照る日曇る日第1253回
西暦2000年からフリーフリーのふりーライター稼業を恐る恐る開始した私が、畏友かつ同級生の山口選手の手引きで、生まれて初めて手掛けた実用書です。
1部が「結婚」、2部が「ビジネス」、3部が「学校」、4部が「地域活動」、5部が「お祝い事」、6部が「葬儀・法要」という部立てになっていて、まことに盛沢山なスピーチ、挨拶内容になっていますが、およそ20年ぶりに書斎の奥から出てきたこの本をいまざっと読んで見ると、なんとその大半が私の手になるものでした。
じつは当時張り切ってバンバン書き飛ばしたものの、「主婦の友」の編集担当者が山口選手に、「その内容があまりにも特殊かつ超個人的で汎用性に欠ける」と、のたもうたというので、全部没になったと思いこんでいたのですが、あにはからんや、なんとなんとそのまま世に出ていたではあーりませんか。
慣れない、つまりやったこともない挨拶やらスピーチですから、ここに出てくる名前も内容も、その殆どが家族や友人や親戚の実例が、生々しくあるいは超観念的に書きつづられており、こんなサンプルを読んでも誰も参考にしようがなさそうですが、実用書というよりも連作私小説のようなけったいな風合いの、もちろん絶版書になっております。
山口選手が起草した「はじめに」を読むと、「本書を参考にして、通りいっぺんのスピーチではなく、あなただけの、心を打つ挨拶をしましょう!」などと書いてありますが、つまり本来は普通の挨拶から大きく脱線した私の迷文をなんとか没にせず、(しっかりギャラをもらって!)誰ひとり読まなくても無理やり世に出したい、と願う彼の「執念」を感じない訳にはまいりません。
ありがとう、山口君!
「観光客もう来るな」とは言えないが歌に詠むなら構わないでしょ 蝶人