山歩きと言うと景色の良い稜線歩きを想像される方が多いと思いますが、今回はひと味もふた味も違った魅力を求めて、黒部峡谷の流れに沿って狭い岩壁をたどるルートを選びました。
晴れていても、幾つかの滝や沢を通過しますので、天気予報で当日の天候を注意しました。 と言うのもルートが狭い渓谷沿いで、悪天候となっても逃げ場がないのです。
雨はすぐ側壁からの滝に変わり、沢筋からの鉄砲水も発生するため天候判断は絶対に重要です。
扇沢を出る時は地面が濡れていたけど、天気は晴れの予報であり決行した。 黒四ダムでは曇りであったが、徐々に回復。
ダムを一気に下り、木橋を渡って黒部川の左岸に取り付く。
陽光が渓谷内を差込み、辺りの紅葉が素晴らしく足取りが弾んだ。
そんな事で、内蔵助谷出合まで予定通りの時間で順調に進み、行く先のルートを見ながら自分の中で徐々に緊張感の高まるのを感じた。
棒ノ木平付近は広葉樹の中を歩く、ホッとする所で対岸にはひと筋の白線となって流れ落ちる新越ノ滝が望めた。
水の青さと周りの紅葉、その中にひと筋の滝、額に入れて持ち帰りたい程の素晴らしい風景でした。
黒部別山谷出合付近には例年雪が多く、今年もビックリするほどの大きな雪渓が見られた。
その雪が水平歩道を崩壊し丸太で作られた梯子や橋で岩壁を高巻き、ここでしか味わう事のない緊張感で体中に普段使わない力が入るのを感じました。
岩壁にえぐられた人一人が通過するだけの狭い水平歩道、自分の動作一つ一つに必要以上の神経を使い、慎重な行動が要求されます。
他のパーティーとのすれ違いには恐怖を感じる事さえあります。
別山谷を過ぎ、狭い岩壁の水平歩道を進むと白く泡立つ激流と、深く青い瀞が美しい白竜峡に入る。ここで12時を経過しており焦りを感じた。
白竜峡を過ぎると徐々に水平道と渓谷の高度差が大きくなり、岩壁に付けられたワイヤーから手を離すこと無く、またスリップやつまずきにも細心の注意を払った。
樹林帯に入り、しばらく進んだら、わずかな広場のある十字峡に着いた。
黒部渓谷の唯一の広場である。 到着13時10分昼食
十字峡の吊橋から剣沢と棒小屋沢の合流する十字を確認する。
吊橋の先の、谷は深くなり険しさを増した。岩壁を削って作られた水平歩道の渓谷側は垂直に切り立っているが、その厳しい所に育つ木々の紅葉も素晴らしく何度も足を止めた。
半月峡通過14時08分。ワイヤーにつかまりながら写真を撮った。