眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

吊り橋交差点

2020-10-23 10:50:00 | 夢追い
 信号機よりもまだ高いところに細い吊り橋がかかっていて、僕らはそこに跨がって交差点を見下ろしていた。交通調査の仕事だ。
 最初は見ているだけだったが、誰かがハンカチを落としたりしたら叫んでしまう。しつこい勧誘につきまとわれている人を見ると口を出してしまう。おかげで僕らは目立つ存在だった。たすきを巻いたおかしな政治家みたいなのがやってきて、文句を言い出した。

「下りなさい! 危ないじゃないか!」
「うるせーな!」そういう仕事なんだよ。
 ずっと平気だったのに、地上のある一点を見た途端に恐怖心があふれてきた。
(高いところはだめだったんだ)
 震えている。それが伝わって吊り橋も揺れ出した。

「真ん中から下りられるかな?」
 吊り橋を端まで渡りきる自信がなかった。徐々に震えが大きくなり、もう一歩も動けそうにない。
「落ち着いて! まずは深呼吸しよう」
 隣の先輩が前向きな言葉をかけて励ましてくれる。
 その時、交差点にあおり族がやってきた。

「何やってんだ!」
 からかうような目がいくつもこちらを見上げている。
「仕事だー!」
 先輩が叫んだ。
「お前も言ってやれ」
 そうだ。恐怖に打ち勝つには怒りの熱が必要だ。
「こういう仕事なんだよ!」

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【折句】夏空散歩 和歌、短歌、いかがでしょうか

2020-10-23 05:58:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
お歌などもうたくさんだ手を引いて
夏に冷たい白浜の水

(折句「おもてなし」短歌)



箱庭に夏の課題をみつめずに
滑れはあとがきまで音速

(折句「ハナミズキ」短歌)



お留守番もぬけの殻の底流に
夏が伸び行く詩情階段

(折句「おもてなし」短歌)



ハルをつれ夏空散歩道遥か
頭上には箒星の軌跡

(折句「ハナミズキ」短歌)




春は行き夏は続いた三月ほど
過ぎてみえない君らしき秋

(折句「ハナミズキ」短歌)

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ポプラの詩(ポエトリー・ポメラ)

2020-10-23 05:33:00 | 忘れものがかり
詩人さん、私を打て
打ち始めれば生まれるものがある
私たちはそういう関係だ

不安と不安定から道はなる

今日が逃げ切ってしまう前に
言葉を口実にして
私を打て

寝たらおしまいだ
寝たら消えちまう

詩人さん、私を打て
ためらいの向こうには
晴れ間がみえる

触れて離れての繰り返し
それが私たちの関係

「そんなの虚しいだけだよ」

「いいえ。君の詩は麦茶なの。
国中のコンビニに流通して、
街街を流れて行く。
人人を潤して行ける」

「そんなキャッチーなものかね」

「ポップでなきゃ生きられないのよ」

「とけすぎてわからない飲み物になった。
冷やしたいだけで薄めたいわけじゃなかったのに」

「君が早く飲まないから」

「ゆっくりじゃないと意味がないよ」

「氷がとけてもう秋になるわ」

詩人さん、私を打て
1、2、3、
その先で終わってしまうことを
恐れないで

打ち始めれば奏でられる
台本にいない君を
偶然が運んでくれるから

寝たらおしまいだ
寝たらさよならだ

詩人さん、私を打て
考えるよりも速く
君の思う先に行くために

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業務日誌「ヤモリ」

2020-10-23 00:38:00 | 幻日記
「さっき食堂の隅にヤモリが出ましてね」
「ヤモリ? それでどう対処しました?」
「……」
「まさかそのまま放置したのでは」
「ヤモリと言っても本当にヤモリかどうか。まるで動かなかったし、影のようでもあったし」
「いやいやいや」

チャカチャンチャンチャン♪

「いやずるいよ。ヤモリが出たのでしょう?」
「ヤモリに似ていたかも」
「言いましたよね、ヤモリが出たって。事実をねじ曲げるのはなしでしょう」
「事実というか主観ですから」

チャカチャンチャンチャン♪

「主観といういうのは信用が置けません。特に私の業務上のは」
「それで撃退もしなかった。見逃したのですね」

チャカチャンチャンチャン♪

「そうです。確信がなかったからです」
「確信ね」
「撃退するかわりと言っては何ですが」
「ん?」

チャカチャンチャンチャン♪

「ヤモリの似顔絵を描いてきました」
「暇か」
「これが私の見たヤモリです」
「これはわしじゃないか!」

チャカチャンチャンチャン♪

「まさかそんなことが」
「そろそろ森へ帰る時がきたようじゃ」
「店長、おつかれさまでした!」
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