■センチュリーミュージアム『日本の書相』(2012年4月9日~8月4日)
上質のコレクションと静かに向き合える空間として、かなり気に入っている同館に久しぶりに行ってきた。今回は、奈良から江戸まで、各時代にあらわれる、書の形式と個性を探る展覧会。冒頭の「香紙切」(麗花集断簡、伝小大君筆)にウットリして、しばらく動けなくなってしまった。小大君は伝承筆者にすぎないが、小さく、しかしのびやかな連綿の妙に、どことなく女性的な美しさが感じられる。見るの、初めてじゃないよなあ、と思ったが、これまで同館に足を運んだのは『祈りの書』と『絵画コレクション展』の2回しかないので、別の美術館で見た「香紙切」の記憶がよみがえったのかもしれない。「石山切」(伊勢集断簡、伝公任筆)も美しや。
私は、1年前に根津美術館で購入した『館蔵 古筆切』を、ずっと手元に置いて、ときどき眺めている。洗濯機の仕上がりを待つ間、ゴロゴロしながら眺めたり、無粋な話だが、トイレに持ち込んだりしている。おかげで、古人の筆跡に、だいぶ馴染んできた。定家とは似ても似つかぬ、独特な癖のある俊成の筆跡も見分けられるようになり、「日野切」を見て、ハッとした。「千載集」撰者自筆本の断簡である。「広沢切」も一目見て、あ、伏見天皇だ、と思った。このひとの筆跡は、人柄のよさがにじみ出ていて、どこか懐かしい感じがする。
それに比べると、本阿弥光悦や近衛信尹の書は、美術品としての上手さ・美しさが際立つ。ほかにも、足利尊氏、明智光秀、千利休など有名人の書跡あり。高三隆達の書が珍しかった。このひと、書道の上手でもあったのか。以上は先々週末の参観。
※参考:同館「コレクション」(→収蔵品データベース検索)
これを見ると、同館の最も基幹的なコレクションが「書跡」であることが分かる。「収蔵品データベース」には、1点1点、写真・釈文・詳しい解説が公開されていて、非常に参考になる。
■昭和女子大学光葉博物館 春の特別展『センチュリー文化財団寄贈コレクション展』(2012年5月14日~6月30日)
これは、今週末、最終日の参観。パンフレットやサイトの情報によれば、平成23年(2011)3月、財団法人センチュリー文化財団から寄贈された漆工、金工、金銅仏など81件と、1,000点を超す世界各地・各時代のコインのコレクションの寄贈を受け、概括的な調査と登録作業を進めてきた。目録完成を記念して開かれたのがこの展覧会であるという。まあ、裏事情がいろいろあるのかもしれないな…と思わないでもなかった。
展示品は、古今東西のコイン(李氏朝鮮の貨幣をあまり見たことがないので珍しかった)を除いては、漆工(蒔絵)がいちばん多かったように思う。面白かったのは、朝鮮半島の銅板経。新羅(8世紀、聖徳王二年の年記あり)のものと高麗(14世紀)のものがあった。どちらも1枚ずつに楽を奏する飛天の絵入り。調べたら、銅板経は日本でも少数だが出土しているようだ(※「銅板経最中」という銘菓があることも知ってしまった)。高麗(13世紀)のものは、十二支立像の浮き彫り入り。もう1種類の十二支銅板は、動きが大きく新しそうな気がしたけど、新羅(年代不詳)ものなのか。
ポスターになっていた木彫船首像(日本、17世紀)は、等身大よりやや大きいくらいの西洋男性立像である。撫でつけて横にカールをつけた髪型(カツラ?)。首にはスカーフを巻き、襟を立てたコート。帽子を抱え、半ズボンに短靴。イメージとしては、モーツアルトとかベートーベンの肖像を思い出す。あまり自信はないが、17世紀というより18世紀の服装ではないかと思うのだが、どうだろう? これ、何か根拠があって、日本で作られたと見られているのだろうか。漂着したオランダ船の船尾に取りつけられていたエラスムス像が、重要文化財になっているのは聞いたことがあるけれど…。
