眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

【短歌】闇夜の忘れ物

2020-10-29 20:35:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
澄み切った空が一層曇らせる蛍祭りに君はいないの

落ち延びたフードコートの片隅にみえた柱を寄る辺と思う

メッセージ性のみえない一日の手にあまりある言葉のパズル

夜のない21時に札を待つモスバーガーのナイトソングス

「お客さん終わりましたよ」闇夜から突き刺す君の懐中電灯

駒台にあふれる夢を置いたままみえた私の最終地点

「まもなく」が空疎に夜をかきまわす蛍の光カオスバージョン

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5Gトレイン

2020-10-29 06:23:00 | 夢追い
 減速してホームに停止する。その時、電車は現在にGをかけるが、体はまだ後ろに引っ張られて過去にしがみつこうとしていた。僅かな乗客を入れ替えて電車は動き出す。迷いのない電車は未来にGをかけようとするが、僕はもう少し現在に執着しシートに腰を沈めていた。抵抗は儚い。生身の肉体はGに吸収され同化し電車と一体となる。短く逆らい、多くを委ねて、運ばれて行く。

 僕はGと関わり夢をみる。そこが最も時空を超えやすいスペースだったから。ドコロッシャン♪ 雷は一雨の予感。今夜は出かけなくちゃな。400ポイントが0になってしまう。ポイントはスキルと交換できるとか。同時に複数の鬼を持てるし、感情を薄めそれぞれの鬼に割り当てることができる。それにより演技の幅が広がるのだ。
 躍動する電車がロックなGをかけて、乗客を煽る。僕はポイントに執着しながら縦乗りで踊る。ミラーボールに化けた吊革が羞恥心を溶かす。(何度でもここにいるよ)車窓から刺さるネオン。小部屋の中のバンジージャンプ。

「まもなく終点……」
 アンコールを待たず終点へ向かう。すべてのGの終わり。
 足音が動き出す。ドアが開く。同調が加速する。息を吹きながら、電車はすべての乗客を吐き出す。
 終着のGに逆らって僕は夢にしがみついていた。(ここで降りたら再び戻れることはないだろう)たどり着いたとしても、終わらない旅に惹かれるのだ。雷、ポイント、鬼、スキル、演技……。課題はたくさんあるぞ。

「お客さん終点ですよ」床を叩くような足音。
「お客さんが終点ですよ」
「そんなことあるか!」
 はっとして目を開けた。
 そこに想像していた制服はなかった。
 劇場の観客はみんな猫だった。
 ということは僕もか……。
 そうか。生まれ変わったのか。
 

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マイ・ケース

2020-10-29 00:08:00 | 自分探しの迷子
 幾度も母はバスのように通り過ぎた。呼び止めるにはまだ僕の声は小さすぎた。手をつないだことはあっても、切り離された記憶に上書きされてしまう。母であったものが多すぎて、母であったものを思い出すことができない。昨日の母をたずねてもほとんど意味のないことだ。母は一定のとこころに留まってはいない。既にそこは駐車場か何かに変わっていることだろう。

 無数のヌーのように父は私の前を通り過ぎました。私の言葉は未熟なためか、一日として理解されることはありませんでした。微笑みをくれた父は誰もいませんでした。私は辛うじて捉えた父の輪郭を後ろから踏みつけてあげることがありました。
「そこだ。いやそこじゃない」「もっと踏んでくれ。いやもう降りてくれ」矛盾する声は父であったり組み合わさった岩であったりしました。

 昨日の職場へと歩いて行くのは自分を知るためだ。そこにはいつも僕の居場所はない。いつだって昨日の母は今日の母ではない。だから、一日一日を僕は生きていかなくちゃいけない。頼ったり、振り返ったり、そんな必要はないだろう。一日の終わりに僕は一つ詩を書く。それは人間の誇りだ。

「こんにちは」トーンに差をつけないように私は言葉を作ることができます。昨日の父は今日は牛に変わっているし、今目の前の駐車場に座っている猫が、明日は私に変わっていないと言い切ることはできないのです。それは母でも兄でも同じことです。
 昨日の履歴にはもう意味がなく、私を記憶できる者がいないことは潔く普通のことなのです。今日新しく出会う者が父になり、友になり、敵になり、妹になる。それは向こうから見ても同じこと。今日が終わるまでに私は一つ詩を書くでしょう。それが人間の誇りなのです。

 昨日の友は今日は岩だ。母は鹿で弟は機関車になった。俺だけがそれを知っていても意味はない。俺の中に執着するようなものは何もない。だって、そうじゃないか。俺を築く要素が日々コロコロと変わるのだ。俺が俺であることなどあるものか。後腐れのない俺でいよう。一日の終わりに俺は詩を書く。それは何かの名残に違いない。推敲はしない。それは俺の趣味じゃない。今日の俺は一つの職を手にしている。
 誰かに託すこともなく明日は手放さなければならないが、明日の俺はまた別の波に乗ることになる。

 定着を拒むシールドがわしの魂にとりついていたのじゃ。防御力の高い盾を構えていたところ、謎の圧力を受けて回転しておる。それはもはや動物図鑑にすぎず、対象年齢は3才という。次世代テレビのブースではお好み焼きのソースに上書きが始まっており、鉄板の上に裏返ってみれば先ほどまでの寂しさはうそのように、人々は渋谷の交差点からあふれ出していく様でした。

 10月と硝子細工の手ほどきにも似て、私は着せ替えられていくばかりでした。誰だって私をつなぎ止めておくことができなかったのは、何も望まぬ私の横顔のせいではなかったのです。落葉に乗って滑り急ぐ猫のように、時は僕の前を通り過ぎていった。その中に母がいて友がいて、兄がいて先生がいた。一緒に私が含まれていたことが、唯一の救いかもしれない。

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