました(右隻の端っこ)。
第3章の邸内遊楽図も見覚えがあったが、第4章の歌舞伎・浄瑠璃関係の屏風は、初見のものが多かった。延宝期(17世紀後半)の『浄瑠璃芝居看板絵屏風』は、金平浄瑠璃とよばれる、素朴で無骨な物語を絵にしたものらしく、絵の中では、あっけらかんと首が飛んだり、胴体が叩き斬られたりしている。元禄期の『歌舞伎図屏風』は、舞台上の整然とした様式美(右隻)と、ゴッタ返す舞台裏の様子(左隻)を対比的に描いていて面白かった。
ほかに陶磁器、能面、蒔絵の弁当箱や化粧道具、簪・笄などが展示されていて、描かれた非日常空間を、華やかに盛り立てている。柿右衛門の色絵狛犬(ペア)が可愛くて、カラフルな水玉模様が原宿系だと思った。
17世紀初めに誕生した「近世初期風俗画」と呼ばれるジャンルから、特に祭礼や芸能を題材とする絵画を選び、その舞台となった「場」(社寺、景観)に注目して魅力を探る展覧会。
出光コレクションの近世初期風俗画には、大好きなものがたくさんある。描写が細密で、内容豊富なので、何度見ても飽きない。本当をいうと、こういう作品は、パソコンの画面で、隅から隅まで好き放題にいじり倒したい。冒頭の狩野宗秀筆『洛中名所図扇面貼付屏風』(桃山時代)は、いいなあ。人の姿が小さくて、「人の世離れ」した平和な時間がまったりと流れている。神戸市立博物館の『都の南蛮寺図』の一具。以前、東京美術倶楽部の記事にも書いたことがある。
『祇園祭祭礼図屏風』を初めて見たときは、祇園祭を全く知らなかったので、何もかも驚きだったが、いま見ると、現代に引き継がれている山鉾の姿に感慨を覚える。船鉾だーとか、浄妙山だーとか。母衣(ほろ)武者はこの時代だけの風俗だろうと思っていたが、まだ見たことのない花傘巡行(7/24)には登場するらしい。見たい! なお、さりげないパネル解説に、長刀鉾と船鉾の位置に注目すると、屏風絵の視点が、どの通りからどの方角を向いて描かれているか分かる、という図解があって、面白かった。
第2章では、京都の祇園祭と江戸の三社祭を見比べてみると、後発の江戸の祭が、文化の先進都市・京都を意識していたことが分かる。でも私は東京人なのに、祇園祭には何度か行ったことがあるが、三社祭は全く体験したことがないのだ。どの程度、古い風俗を残しているんだろう? 今度、調べてみよう。『江戸名所図屏風』(寛永期)は、人々の表情が活気にあふれた楽しい屏風。江戸博から直行だったので、日本橋はどこかな!?と、まず探してしまった。もちろん、ちゃんと描かれてました(右隻の端っこ)。
第3章の邸内遊楽図も見覚えがあったが、第4章の歌舞伎・浄瑠璃関係の屏風は、初見のものが多かった。延宝期(17世紀後半)の『浄瑠璃芝居看板絵屏風』は、金平浄瑠璃とよばれる、素朴で無骨な物語を絵にしたものらしく、絵の中では、あっけらかんと首が飛んだり、胴体が叩き斬られたりしている。元禄期の『歌舞伎図屏風』は、舞台上の整然とした様式美(右隻)と、ゴッタ返す舞台裏の様子(左隻)を対比的に描いていて面白かった。
ほかに陶磁器、能面、蒔絵の弁当箱や化粧道具、簪・笄などが展示されていて、描かれた非日常空間を、華やかに盛り立てている。柿右衛門の色絵狛犬(ペア)が可愛くて、カラフルな水玉模様が原宿系だと思った。