今回の国体ではハードル選手のサポートというのが大きな業務でした。400mHに成年選手が出場するのでそこに付きました。
レース前日、「身体が重い」というのをかなり口にしていました。ここ3年の国体では前日に身体がかなり動いてハードルインターバルが詰まってしまうということが多く、今までにはない事だと感じていました。どちらかというと楽観的に物事を捉えるタイプの選手なのでこれまではそこをフォローするような関わり方をしていました。「ダメ」というと気持ちがマイナスの方向に進むので。実際にハードルを跳んでみるとハードルインターバルが13歩で届きません。これまでは余裕で届いていた部分ですがこの日は全く。最後の1歩が大きくなってしまい身体が浮きません。最悪を想定してインターバル14歩で1度練習をして終わり。これ以上練習をしても意味がないだろうということで打ち切りました。「いつもは試合前に身体が軽くて上手くいかないのだから明日は軽くなる」と繰り返し話して安心させました。
レース当日は動きが戻っていました。元々バネがある走りをするタイプです。伸びやかに走ります。性格が走りに現れている感じですね。この日は13歩で余裕がありました。これなら問題なく走れるだろうという感じがありました。ここ一番での強さに期待したいと思っていました。実際のレースは前半から積極的に飛ばしました。かなり速かったですね。冷静に見ていて力んで強引に飛ばしている走りでした。バックストレートで完全にトップに立ちます。歩数を切り替える6台目で抜き足を引っかけて少しバランスを崩しました。それでも何とか持ちこたえラストの直線に入ってきたときにはダントツでした。しかし、9台目を越えた時点で明らかに動きが鈍りました。普段なら余裕で15歩でいけるところがなんと16歩。大幅減速をしてハードルを越えたためそこからスピードが出ません。前半の走りで力を使い切っているという感じでした。それでもトップだったのですがあっという間に後続に抜かれてしまい組の4着となってしまいました。タイムも51秒台。不完全燃焼のままレースを終えてしまいました。本人もかなり悔しかったと思います。本当残念でした。
4年前国体で入賞したときには前半を14歩で走っていました。逆足の踏切が上手くなくタイムロスをしていましたが、200mから300mでスムーズに追い込んでいきラスト勝負ができるというレース展開でした。さらに上のレベルを目指すということで昨年から13歩へ変更。このパターンにしてからラストの減速が大きくなりました。年中練習を見るわけではありませんが、ここ最近は200mから300mの走りが微妙でした。本人もこの部分には不安を持っていました。身長もありストライドも広いですから13歩で走るのに問題はありません。しかし、いつの間にか「武器」となる部分を失っていたのかもしれません。私の400mHのタイムよりは成年選手の方が断然上です。立場的にひじょうに難しい部分があります。客観的に見ていてのアドバイスが中心になります。持っているものはかなりのモノで、世界大会が狙える水準の力があると思います。もう少し関わっておいた方が良かったのかもしれないと思いました。成年選手とはいえ「未知数」のレベルに挑戦しようとしているのは同じです。ーチとしての関わり方の難しさを改めて感じました。
悔しい気持ちはあったでしょうが、このまま終わらせるのは嫌だと強く思いました。「気持ちを切り替えて400mで戦おう」と話し、400mHの事に関しては考えないようにしました。まだレースは終わっていませんから「ダメだったこと」に関して振り返る必要はありません。次に向けて気持ちを持っていかなければいけないのです。コーチとして信頼されているかは分かりませんが、私にできるのは気持ちが切れないようにやっていくことですから。
一日おいて400mの予選。アップ時の走りはかなり良かったと思います。本人は「ハードルがないから楽しい」と言っていました。気持ちは切り替えてくれていました。実際のレースでは外側にランキング上位者がいたのでそれを見ながらレースを進めるようにアドバイス。400mHのように無理して前半飛ばすと後半の減速が大きくなりますからこの日のレースはとにかく冷静に。良い感じで走れてラスト50mまでは2着。着順で決勝に進めるかというところで内側からいきなり1人上がってきてラスト10mでかわされて3着…。心臓の鼓動が半端なく激しくなりました。この4年間関わってきましたからいつの間にかかなりの感情移入をしています。他の組の3着以下のタイムが上がらないように「競るな」と言いながら見守っているしかできません。最後の組が終わって何とか決勝に残った時には涙が出ました。本当に嬉しかったですね。決勝では8位となりましたが400mHの失敗から良く立て直してきたのではないかと思います。
400mHでの悔しさは我々の想像を越えていたと思います。この経験は競技に対する姿勢を変えるかもしれません。この選手がもっと貪欲に上を目指すことができたら間違いなく日本代表になるレベルです。性格的にガツガツしていないのが良さですが、もうワンランク上がるためにはここかなと思います。がむしゃらになることが出来ればきっと強くなります。これから先、どうするのかは分かりませんが出来れば競技を続けてもらいたいと強く願います。
この選手と関わりながら多くの事を学ばせてもらいました。トップ選手の動きを見ながらやりとりをするチャンスというのはそれほど多くありません。感謝したいと思います。
