見もの・読みもの日記

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日本絵画の多様性/ミネアポリス美術館(サントリー美術館)

2021-04-23 23:53:17 | 行ったもの(美術館・見仏)

サントリー美術館 開館60周年記念展『ミネアポリス美術館 日本絵画の名品』(2021年4月14日~6月27日)

 ミネソタ州ミネアポリスに設立されたミネアポリス美術館(Minneapolis Institute of Art、通称Mia)の日本美術コレクションは、約2500点の浮世絵をはじめ、質・量ともに国際的にも高い評価を得ているという。その中から全92点を選び、中世から近代にいたる日本絵画の優品を紹介する。アメリカの美術館事情には疎いので、ミネアポリスがどこにあるのかも知らなかったが、展示作品の中には、これは以前、確実に見たことがあると思うものがいくつかあった。展示替えがあるのは浮世絵だけなので、早めに見てきた。会場は全作品、写真撮影OK。

 構成はおおまかに時代順で、はじめは室町~桃山時代の水墨画。自由な小鳥たちがめちゃくちゃ可愛い『花鳥図屏風』があって、これはもしや雪村?と近寄ったら、ほんとに雪村だったので嬉しかった。生きのいい鯉が『琴高仙人図』の鯉と同じ顔をしている。雪村はもう1点『山水図』も来ていて、これは2017年の芸大美術館『雪村』展で見たものらしい。

 ほか、芸愛、海北友松、雲谷等顔も。なかなか国内でも見られない充実ぶりである。山田道安『龍虎図屏風』の虎は、顔はかわいいのに逆三角形のマッチョ体形だった。

 続くセクションは、片側に狩野派、向い側にやまと絵を配した対比の構成がオシャレ。伝・狩野山楽『四季耕作図襖』は、もと大覚寺正寝殿の襖絵であり、狩野山雪『群仙図襖絵』は(妙心寺)天祥院客殿の襖絵であるという説明に唸る。どうして流出したのかなあ…。群仙図は、空と地面の区別もつかない、一面の金の雲か霞の中に、スタンプを押したように仙人たちが浮かんでいる。探幽の『瀟湘八景図屛風』(八曲一隻)は、余白を大胆に使って、空間の広さを演出する。住吉如慶の『きりぎりす絵巻』は、よく見ると登場人物が虫の顔をしている(よく見ないと分からない)。

 琳派。伝・宗達の伊勢物語図色紙『布引の滝』は、狩衣姿の四人の貴公子が瀧を眺めている、ひねりのない構成だが、青・緑・茶の寒色でまとめた色彩が美しい。同じく伝・宗達の墨画『童子図』は、ざんばら髪で座り込んだ童子がちょっと怖かった。

 階段下の第2展示室は「奇想」の画家たち。若冲、熊斐、渡辺崋山などもあったが、度肝を抜かれたのは蕭白の『群鶴図屛風』(六曲一双)、これは見に来てよかった。力でねじふせているように見えて、間違いなく高い芸術性を宿している。ネイサン・チェンのスケートみたいだ、という意外な連想をしてしまった。

 後半は、浮世絵、南画、そして近代へ。浮世絵は、どれも状態がすばらしくよいことに感心した。私は南画がおもしろくて、1点だけ『山水画帖』という作品が出ていた高芙蓉(1722-1784、儒学者・篆刻家)という名前を初めて覚えた。明清の繊細で清新な山水画を思わせる画風である。与謝蕪村の『虎渓三笑図』に「ぎこちなさ」を堪能し、谷文晁の『松島図』は何を描いても巧いので笑ってしまった。浦上春琴の『春秋山水図屛風』(六曲一双)はとても好き。繊細でのびのびした筆の運びは、やはり本物を間近に見ないと味わえないと思う。どこか既視感があったのは、2016年、千葉市美術館の『浦上玉堂と春琴・秋琴』展で見ているらしい。私は、春琴のほうが、玉堂より好きかもしれない。

 最後に青木年雄の『鍾馗鬼共之図』、鈴木松年、池田蕉園など、めずらしい画家の作品も見ることができて大満足。しかしこれだけの、時代も流派もバラエティ豊かな日本絵画コレクション、どのくらいの人数のスタッフが収集・研究・管理にかかわっているのだろう。気になる。

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