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大前研一 日本の論点2016~17 |
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プレジデント社 |
ガス主任技術者試験の試験科目「基礎理論」で学習内容に、「可燃性気体の燃焼範囲」というのがある。都市ガスの主原料であるメタンは、下限界約5%~上限界約15%、つまり燃焼範囲は10%、空気の中に5~15%混合し、さらに着火源があると、燃焼する。燃焼速度の速いものを爆発という。つまり爆発する。
もう一つの燃料、プロパンは、約2%~約10%、燃焼範囲は約8%、プロパンの方が少し小さいが、下限界が低い。そしてプロパンはメタンと違って空気より重いため、拡散しにくい。そんなところもあって、プロパンの方が扱いにくいガスだ。
そして、この当たりで、一緒に学習するのは「水素」。水素の燃焼範囲は、約4%~約75%。やたらと燃焼範囲が広い。福島原発の爆発も水素だった。原子炉の燃料棒を覆っているジルコニウムが高温の水と反応して水素ができ、水素が空気と混合して、爆発が起こった。また、水素は金属を悪くする、金属を溶接した際に水素が集積すると、応力の高い個所で割れに至ることがある。これを「水素脆性(すいそぜいせい)」という。
政府の日本の成長戦略で、もうじき水素社会が来ると言っているが、けっこう危険だなあ、と思っていた。水素はまだ、インフラができていないのである。しかし、水素社会に掉さすのはいかがか、と思いあんまり言い出せないでいた。
そんなところに、さもありなんという文章が見つかった。写真の「日本の原点2016~17」という大前研一氏が書いた本だ。確か氏はこの本を毎年書いてるような気がした。この本の9章に「成長戦略の中核水素ステーションは危険すぎる、爆発が起きた時に、とんでもない規模の被害が出るおそれ」と目次があって、水素の特徴が書かれている。氏は、著名な経営コンサルタントだが、もとは原子力の技術者だ。危険物の扱いはよく知っている。
氏の言いたいところは、水素社会を否定はしないが、水素をインフラとして扱うためには、じっくりと水素をコントロールする技術を育てていくべき、今はまだ時期尚早、それを克服していくのが技術である。と言ってる。まったく同感だ。ようやく自分と同じ考えの人と出会った気がする。