照る日曇る日第1495回
連歌の始祖ともいうべき二条良基、連歌中興前期の宗砌、後期の心敬、その後継者として登場した宗祇、肖柏、宗長の名トリオによって室町・戦国時代の連歌は洗練の極をきわめましたが、その秀才・優等生ぶりに反旗を翻し、所謂「誹諧連歌」の真骨頂を示したのが山崎宗鑑選手でした。
本書には彼の手になるといわれている「新選犬筑波集」と、その前駆としての傑作「竹馬狂吟集」を納めています。
武蔵をさして飛んでこそ行け
弁慶が頭に蜂の取りつきて
鬼ぞ三びき走り出でたる
おそろしやあらおそろしやおそろしや 「竹馬狂吟集」
霞の衣すそはぬれけり
佐保姫の春立ちながら尿をして
命知らずとよし言わはば言へ
君故に腎虚せんこそ望みなれ 「新選犬筑波集」
「水無瀬三吟」、「湯山三吟」、「新撰菟玖波集」とは、なんとうって変わった明るく楽しい世界でしょうか。
青春時代のかなり長い時期を、こうした卑俗を懼れぬ笑いと機知とユーモアの世界に沈潜したからこその「俳聖芭蕉」の誕生であったことを思えば、取り澄ました現代詩歌の低迷をぶち破る大きなモメントが、こうした山崎宗鑑世界のよみがえりにあることは、ほぼ間違いないでしょう。
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業績とは無関係に公的マネーが株価を押し上げる異様な経済 蝶人