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今回の群馬訪問で最後に紹介するのは「碓氷(うすい)峠鉄道文化むら」だ。ついに、錆びついた自分の鉄を磨くため?鉄ちゃんの聖地でもあるので、まあ以前にも来たことはあるものの、敬意を表して帰路に就く前に訪問しようと決めていた。
長野新幹線が開通し、信越本線の横川・軽井沢間は1997年には廃止が決定された。旧松井田町(現・安中市)は、横川駅構内の運転区の施設を地域活性化に役立てようと、地域住民や周辺の自治体などとも協議を重ね、この鉄道文化むらを整備することとなった。
碓氷峠で活躍した鉄道車両や資料を展示するほか、JR線直結という利点を活かし、国鉄時代の車両や機関車を展示する一大テーマパークとなった。動力車・車両・貨車など現在40数両を保有。施設は安中市が所有、指定管理者として一般財団法人・碓氷峠交流記念財団が運営している。
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資料館朝一番の入場。夏休み期間ではあるが施設内はガラガラ。ちょっと張り切って、駐車場で開館時間になるのを待っていた自分が恥ずかしくなる。以前は混んでいた記憶がある。でもその分、短い時間ではあったが、ゆったりと十分に観覧することができた。
旧運転区の事務所を改装した資料館には、信越本線最大の難所・碓氷峠との闘いの記録がパネルで展示されている。勾配66.7‰(パーミル=1000分の1、1000メートルで66.7メートル昇降する勾配)に挑む鉄道マンの労苦や輸入機関車、日本初の幹鉄路での電化、アプト式(敷設したラックレールに動力車に設置した歯車をかみ合わせて勾配を上る方式)の峠越え専用のED40電気機関車の開発、峠のシェルパ・EF63電気機関車の開発・導入に至るまで、急勾配克服と時短を図るための歴史がここにある。
一方、屋外には貴重な車両が静態保存されているとともに、運輸区車庫を活用した鉄道展示館にはEF63の展示や運転を体験できるシミュレーター、何と動態保存されたEF63そのものを運転できる体験コース(400メートル)なども備えている。(有料の、学科・実技講習を受講する必要あり。)
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めちゃくちゃ興味深い場所であるが、どうしてもわくわく感が湧いてこない。自分にはあまりにもマニアックすぎるからか?そうでもないとは思うのだが、入口ゲート前には遊園地のような乗り物が並び、園内にはミニSLや「あぷとくん」という園内周回するファミリー向けのミニ列車が運行されて人気となっている。
ただ、奥の車両展示スペースには、各地から集められた貴重な車両が展示されているものの、こちらの客入りはガラガラ。展示車両の部品は心無いマニアにより盗難されているというし、車両そのものは劣化も激しく、補修・整備に要する費用が急増している状況にあって、運営する財団では一般市民からの寄付や協力を募っているそうだ。
コロナ感染症の影響もあるのだろうが、鉄道文化むらの滞在者数は2019年56万人だったものが37万人台と落ち込んでいる(資料:安中市道の駅基本構想検討基礎資料集、入園者数とのカウントの方法が違う?)ようだが、この重厚でマニアックな資料や施設環境と、一般入園者を呼び込むためのファミリー向け遊園地化がどうしてもミスマッチに思えてならない。
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展示資料の保存環境、一貫性、地域との密着感は先に紹介した「くりでんミュージアム」の方に強く魅力を感じる。子どもが鉄道という乗り物に親しめるという点では、立地は厳しいものの糸魚川の「ジオパル」をお勧めする。個人的な意見ではあるがー。
もちろん、鉄道文化むらの取り組みを否定するものではない。なにせ貴重な資料の数々は間違いなく鉄道資料館としては最高峰であり、歴史的な土地、首都圏からもアクセスが良く、後背地には軽井沢という一大観光地も控えている。滞在者数の記事にもあるように隣接地に「道の駅」設置などの新たな構想もあるようだ。
中山道・碓氷峠をベースに、先に紹介した富岡製糸場や甘楽町小幡、地元の坂本宿の歴史、次回紹介するめがね橋などの鉄道遺産の数々、そして信越本線横川駅とともに140年の歴史を持つ「峠の釜めし・おぎのや」などとの連携によって、さらなる魅力を引き出してもらいたい。(これまでも「碓氷峠鉄道文化むら」と「おぎのや」はたびたび周年事業などでコラボしている。おぎのやの前向きで積極的な経営は、常に峰の高みを目指している(おぎのや4代目は、故・高見沢みねじ氏))
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