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「おらおらでひとりいぐも」 沖田修一監督 ✗ ☆
若竹千佐子原作の芥川賞受賞小説を沖田監督の脚本で映画化しました。
夫の周造に早くに先立たれ75歳で一人暮らしの桃子さん(田中裕子)は毎日「どうせ起きてもやることなんかないよ。」という「どうせ」(六角精児)のささやきを振り切って布団から這い出すといつものように目玉焼きを焼いて朝食を食べ、通院もしくは図書館へ通います。気がつけば夕食です。時折ぼーっと考え事をしていると桃子さんの心に住む「さみしさたち」(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)がなんだかんだと故郷を飛び出した若かった頃(蒼井優)のことや周造(東出昌大)との思い出を振り返らせるのでした。そしてそんな寂しさにめげず、明日も桃子さんは好奇心旺盛に生きていくのです。
原作を先に読んでいましたが、沖田監督の演出はお見事としか言うことはありません。心の中の3人の自然な会話と動きがまさに映画ならでは、です。冒頭でちゃぶ台でお茶をすすっている桃子さんの目の前で襖が開くと二人の子どもと若かった頃の桃子さんと周造がにぎやかにじゃれあっている場面となるなど、ふすまが開くと時間がワープする演出も不自然さがなく、原作とは別の次元の面白い作品となっています。(☆)
地球46億年の歴史が桃子さんの人生ときちんとつながっているラストは感動的でした。
タバコは、昔の場面で食堂が煙でムンムンしていたり、周造が喫煙者だったり、あまりのも時代を反映しすぎでした。(✗)本当に必要な演出でしたか?