蝶人物見遊山記第326回
昨25日に千穐楽を迎えた歌舞伎興行を雨の金曜日に見物しました。
源氏と壮烈なゲバルトを繰り広げた平家の荒武者、悪七兵衛景清を巡る伝説は能、舞、浄瑠璃と数多いが、今回の公演は「大仏殿万代楚」と「嬢景清八嶋日記」をミックスしたものでげす。
前者では東大寺の大仏開眼に出席した源頼朝の暗殺を狙った景清が、源氏への帰服を説かれて同ぜず、かというて反抗せぬ印に両眼を潰すのだが、どういう風の吹き回しでそおゆう展開になるのか、頼朝ならずとも驚くほかはない。
後者では盲目ゆえに落魄した景清が、南海の孤島で閉塞しているところを、娘が探し当てる。彼女が父のために遊女に身売りして大金を作ったことを知った景清は、ここで一大決心をして源氏への帰順を表明し、頼朝と面会すべく大船に乗り込んで勇ましく鎌倉に向かうううジャンジャン。
というところで大団円を迎えるのですが、それにしても序幕から4幕までの展開が余りにも唐突で、いくら中村吉右衛門が、あの聞き取りにくい超高音の裏声で泣いても喚いても、平家から源氏への転向の苦悩や悲劇の人間的な葛藤がおいてけぼりになる。
通し狂言なのにバラバラ狂言になる。ドラマがドラマとして描き尽くされないで、宙ぶらりんになる。期待が見事に肩透かしとなる残念な結果に終わりやした。
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