レース前日、「身体が重い」というのをかなり口にしていました。ここ3年の国体では前日に身体がかなり動いてハードルインターバルが詰まってしまうということが多く、今までにはない事だと感じていました。どちらかというと楽観的に物事を捉えるタイプの選手なのでこれまではそこをフォローするような関わり方をしていました。「ダメ」というと気持ちがマイナスの方向に進むので。実際にハードルを跳んでみるとハードルインターバルが13歩で届きません。これまでは余裕で届いていた部分ですがこの日は全く。最後の1歩が大きくなってしまい身体が浮きません。最悪を想定してインターバル14歩で1度練習をして終わり。これ以上練習をしても意味がないだろうということで打ち切りました。「いつもは試合前に身体が軽くて上手くいかないのだから明日は軽くなる」と繰り返し話して安心させました。
レース当日は動きが戻っていました。元々バネがある走りをするタイプです。伸びやかに走ります。性格が走りに現れている感じですね。この日は13歩で余裕がありました。これなら問題なく走れるだろうという感じがありました。ここ一番での強さに期待したいと思っていました。実際のレースは前半から積極的に飛ばしました。かなり速かったですね。冷静に見ていて力んで強引に飛ばしている走りでした。バックストレートで完全にトップに立ちます。歩数を切り替える6台目で抜き足を引っかけて少しバランスを崩しました。それでも何とか持ちこたえラストの直線に入ってきたときにはダントツでした。しかし、9台目を越えた時点で明らかに動きが鈍りました。普段なら余裕で15歩でいけるところがなんと16歩。大幅減速をしてハードルを越えたためそこからスピードが出ません。前半の走りで力を使い切っているという感じでした。それでもトップだったのですがあっという間に後続に抜かれてしまい組の4着となってしまいました。タイムも51秒台。不完全燃焼のままレースを終えてしまいました。本人もかなり悔しかったと思います。本当残念でした。
4年前国体で入賞したときには前半を14歩で走っていました。逆足の踏切が上手くなくタイムロスをしていましたが、200mから300mでスムーズに追い込んでいきラスト勝負ができるというレース展開でした。さらに上のレベルを目指すということで昨年から13歩へ変更。このパターンにしてからラストの減速が大きくなりました。年中練習を見るわけではありませんが、ここ最近は200mから300mの走りが微妙でした。本人もこの部分には不安を持っていました。身長もありストライドも広いですから13歩で走るのに問題はありません。しかし、いつの間にか「武器」となる部分を失っていたのかもしれません。私の400mHのタイムよりは成年選手の方が断然上です。立場的にひじょうに難しい部分があります。客観的に見ていてのアドバイスが中心になります。持っているものはかなりのモノで、世界大会が狙える水準の力があると思います。もう少し関わっておいた方が良かったのかもしれないと思いました。成年選手とはいえ「未知数」のレベルに挑戦しようとしているのは同じです。ーチとしての関わり方の難しさを改めて感じました。
悔しい気持ちはあったでしょうが、このまま終わらせるのは嫌だと強く思いました。「気持ちを切り替えて400mで戦おう」と話し、400mHの事に関しては考えないようにしました。まだレースは終わっていませんから「ダメだったこと」に関して振り返る必要はありません。次に向けて気持ちを持っていかなければいけないのです。コーチとして信頼されているかは分かりませんが、私にできるのは気持ちが切れないようにやっていくことですから。
一日おいて400mの予選。アップ時の走りはかなり良かったと思います。本人は「ハードルがないから楽しい」と言っていました。気持ちは切り替えてくれていました。実際のレースでは外側にランキング上位者がいたのでそれを見ながらレースを進めるようにアドバイス。400mHのように無理して前半飛ばすと後半の減速が大きくなりますからこの日のレースはとにかく冷静に。良い感じで走れてラスト50mまでは2着。着順で決勝に進めるかというところで内側からいきなり1人上がってきてラスト10mでかわされて3着…。心臓の鼓動が半端なく激しくなりました。この4年間関わってきましたからいつの間にかかなりの感情移入をしています。他の組の3着以下のタイムが上がらないように「競るな」と言いながら見守っているしかできません。最後の組が終わって何とか決勝に残った時には涙が出ました。本当に嬉しかったですね。決勝では8位となりましたが400mHの失敗から良く立て直してきたのではないかと思います。
400mHでの悔しさは我々の想像を越えていたと思います。この経験は競技に対する姿勢を変えるかもしれません。この選手がもっと貪欲に上を目指すことができたら間違いなく日本代表になるレベルです。性格的にガツガツしていないのが良さですが、もうワンランク上がるためにはここかなと思います。がむしゃらになることが出来ればきっと強くなります。これから先、どうするのかは分かりませんが出来れば競技を続けてもらいたいと強く願います。
この選手と関わりながら多くの事を学ばせてもらいました。トップ選手の動きを見ながらやりとりをするチャンスというのはそれほど多くありません。感謝したいと思います。