あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

聖書協会共同訳で「創世記」を読んで

2019-11-24 11:37:46 | Weblog


照る日曇る日第1314回


信者の方には怒られそうだが、聖書は読むたびにいろいろな発見(無知な私にとっての)があって興味深い。

他の神話にあたってみたわけでもないが、旧約聖書の創世記では、神は安息日を含めて7日間で天地を創造している。中国の古典や我が国の古事記でも基本的には1日のほんんの一瞬か二瞬くらいで世界創生が終了するので、この計画性、構築性がいかにも古代近東あたりの民族性だと思うのである。

創世後の神様は、アダムとイヴをつくり、そこから人類が派生するが、人類科学史的にはこれがアフリカに誕生したホモ・サピエンスの元祖に相当するのだろうか。創世記の6章には「神の子が美しい娘を妻とした」と記されている。その子は「ネフィリム」と呼ばれたというが、これって殆ど後のギリシア・ローマ神話の世界だね。

しかしこの人間というやつは、そんな昔から今に至るも地金が悪いらしく、悪がはびこってたちまち腐敗堕落してしまう。

そこで神様は怒り狂って殲滅を図ろうとするが、「待てよ、優良分子だっているはずだ」と思いなおしたときに登場するのが「ノアの箱舟」で、これが実際にトルコのアララト山上で発見されたという報道が流れた時には、神話と事実の同致にいたく驚いたものだ。

神に選別されたノアが、(どのようにしてだかは詳らかにしないが)、2組ずつの生き物を選別し、箱舟に搬入した段階で、全地球を覆う大洪水が地球上の全生物を殲滅するが、湖沼に住む魚などはきっと放置されたのだろうね。

いずれにせよ、実際に古代に何度か起こったというこの「大洪水」こそが、キリスト教、あるいはユダヤ教のキーワードで、世界と世界内存在を一回チャラに初期化したからこそ、その後の全世界一元化の宗教ロジックが完成できた。

科学者たちは全地球上を覆い尽くすほどの大洪水の実在を疑っているようだが、よしんばそれがフィクションにせよ、これを神話上のキモに流用したことによって、「唯一絶対の世界宗教」として名乗りを上げることができたのである。なんともうまくやったものだ。

それから、この時代の人々の寿命が長いことにも驚く。「ネフィリム」は120年と相場が決められていたが、アダムは930年、セトは912年、ノ600歳で箱舟を作ったノアは950歳で死んだそうだが、ギネスブックには載っているのだろうか。


     アダム930年、ノア950歳、昔の人は長く生きたり 蝶人
コメント
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