あるところでは、ふーんと思い、大変感心させられました。もしも自分だったら、それと同じことができただろうか。そのようなことを思わずにはいられませんでした。またあるところでは、ははーんと思わされるところがあり、大変勉強になりました。もしも自分が同じような環境に置かれたとして、その時に実際に自分ができることを考えたら、何か気の遠くなるような思いがして、胸の奥がわさわさとすることがわかりました。なのでしばし手を止めて、お茶を飲みました。また、あるところからは、何か辻褄が合わないように思われて、今までに感じたことも全部うそだと思われました。
それ以上先へ読み進めても無意味でした。本を閉じて自分を見つめると、風が自分に向かって吹きつけたので、その時は秋を感じることができました。いったいこれがどうして課題図書だったのだろう……。
「ちゃんと与えてくれないとちゃんと読めないよ!」
本を持ってソムリエに抗議しました。
「いい本だよ。もっと腰を据えて読んでごらん」
まるで僕の読みが足りないように言うのでした。
「きつねばっかり出てくるじゃない」
「そうですよ」
「きつねしか出ないじゃないか!」
「そういう本です」
「つままれてばかりで筋が通らない!」
「きつねはそういうもんです」
僕は人生の機微に触れたかった。読書を通して成長するきっかけをつかみたかった。出会いがあり、別れがあり、はじまりがあり……。
「これははみ出し本じゃないか!」
「ふふふ」
ソムリエは不敵な笑みを浮かべていました。
「デタラメじゃないか!」
「そうとも。お前みたいなはみ出し者には、はみ出し本で十分だ!」
「やっぱりそうか!」
(見くびられていた)
古い課題図書を置いて、僕は落ち葉の上を歩き始めました。
今度は、自分の足で歩き回って探そう!