上質のコレクションと静かに向き合える空間として、かなり気に入っている同館に久しぶりに行ってきた。今回は、奈良から江戸まで、各時代にあらわれる、書の形式と個性を探る展覧会。冒頭の「香紙切」(麗花集断簡、伝小大君筆)にウットリして、しばらく動けなくなってしまった。小大君は伝承筆者にすぎないが、小さく、しかしのびやかな連綿の妙に、どことなく女性的な美しさが感じられる。見るの、初めてじゃないよなあ、と思ったが、これまで同館に足を運んだのは『祈りの書』と『絵画コレクション展』の2回しかないので、別の美術館で見た「香紙切」の記憶がよみがえったのかもしれない。「石山切」(伊勢集断簡、伝公任筆)も美しや。
私は、1年前に根津美術館で購入した『館蔵 古筆切』を、ずっと手元に置いて、ときどき眺めている。洗濯機の仕上がりを待つ間、ゴロゴロしながら眺めたり、無粋な話だが、トイレに持ち込んだりしている。おかげで、古人の筆跡に、だいぶ馴染んできた。定家とは似ても似つかぬ、独特な癖のある俊成の筆跡も見分けられるようになり、「日野切」を見て、ハッとした。「千載集」撰者自筆本の断簡である。「広沢切」も一目見て、あ、伏見天皇だ、と思った。このひとの筆跡は、人柄のよさがにじみ出ていて、どこか懐かしい感じがする。
それに比べると、本阿弥光悦や近衛信尹の書は、美術品としての上手さ・美しさが際立つ。ほかにも、足利尊氏、明智光秀、千利休など有名人の書跡あり。高三隆達の書が珍しかった。このひと、書道の上手でもあったのか。以上は先々週末の参観。
※参考:同館「コレクション」(→収蔵品データベース検索)
これを見ると、同館の最も基幹的なコレクションが「書跡」であることが分かる。「収蔵品データベース」には、1点1点、写真・釈文・詳しい解説が公開されていて、非常に参考になる。
■昭和女子大学光葉博物館 春の特別展『センチュリー文化財団寄贈コレクション展』(2012年5月14日~6月30日)
これは、今週末、最終日の参観。パンフレットやサイトの情報によれば、平成23年(2011)3月、財団法人センチュリー文化財団から寄贈された漆工、金工、金銅仏など81件と、1,000点を超す世界各地・各時代のコインのコレクションの寄贈を受け、概括的な調査と登録作業を進めてきた。目録完成を記念して開かれたのがこの展覧会であるという。まあ、裏事情がいろいろあるのかもしれないな…と思わないでもなかった。
展示品は、古今東西のコイン(李氏朝鮮の貨幣をあまり見たことがないので珍しかった)を除いては、漆工(蒔絵)がいちばん多かったように思う。面白かったのは、朝鮮半島の銅板経。新羅(8世紀、聖徳王二年の年記あり)のものと高麗(14世紀)のものがあった。どちらも1枚ずつに楽を奏する飛天の絵入り。調べたら、銅板経は日本でも少数だが出土しているようだ(※「銅板経最中」という銘菓があることも知ってしまった)。高麗(13世紀)のものは、十二支立像の浮き彫り入り。もう1種類の十二支銅板は、動きが大きく新しそうな気がしたけど、新羅(年代不詳)ものなのか。
ポスターになっていた木彫船首像(日本、17世紀)は、等身大よりやや大きいくらいの西洋男性立像である。撫でつけて横にカールをつけた髪型(カツラ?)。首にはスカーフを巻き、襟を立てたコート。帽子を抱え、半ズボンに短靴。イメージとしては、モーツアルトとかベートーベンの肖像を思い出す。あまり自信はないが、17世紀というより18世紀の服装ではないかと思うのだが、どうだろう? これ、何か根拠があって、日本で作られたと見られているのだろうか。漂着したオランダ船の船尾に取りつけられていたエラスムス像が、重要文化財になっているのは聞いたことがあるけれど…。