苔むす針葉樹林や神秘的な池を訪ねてみた。 今回は贅沢に2,237mの高地まで一気に運んでくれる100人乗りのピラタスロープウェイを利用した。
歩けば1時間半は掛かるという標高差466mを、たったの7分で景色を楽しむ間もなく連れて行ってくれる文明の利器である。 今日10月29日(土)は、雲一つない秋晴れであり、坪庭を散策される人達や私達のように山歩きに来た人で乗客は、ほぼ一杯であった。
山頂駅の駅舎を出ると目の前に広大な溶岩台地が見えた。 この溶岩大地一帯を坪庭と言い、のんびり周遊散策路を歩いても1時間ほどで駅舎に戻れる。
坪庭の展望台に立つと北には蓼科山(2,530m)と北横岳(2,480m)、南には縞枯山(2,403m)の帯状の縞模様とその更に後方に南八ヶ岳の主峰群が霞んで見え、南西方向には茅野市街が望め、その後方には中央アルプスの雪をかぶった稜線が青空の中にクッキリと見えた。
今回の山行は1泊2日。 週間天気予報で初日の好天は予想していたので、360度の展望が利く北横岳、三ッ岳(2,360m)を歩く計画をし、坪庭周遊路の途中から指導板に導かれながら北横岳方面へと分岐した。
一旦下って、横岳の山腹を右方向に横切りながら徐々に高度を上げる。 登山道は針葉樹林の中であり、時折樹間が開けると坪庭が低く、箱庭のように見える。 そんな樹間の登山道を40分ほど登ったら三ッ岳への分岐点に出た。 そこからは西へ緩やかに登り、北横岳ヒュッテにて大休止とした。
雲一つないスカイブルーの空、さんさんと降り注ぐ陽光を充分に浴びた。 最高の登山日和である。
後で聞いたが、北横岳ヒュッテはコーヒーがとても美味しいと有名らしい。 私達の仲間にもコーヒー好きの人がいたので、是非飲めば良かったと残念な事をしてしまった。
ヒュッテから北横岳までは、砂礫の道をわずかに登り、急に視界が開け着いたと思いきや山頂は南峰と北峰の2峰からなっており、どちらの山頂からも見事な山岳展望が得られた。
北方の蓼科山、南方の南八ヶ岳が望め、遠くに目をやれば中央アルプス、槍穂高連峰、浅間山等の美景が得られ、それをつまみに昼食とした。
山頂からの山岳風景を充分味わい、腹ごしらえも終了し三ッ岳に向かった。 往路を北横岳ヒュッテから三ッ岳分岐まで戻り、そのまま東へ進む。
そこからは、今迄の登山路の様子が一変し大きな岩がゴツゴツとした歩きにくい路面が続き、1峰から最高峰の2峰そして3峰へと距離的には短いのだけれど、緊張感とエネルギーを消耗する区間であった。 三ッ岳は大きな岩をケルンのように積み上げた山である。
3峰を過ぎると徐々に進路を南に変え、雨池山との鞍部に向かって一気に高度を落とす。
樹林帯の中は北八ヶ岳らしく苔むしており倒木等滑り易く、下りにも神経を集中したので意外と疲れた。 雨池山の立ち枯れた樹林の中を進み十字路の雨池峠に出た。 峠から縞枯山荘までは5分である。3時半到着。
初日とは言え、三ッ岳のスリルと緊張感で皆の顔に疲れが見えた。 着替えた後、談話室の炬燵に当たりながらビールで乾杯。飲み過ぎの人もいた。
山荘は大概夕方ころから発電機の音が聞こえてくるのだが、ここ縞枯山荘はソーラー発電のため夜は本当に静かであった。 でも発電量が少ないのか食堂とトイレに明かりがあるのみで、通路にはほんの小さな明かりでした。談話室はランプであり山小屋の雰囲気満点。
夕食後は、テラスに大きな天体望遠鏡を出し、談話室で御一緒した星の先生に沢山の星を教えて頂きました。 聞いた時は「へ~ッあれがアンドロメダ星雲か?」と分かりましたが一寸目を離すともう分かりませんでした。 でも「これが天の川ですよ」と聞いた時は「エッこれが天の川か」と久し振りに感動しました。 それと、こんなに沢山の星が有るのに、あれは何星、これは何星と教えてくれる先生にも驚きました。
しんしんと冷えた静かなテラスで空を見上げ、こんなに沢山の星を見たのは久し振りでした。 でも寒かった。